慢性腎臓病に対する糖質制限

先日の記事「高タンパク質摂取は2型糖尿病の腎機能低下リスクを減少させる」で書いたように、タンパク質が腎機能低下を起こすとは、私は考えていません。糖質制限をするとタンパク質摂取量が増加しますが、慢性腎臓病に関しても、糖質制限は有効であると私は考えています。慢性腎臓病の原因のほとんどは糖質過剰摂取です。そうであるならば、慢性腎臓病には糖質制限が悪いはずがありません。

もちろんエビデンスは限られています。

例えば、2年間の介入を行ったDIRECT試験(ここ参照)というものがあります。この試験では、低脂肪・カロリー制限食、地中海・カロリー制限食、低炭水化物・カロリー制限なし食の3つの食事のいずれかに無作為に割り当てられた、軽度から中等度のCKD(ステージ1~3)を有する過体重または肥満の322人が対象です。

他の2つの食事は端折りますが、低炭水化物、カロリー制限なしの食事は、1日あたり20gの炭水化物を摂取することを目標とし、減量を維持するために徐々に1日あたり最大120gまで増やしました。総カロリー、タンパク質、脂肪の摂取量は制限されていません。ただし、脂肪とタンパク質の植物性を選択し(ここがちょっとひっかりますが)、トランス脂肪を避けるようにアドバイスされました。一応、自己申告ですが、24 か月の遵守率は、低炭水化物グループで78.0%と書かれているので、信用しましょう。

しかし、実際には低炭水化物、カロリー制限なしと言いながら、この食事でも摂取エネルギー量は500kcal以上減少しています。糖質摂取量は130g程度は減っていますが、ベースラインの糖質量は不明です。(図はここより)

上の図は、Aは参加者全体の腎機能を表すeGFR(糸球体濾過率)の変化です。CKDステージ1と2では3.7%増加、ステージ3では7.1%も増加しています。

Bは食事別のeGFR変化です。低炭水化物食では5.3%の増加です。

Cはステージ1と2の食事別のeGFR変化です。低炭水化物では3.0%の増加です。

Dはステージ3の食事別のeGFR変化です。低炭水化物では10.0%も増加しています。

Eは糖尿病の有無による違いです。糖尿病有りの方が6.7%増加しています。

もちろん、このeGFRの改善が、エネルギー制限によって起きた可能性もあります。低炭水化物食でもエネルギー制限になってしまっているので。しかし、ステージ3の食事別のeGFR変化で、低炭水化物では圧倒的に10.0%も増加していることを考えると、やはり糖質制限の効果がありそうに思えます。

他の研究も見てみましょう。(ここ参照)これも超低カロリーケトン食を15週間摂取したときの92人の肥満の人の腎機能について分析しています。38人は軽度CKD(ステージ2)でした。超低カロリーケトン食は糖質摂取量を 20~50 g/日に設定し、ケトーシスは、市販の尿検査ストリップ を使用して毎週確認しました。タンパク質と脂質の摂取量は、それぞれ理想体重 1 kg あたり約 1~1.4 g/日、15~30 g/日でした。総エネルギー摂取量は、算出された理想体重に基づいて450~800kcal/日でした。

38人は軽度CKD(ステージ2)の27.7% が食事介入終了時に腎機能が改善し、CKDが寛解し、eGFRが90以上になりました。

もちろん、この研究もエネルギー制限による効果だと思われてしまう可能性があります。

もう一つ見てみましょう。(ここ参照、図もここより)eGFRが90未満の2型糖尿病患者で、2年間にわたって継続的な遠隔医療によるケトン食介入を受けた262人と通常ケアを受けている87人のマッチした患者と比較しました。eGFRの傾きは、通常ケア群ではマイナス(CKD悪化)でしたが、ケトン食介入群ではプラス(CKD改善)であり、群間に有意差がありました。

興味深いことに、サブグループ解析では、持続的な栄養性ケトーシス(一貫して約1mM(日本の単位では1,000μmol/Lのケトン体)を達成した患者では、腎機能が最も改善しました。中等度の栄養性ケトーシス(500~700μmol/Lのケトン体)でも腎機能が改善しました。

通常ケア群では腎機能が低下しました。ケトン体濃度との用量依存的な関係を示唆しています。

ということは、慢性腎臓病を進行させるのは糖質過剰摂取を勧める通常の治療であると考えられます。糖質過剰摂取は腎機能を低下させます。

糖質制限で腎臓を守りましょう。

3 thoughts on “慢性腎臓病に対する糖質制限

  1. 「筋トレしても効果出ない」
    とおっしゃる方々同様、
    継続できていない結果を、
    「糖質制限無効有害」
    と喧伝しがちな専門家は無視して、
    腎臓病始め、健康の為に
    糖質制限を続けたいとと思います。

  2. 腎機能は低下して当たり前、改善はしいはず。この研究が正しく取り上げられれば腎臓病患者の救いとなるのですが。減塩に救いをを求めて悪化してる人がとても多い印象です。

    1. IgA腎症患者さん、コメントありがとうございます。

      減塩で腎機能低下を防げた人は、実際のところどれくらいいるのでしょうかね?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です