コレステロールと心房細動の関係

LDLコレステロールはいまだに悪玉扱いです。LDLコレステロールは低ければ低いほど良いと思っている医師もいるでしょう。

一方、心房細動は臨床現場で最も一般的な不整脈です。ある研究では心房細動は女性の心血管イベント3倍、、脳卒中3.2倍、心不全3.4倍であり、男性の心血管イベントが1.8倍、脳卒中が2.5倍、心不全3.4倍と報告され、さらに心房細動は全原因死亡率で、女性2.2倍と男性1.5倍のリスクでした。(ここ参照)

では、コレステロールと心房細動の関連はどうなっているでしょうか?

ある研究では最も総コレステロールおよびLDLコレステロールが高い群で、最も心房細動の有病率が低くなっていました。(図はこの論文より)

上の図はすべての人と、年齢層ごとの脂質パラメータと心房細動の有病率を示しています。脂質パラメータを4つのグループに分けていますが、それぞれのグループの範囲は書かれていませんのでよくわかりません。LDLコレステロール(LDL-C)、総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL-C)はどれも最も低い群で心房細動の有病率が高くなっています。しかも他の3つのグループとかなりの差があるように見えます。

脂質と心房細動の関係のメタアナリシスを見てみましょう。11件の研究のメタアナリシスによると、下の図のようでした。(図は原文より)

上の図は総コレステロールと心房細動のリスクです。最も総コレステロールが低い群と比較して、最も高い群ではリスクが0.81倍でした。

上の図はLDLコレステロールと心房細動のリスクです。最もLDLコレステロールが低い群と比較して、最も高い群ではリスクが0.79倍でした。

上の図はHDLコレステロールと心房細動のリスクです。最もHDLコレステロールが低い群と比較して、最も高い群ではリスクが0.86倍でした。

コレステロールが低いと心房細動のリスクが増加するということは、心臓にとってコレステロールは非常に重要な物質であることを示唆しています。

医療はコレステロールを低くすることを推奨します。心房細動は、脳梗塞などの心血管イベントを起こしたり、アブレーションの手術ができたり、ずっと抗凝固薬や抗血小板薬を飲んでくれたりするので、医療側にとっては非常に良い疾患でしょう。しかもそれがLDLコレステロールが低いことと関連しているのであれば、非常に闇があるように思えてしまいます。さらに、LDLコレステロールを低下させる薬、スタチンも心房細動を増加させる可能性があります。(「スタチンと心房細動」参照)(スタチンと心房細動の関連は逆の結論の研究もたくさんあります。)

コレステロールを悪玉にすることは非常に旨味があるのでしょう。

色々な論文を見ていると、低炭水化物食は心房細動のリスク増加と関連していると書かれているものがありました。これについては次回以降で。

「Blood lipid profiles and risk of atrial fibrillation: A systematic review and meta-analysis of cohort studies」

「血中脂質プロファイルと心房細動のリスク:コホート研究の系統的レビューとメタ分析」(原文はここ

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