糖尿病のHbA1cは6.5以上です。HbA1c6.0%以上になると糖尿病予備軍の可能性が高くなると言われています。糖尿病ではない人の冠動脈疾患を予測するのは、どの程度のHbA1cでしょうか?
今回の研究では、HbA1c値6.5%未満の非糖尿病患者247人を対象としました。患者の年齢は33歳から87歳までで、平均年齢は59.96歳でした。
冠動脈造影の結果、冠動脈の狭窄度が50%未満であった症例は48.6%(120人)、51.4%(127人)が50%以上の狭窄があり、そのうち単一冠動脈疾患は22.7%(56人)、複数冠動脈疾患は28.7%(71人)でした。HbA1c測定値は研究グループ全体で4.48~6.49の範囲にあり、症例の44.5%(n = 110)で5.69未満でしたが、55.5%(n = 137)では5.7~6.5の範囲でした。(表は原文より改変)
| HbA1c(%) | |||
|---|---|---|---|
| 最小‐最大(中央値) | 平均±標準偏差 | ||
| 狭窄の程度 | 狭窄<%50 | 4.48‐6.48 (5.48) | 5.41 ± 0.55 |
| 単一冠動脈>%50 | 4.90‐6.49 (5.80) | 5.84 ± 0.33 | |
| 複数冠動脈 >%50 | 5.16‐6.49 (6.20) | 6.06 ± 0.36 | |
| 狭窄(−) | 4.48‐6.48 (5.48) | 5.41 ± 0.55 | |
| 狭窄(+) | 4.90‐6.49 (6.00) | 5.97 ± 0.37 | |
上の表は、狭窄度に応じたHbA1c測定値の評価です。狭窄を示す冠動脈が増加するほど、HbA1cは高いですし、狭窄(+)の方がHbA1cが高いですね。
| 狭窄状況 | オッズ比 | |||
|---|---|---|---|---|
| 狭窄(−) | 狭窄(+) | |||
| n (%) | n (%) | |||
| HbA1c(%) | <5.69 | 67 (79.8) | 17 (20.2) | 6.260 |
| 5.7‐6.5 | 34 (38.6) | 54 (61.4) | ||
上の表のように、HbA1c5.7~6.5の症例では、HbA1c5.69未満の症例と比較して、狭窄(+)の比率が有意に高く、HbA1c5.7~6.5では、狭窄(+)の可能性が6.260倍に増加しました。
分析により、狭窄の有無とHbA1c5.6のカットオフ値との間には、統計的に有意な相関が認められ、HbA1c5.6以上の場合、狭窄の可能性は17.2倍高くなりました。
HbA1c測定値が1単位上昇するごとに、狭窄(+)の可能性は13.177倍に増加しました。
ただし、このHbA1cは糖質過剰摂取の人の血糖変動が大きい、質の悪いHbA1cです。糖質制限で質の良いHbA1cだとどうなるかはわかりません。でもできる限りHbA1cは低い方が良いでしょう。
糖尿病とは言われていないからと安心してはいけません。糖尿病ではないレベルのHbA1cでさえ、冠動脈疾患のリスクはHbA1cが上昇すると増加します。糖尿病も前糖尿病(糖尿病予備軍)も同じ病態であり異常であり、連続性があります。数値で区切っているだけの話です。
いくつのHbA1cならリスクをゼロにできるとは言えませんが、せめて、HbA1cは5.6未満の方が良さそうです。
心血管疾患は糖質過剰症候群です。
「Glycosylated hemoglobin A1c predicts coronary artery disease in non-diabetic patients」
「グリコシル化ヘモグロビンA1cは非糖尿病患者の冠動脈疾患を予測する」(原文はここ)