HDLコレステロール値と冠動脈アテローム性動脈硬化症の存在および重症度との関連

いつも書いているように、医師はLDLコレステロール値が高いと、すぐにそれを指摘し、心血管疾患リスクが高くなると脅すでしょう。しかし、HDLコレステロール値が低くてもほとんど何も言わないでしょう。

今回の研究では、冠動脈造影検査を受けた心疾患患者3057人を対象として、HDLコレステロール値と冠動脈疾患(CAD)の存在および重症度との関連性を分析しました。平均年齢は65.4歳、BMI の中央値は27.4、総コレステロールの平均値は178mg/dL、HDLコレステロールの平均値は50mg/dLでした。患者の19%に冠動脈疾患の家族歴があり、高血圧および糖尿病はそれぞれ患者の29%および15%に診断されました。(図は原文より)

上の図は血中のHDLコレステロールと左冠動脈主幹部(LM)または左前下行枝(LAD)における冠動脈アテローム性動脈硬化症の重症度の関連を示しています。横軸はHDLコレステロール値で日本の単位にするには38.7をかけます。縦軸は薄いグレーが狭窄率0-49%の割合、濃いグレーが狭窄率50-100%の割合です。そして、左側がスタチン非使用者、右側がスタチン使用者です。

スタチン使用があってもなくても、HDLコレステロール値が高いほど狭窄率はが高い割合は少なくなっています。非常に興味深いことに、HDLコレステロール値が39mg/dL(1.01mmol/L)以下のスタチン使用群では狭窄率50-100%が46.4%もいて、それはスタチン非使用群よりも多いのです。そしてすべてのHDLコレステロール値において、スタチンを定期的に服用していない患者の方が冠動脈アテローム性動脈硬化症の程度が低く、スタチンを服用している患者は冠動脈アテローム性動脈硬化症がより顕著であることを示しています。

スタチン使用群と非スタチン使用者の両方において、中性脂肪および非HDLコレステロールと冠動脈アテローム性動脈硬化症の重症度との関連は認められませんでした。

スタチンは何のためなんでしょうね?もちろん、冠動脈アテローム性動脈硬化症が進行しているからスタチンを使用しているのかもしれません。しかし、スタチンが冠動脈アテローム性動脈硬化症による狭窄率を改善していない証拠でもあるでしょう。

医師は、HDLコレステロール値や中性脂肪値を無視することにより、LDLコレステロール値を下げることに全力になれるので、都合が良いのでしょう。しかし、LDLコレステロールが高いことは放置できず、HDLコレステロールが低いことは放置が許される理由は何なのでしょう。もちろん、HDLコレステロールを上げる手段、薬を持っていないからでしょうね。

HDLコレステロールを上げることは簡単です。糖質制限をすればいいのです。せめて、60mg/dLは欲しいですね。

「Associations of high-density lipoprotein cholesterol levels with the presence and severity of coronary atherosclerosis」

「高密度リポタンパク質コレステロール値と冠動脈アテローム性動脈硬化症の存在および重症度との関連」(原文はここ)

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