鉛は非常に有害な重金属です。食品安全委員会によると、子供の場合、1日鉛摂取量1μg/日に相当する血中鉛濃度は0.16μg/dLだそうです。
最近発表されたアメリカの研究(ここ参照)では、平均年齢は1.9歳で行った鉛の検査で、37.7%の子供の鉛が3.5µg/dL未満でした。3.5μg/dL未満の鉛濃度が1単位増加すると、数学のスコアが-0.47、読解力が-0.38低下し、鉛濃度が3.5μg/dL以上の場合、鉛濃度が1単位上昇すると、数学のスコアが-0.52、読解力のスコアが-0.56低下しました。
日本人の血中鉛濃度は低いそうですが、どうなんでしょう。
東北大学の研究を見てみましょう。(図はプレスリリースより)12歳児の血液中の鉛、および出生時の臍帯血中の鉛濃度が、12 歳児の知能検査および語彙検査の結果におよぼす影響を調べています。
286人の赤ちゃん(男児148人、女児141人)が生まれたときの臍帯血とその子が12歳になった時の鉛濃度を測定しています。
臍帯血中と子どもの血液の鉛濃度は、臍帯血中の鉛濃度の中央値は0.8μg/dL、子供の鉛濃度の中央値は男児が0.7μg/dL、女児が0.6μg/dLでした。これらの鉛と、12歳児の知能指数と語彙検査の得点との関連性を調べたところ、女児では関連が認められず、男児において、下の図のように血液中の鉛の濃度が高くなるほど、知能指数が低くなることが示されました。男児の脳の方が脆弱なのかもしれません。
最初のアメリカの研究よりもかなり低いレベルの鉛濃度で比較していますが、血液中の鉛濃度が高くなると、男児では有意に知能指数、語彙力の低下が認められました。
臍帯血ではどうでしょう。
臍帯血でも男児では語彙能力と関連がありそうですね。しかも生まれたときの影響が、12歳になっても残っている可能性が高いのです。そうすると、重要なのはまずは母体ですね。母親の妊娠中の食事が大きく影響すると考えられます。そして、生まれた後の幼少期の食事も重要でしょう。
では、日本人の鉛の曝露源は何が一番多いのでしょうか?農林水産省の調査を見てみましょう。(ここ参照、図もここより)下の図は、平成17~26(2005~2014)年の摂取量調査の結果から、過去10年間の鉛の摂取量の平均値を食品群別に算出したものです。摂取量調査なので、食事アンケートであることを考えると、データの質は低いですが、参考にはなるでしょう。
最も多い曝露源はやはり米ですね。1日当たり4μgを超えています。4μg/日だとしても、子供だと血中鉛濃度は0.64μg/dLという計算になります。しかし、それ以外の食材も考えると、その2倍くらいにはなるでしょうから、1.2μg/dLにはなってしまう可能性があります。
大人の場合、1日鉛摂取量1μg/日に相当する血中鉛濃度は0.04μg/dLだそうです。妊婦さんの場合、安全域を考えると1日の摂取量は25μg/日までにすべきだそうです。
子供も妊婦さんも、白米の摂りすぎは糖質量だけでなく、他にも悪影響がありそうですね。
以前の記事「マスクを今すぐ外そう! その2」にも書いたように、マスクにも鉛がいっぱいです。子供や妊婦さんはマスク禁忌ですね。
鉛という観点で考えると、他にも気を付けた方が良いものがあります。それについては次回以降で。
「Prenatal and postnatal lead exposures and intellectual development among 12-year-old Japanese children」
「12歳の日本の児童における出生前および出生後の鉛曝露と知的発達」(原文はここ)