タンパク質は腎臓に負担をかけるといまだに信じられています。透析を受けているステージ5の慢性腎臓病患者では、日本透析医学会の基準では一日0.9~1.2g/kg体重のタンパク摂取が勧められています。 でも多くの人はタンパク質摂取量を控えめになっているでしょう。CKD診療ガイドラインでは、慢性腎臓病のステージ3b以降では、腎臓の機能を守るため(?)にタンパク質の摂取量を標準体重1kgあたり0.6~0.8gのタンパク質を摂取するように推奨されていますので、それが身についているのかもしれません。
タンパク質摂取量減少、増加が慢性腎臓病にとってリスクになるという研究のほとんどが、いつも言っている食事アンケートによるデータを使用しています。
今回の研究では、59人の血液透析患者(平均年齢65歳、女性37%、血液透析歴の中央値15か月)を対象としています。
食事のタンパク質摂取量はアンケートではなく、より客観的なマロニ式を使用した24時間尿素排泄量を使用しています。
患者の大多数は週3回、1回4時間の透析を受けていました。平均タンパク質摂取量は0.82 g/kg/日で、45人(76%)の患者はタンパク質摂取量が1.0 g/kg/日未満でした。
中央値21.6か月の追跡期間中に、16人(27.1%)の患者が死亡しました。死亡した患者は全員、タンパク質摂取量が1.0g/kg/日未満でした。
タンパク質摂取量は、筋肉量と正の相関を示しましたが、筋力とは相関しませんでした。タンパク質摂取量は、身体機能、全般的な健康状態、活力の健康領域と有意に相関していました。(図は原文より)
上の図は生存率です。点線がタンパク質摂取量1.0 g/kg/日以上の患者、グレーの実線がタンパク質摂取量1.0 g/kg/日未満の患者です。
タンパク質摂取量が多いほど、死亡リスクが0.34倍低下しました。
上の図はタンパク質摂取量と全原因死亡率の関連性を表したものです。Aは未調整モデル、Bは調整済みです。タンパク質摂取量が多いほど死亡率は低下していますね。
血液透析を受けている患者は、慢性炎症、酸化ストレス、および筋肉タンパク質の分解を大幅に促進する代謝性アシドーシスの状態にあるため、筋肉量を維持するためにより高いタンパク質摂取が必要です。さらに、患者は透析膜の種類に応じて、1回の透析セッションで3〜9 gのタンパク質を失うそうです。
しかし、そもそも、透析前の慢性腎臓病の人にタンパク質の制限って必要なのでしょうか?以前の記事「慢性腎臓病の高齢者でもタンパク質摂取量が多いほど死亡率は低下する」「タンパク質をたくさん摂るほど慢性腎臓病のリスクが低下する」「慢性腎臓病に対する糖質制限」「高タンパク質摂取は2型糖尿病の腎機能低下リスクを減少させる」「高タンパク食は腎臓に悪影響がないばかりか糸球体濾過量(GFR)を増加させる」などで書いたように、実際にはタンパク質摂取制限ではなく、糖質制限が必要なのではないでしょうか?タンパク質を悪者にして、じわじわと腎臓を弱らせているのかもしれません。
毎日、タンパク質をしっかり摂って、糖質制限をして腎臓を守りましょう。
「Association between objectively measured protein intake and muscle status, health-related quality of life, and mortality in hemodialysis patients」
「客観的に測定されたタンパク質摂取量と、血液透析患者の筋肉状態、健康関連の生活の質、死亡率との関連性」(原文はここ)