スポーツドリンクは口腔衛生状態を悪くする

アスリートは口腔衛生状態が悪い人が多いようです。

以前の記事「エリートアスリートは歯磨きをしっかりとしても口腔の健康状態が悪い」でも書いたように、2012年のロンドンオリンピックでの調査では、 虫歯(55%)、歯の侵食(45%)、歯周病(歯肉炎76%、歯周炎15%) という、驚く結果でした。

2016年リオデジャネイロオリンピックのオランダ人選手116人の研究(ここ参照)では、DMFT(虫歯を経験した歯の数)の中央値は3.0で、アスリートの15%はDMFTスコアが10を超えており、これは口腔健康状態が悪いことを示しています。口腔に問題が全くないと回答したアスリートはわずか28.2%でした。

選手の43.0%に臨床所見が報告され、これらの選手は歯科医師に相談し、追加の診察と治療を受けるよう指示されました。そのうち、22人(19.8%)に虫歯、24人(21.6%)に親知らずの抜歯、24人(21.6%)に歯肉炎、1人(0.9%)に歯槽骨の喪失を伴う歯周炎が診断されました。さらに、2人(1.8%)に歯内治療が必要となり、8人(7.2%)に侵食が認められ、5人(4.5%)に虫歯と歯肉炎が認められ、親知らずの抜歯が必要となりました。

別の研究(ここ参照)で、パキスタンのトップアスリート104人を対象にした研究では、アスリートたちは良好な口腔衛生習慣を身につけていたにもかかわらず、虫歯(63.5%)、歯肉炎(46.1%)、不可逆性歯周炎(26.9%)、侵食性歯の摩耗(21.2%)の有病率が高く、全般的に口腔の健康状態が悪くなっていました。アスリートの4分の1以上(28.8%)が、口腔の健康状態を「まずまず」から「非常に悪い」と評価し、5人中4人(80%)が少なくとも1つの口腔の問題を経験しており、日常活動(64.4%)やトレーニングやスポーツパフォーマンスへの参加(36.5%)に悪影響を及ぼしていました。

アスリートの口腔衛生状態が悪い原因は、様々なものがあるでしょう。激しい運動による酸化ストレスの増加もあるでしょう。ストレスなどのためにコルチゾールレベルが高く、免疫系が低下してしまうこともあるでしょう。

しかし、一番の原因はスポーツドリンクやエナジードリンク、そしてエネルギー源だと思い込まれている糖質の過剰摂取でしょう。糖質過剰摂取は酸化ストレスや炎症を増加させます。

水分補給には企業の戦略が大成功して、スポーツドリンクの摂取が当たり前になってしまいました。アスリートのほとんどがトレーニングや競技中にスポーツドリンクを摂取しているようです。アスリートの84%がトレーニング中にスポーツドリンクを摂取していると報告している研究もあります。

市販のスポーツドリンクのpH値は3.2~3であるため、歯に悪影響が起こることは容易に想像できます。アスリートはスポーツドリンクを頻繁に摂取し、唾液の流量が減少し、口呼吸をするなど、歯の侵食のリスクが高くなります。

さらに、スポーツドリンクは子供たちにも襲いかかっています。無知な医師やスポーツのコーチたちは、水分補給にスポーツドリンクを強く推奨しています。部活動などで子供たちにスポーツドリンクを大量に摂取させるコーチもいます。彼らは子供たちの健康や口腔の衛生状態には興味がないのでしょう。水分補給は水で十分です。

海外のある調査では、青少年の31.8%が過去 1 週間に1~3杯のスポーツドリンクを消費し、11.9% が過去 1 週間に4~6杯のスポーツドリンクを消費し、3.2%が毎日4杯以上のスポーツドリンクを消費していることがわかりました。

マーケティングが大成功で、今やスポーツドリンクは健康に良いと認識されることが多くなってしまっています。気温が高くなってきているので、マスコミもそろそろ頻繁に水分補給を、と連呼し、スポーツドリンクで電解質も補わなければならないなんてウソを言い始めるでしょう。運動時でも必要ないのに、通常の生活上での発汗に対して、スポーツドリンクなんて飲んではダメです。水分補給は水かお茶で十分です。

2025年6月1日より、企業における熱中症対策が義務化されたために、水分補給にスポーツドリンクが使われる機会が増加する可能性が高いでしょう。また病気のリスクが高くなりそうです。

企業やマスコミ、無知な医師などに騙されないように。

「Sports Diet and Oral Health in Athletes: A Comprehensive Review」

「スポーツ選手のスポーツ食と口腔衛生:包括的レビュー」(原文はここ

2 thoughts on “スポーツドリンクは口腔衛生状態を悪くする

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      私も詰め物があります。
      子供のころに糖質過剰摂取をしていなければ、そのころに虫歯ができていなかったであろうと
      思うと、残念でなりません。

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