プロトンポンプ阻害薬(PPI)と抗うつ薬のSSRIで歯科インプラントの失敗リスクが増加する

変形性関節症で手術により人工関節を埋め込むのと同様に、歯を失った場合に歯科インプラントを入れることになる人も多くなっているでしょう。

コントロールされていない全身疾患があれば、なかなか難しいかもしれませんが、普通に薬を飲んでいるだけであれば、まさかインプラントが失敗するなんて思わないかもしれません。

しかし、歯科のインプラントの成功は患者の骨の質に大きく依存すると考えられます。そうすると、骨の質に影響を与える薬はインプラントの失敗のリスクを高める可能性があります。

あるレビュー(ここ参照)ではPPIを服用している患者のインプラントの失敗率はPPIを服用していない患者と4.3%も差が認められました。

4件の研究の分析(ここ参照)では、PPIを服用している患者のインプラントの失敗リスクは、服用していない人と比較して3.15倍でした。

PPIは骨に大きな影響を与えます。PPI使用者における骨折、特に股関節、脊椎の骨折のリスクが統計的に有意に増加しています。PPI使用により全ての骨折リスクは1.23倍、股関節の骨折は1.20倍、脊椎の骨折は1.4倍です。

PPIにより、人間にとって非常に重要な栄養素の吸収が妨げられてしまいます。骨が脆くなったとしても不思議ではありませんね。できる限り手を出さない方が良い薬です。

そして、もう一つインプラントの失敗リスクを増加させる薬は、抗うつ薬としてよく使われるSSRIです。メタアナリシスでは、SSRIを服用している患者のインプラントの失敗率はSSRIを服用していない患者と7.5%も差が認められました。インプラント失敗の可能性は3倍にもなります。

またある研究(ここ参照)では、SSRI使用者は非使用者よりもインプラントの失敗リスクが6.28倍にもなりました。

ある13件の研究のメタアナリシス(ここ参照)では、SSRIの使用は骨折リスクの1.72倍の有意な増加と関連していました。恐らくはSSRIだけでなく、SNRIでも同様でしょう。

SSRIも骨代謝の調節に影響を及ぼしている可能性が示唆されています。

もちろん、糖質過剰摂取もインプラント失敗リスクを上げる可能性はあります。糖質過剰摂取も骨代謝に影響がある可能性があるからです。あるメタアナリシス(ここ参照)では、糖尿病患者のインプラントは非糖尿病患者と比較して失敗の可能性が1.777倍にもなっていました。

糖尿病が良好かつ十分にコントロールされている患者における歯科インプラントの成功率は、健常者と同程度だとは思いますが、やはり炎症を惹起する高血糖も起こさないに越したことはないでしょう。

とにかく、糖質制限をして、余計な薬を飲まないことが重要です。糖質制限をすれば歯を失うリスクもかなり低下するので、インプラントのお世話にはならないかもしれませんが。

「Medication-related dental implant failure: Systematic review and meta-analysis」

「薬剤関連の歯科インプラントの失敗:系統的レビューとメタ分析」(原文はここ

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