糖尿病患者以外の人によるフリースタイルリブレ(持続血糖測定器)の使用

今年のサロマ湖ウルトラマラソンでは久しぶりにフリースタイルリブレを使いました。センサーがリブレ2になり、非常に精度や安定感が増したように思います。レース時には他にもリブレを使っている人がいました。もちろんレース中、運動中のグルコース値の精度は恐らく高くはないでしょう。どうしても高めに出ると思います。でも、ある程度の血糖値変動を把握するには十分ではないかと思います。

リブレのような持続血糖測定器(CGM)は非常に有用です。早くAppleWatchのようなスマートウォッチに経皮的に血糖値を測定する機能をつけてほしいです。

しかし、もしかしたらそのような機能が追加されることを良く思っていない人たちがいるかもしれません。

今回の論文では、糖尿病ではない人がCGMを使うことに警笛を鳴らしているのです。

著者の主張は次のようです。

・CGMが実際に糖尿病ではない人の健康状態の改善を期待通りにもたらすことができるかどうかは不明です。→当たり前です。糖尿病の人であっても健康状態を改善できるかどうかは、使い方次第でしょう。

・実際、現在の臨床ガイドラインでは、1型糖尿病またはインスリン治療を受けている2型糖尿病患者以外には CGM を推奨していません。→もっと適応を広げると、2型糖尿病の人の状態が進行しにくくなり、困るのでしょう。

・医療機器として認められているCGMの適応と実際の用途との間のこの乖離は懸念すべきものであり、対処が必要です。→つまり、糖尿病ではない人がCGMを使うことは、適応外使用ということです。多くの人が適応外で使ってしまっては、血糖コントロールが悪くなる人が減少してしまうのでしょう。

私のように、ウルトラマラソンで使うなんて、超適応外です。もちろん、一部の企業があまりにも商業的にCGMを利用しようとしているのは問題なのかもしれませんが、規制をするのはもっと問題でしょう。我々は自分の体についてもっと知る権利、自由があります。一部の専門家にだけ、その情報が得られる権利を与えてはなりません。専門家に上手く利用されるだけです。

この論文では、1980年から 2024年にかけてのオンラインデータベース を検索し、糖尿病ではない人におけるCGM の有用性とパフォーマンスの側面を調査した研究を25件見つけました。なんで1980年からなのかはよくわかりませんが。

CGMの精度の指標として平均絶対的相対的差異(MARD:mean absolute relative difference)というものがあるそうです。センサーのグルコース値と血糖値の差異の割合を示す指標で、MARD10%未満が患者が自身で血糖測定を行う自己血糖測定の代替となり得る正確さと言われているそうです。FreeStyleリブレProのMARDは11.1%で、FreeStyleリブレ2のMARDは9.2%です。まあ十分な精度を持っていると考えて良さそうです。しかも糖尿病ではない人であればなおさらこの精度で十分でしょう。

所詮、指先で測定する血糖値測定器の誤差も10%程度はあるので、CGMでも十分でしょう。

もちろん、CGM特有の問題はあります。薬物による干渉や、肥満のような体脂肪が多いと精度が悪くなる可能性があります。さらに、CGMは間質液のグルコース値なので、血糖値とは実際には異なる場面があるでしょう。血糖値が急激に上昇するような糖質大量摂取の時などはオーバーリアクションしたりします。高強度の運動中や恐らくお風呂やシャワーでも「センサードリフト」と呼ばれる急速なグルコースの変化によって引き起こされる微小循環の乱れで、大きな差が出てしまう可能性があるでしょう。

そのことをわかっていれば、その時のCGMの値は参考程度にすれば良いだけの話です。逆にCGM値を重くとらえたり、一喜一憂するような人はあまりお勧めできないかもしれません。また、実際の血糖値とCGMの間質液のグルコース値は違うのは当たり前で、恐らくフリースタイルリブレでは、その2つの生理学的差異を調整するアルゴリズムを利用して、血糖値を近似することを目指しているはずです。フリースタイルリブレ2ではかなりその点で血糖値に近くなったと感じます。

著者は次のように書いています。「代謝の健康を改善し、病気の進行を防ぐために血糖変動の最小化を提唱する商業企業は、推測のみに基づいてそうしているように見えます。」

血糖変動が最小化されること非常に良いことです。血糖値スパイクは非常に有害であることを考えると、推測とは思えませんが、そのように言いたいようです。

また、CGMにより食後の血糖値変動、血糖値スパイクが可視化されると、本当はそれを使っている人にとって有益なはずです。しかし、著者は「糖尿病ではない人における個別の栄養に CGMを使用することの臨床的利点について掘り下げた研究は、私たちの知る限りほとんどありません」

エビデンスがないから、問題だと言いたいのでしょう。この後も色々な勝手な主張が続きます。

専門家はこれまで、ワンポイント、つまり受診時の採血による血糖値やHbA1c値をもとに糖尿病を治療してきました。HbA1cなんて所詮平均値にすぎません。どれだけの大きな血糖値変動が起きているかなんて知りもしません。専門家が勧めるカロリー制限食で、どれだけ血糖値が爆上がりするか、知らないのです。それがCGMにより血糖値の変動が可視化されます。専門家よりも患者が食事の間違いに気づいてしまいます。糖質量を抑えれば目に見えて血糖値は下がり、変動が小さくなります。でもそれがバレると専門家は困るのでしょう。

もちろん、このCGMを気にしすぎて、摂食障害になってしまうような人は使用を止めた方が良いでしょう。オルトレキシア(自分が考える健康的な食事に強く執着する)のように度が過ぎれば問題があるかもしれませんが、糖質を制限することは非常に重要です。糖質制限もオルトレキシアというのであれば、そうかもしれませんが、実際に糖質制限は健康的です。

糖尿病ではない人におけるCGMの使用を支持する質の高い研究は確かに不足しています。でも、自分の体を知る一つの方法として、非常にCGMは有用です。以前のリブレ1のときの精度には疑問を持っていましたが、今のリブレ2程度の精度があるのであれば、十分です。そして、糖質過剰摂取をしている人が、実にひどい血糖値スパイクを何度も起こしているのを目にすれば、食事に対する考えが変わるでしょう。私はアボットから1円ももらっていませんが、糖質制限をしていない人は、一度でいいので、フリースタイルリブレを付けてみてください。

そもそも検査機器に適応外が存在するのでしょうか?血圧正常の人に血圧計で測定することは適応外?多くの健康な人に行う人間ドックの検査は適応外?なんでCGMだけ適応外というのでしょうか?

私はAppleWatchのようなスマートウォッチに経皮的に血糖値を測定する機能を早く実現してほしいと思っています。

しかし、この論文を読んで、もしかしたら、専門家たち、学会、製薬会社などが企業や承認する国の機関に圧力をかけたり、お金を流したりして、実用化を遅らせているのではないかと危惧しています。CGMでさえ規制をかけるように訴える論文を出すくらいです。専門家は血糖値が落ち着いてしまったら困るのです。

まあもちろん、CGMなんかつけなくても糖質制限をすれば、血糖値変動は非常に少なくなります。

「Innovative solution or cause for concern? The use of continuous glucose monitors in people not living with diabetes: A narrative review」

「革新的な解決策か、それとも懸念すべきことか?糖尿病患者以外の人に対する持続血糖モニターの使用:ナラティブレビュー」(原文はここ

7 thoughts on “糖尿病患者以外の人によるフリースタイルリブレ(持続血糖測定器)の使用

  1. この著者が本当に分かっていないのなら残念ですが、本当のことを知らないとも思えません。
    とにかく、御用学者・学会は絶滅して欲しいですね。

  2. ステロイド治療中に自費導入していたリブレデータを腎臓系学会で発表予定なのですが、批判されるかしら(^_^;)ちなみに最も数値が上がったのは病院食でした。

    1. IgA腎症患者さん、コメントありがとうございます。

      是非発表した反応を教えてください。
      「ちなみに最も数値が上がったのは病院食でした」は笑えるけど、患者にとっては笑えない真実ですね。

  3. 世の中で1番食生活が改善されていないのは、旧態依然の
    理論がまかり通る、病院や高齢者施設なのかもしれませんね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      医療側は、病院の食事で血糖値が異常に上がるなんて、それほどあなたの体は悪いのですよ!とでも言いたいのでしょうね。

  4. 自分は運動をしており、トレーニング時に使用する目的でリブレフリースタイルを使用して1年ほどになります。
    これ、アボットジャパンの人も学会で「箱根マラソンのチームでも補給管理目的で使用している」と言っていますよね。先生の引用している論文の言い分だと、運動の補給管理に使用するなんてとんでもないと言う事なのでしょうが…
    グルテルトネオアルファと比較すると、急激な血糖の変動があると値が微妙だなと思うことはありますが、ハンガーノック(自転車では低血糖状態の表現です)状態でリブレで見ると50-70程度になっており、自身の感覚と概ねずれがないですね。
    職場の後輩に対しても、「ダイエットしたいと思うのならばつけてみろ。それで、血糖値の変動を見ればお菓子やジュースが怖くなからる」と話していますが
    、健康管理目的で自費で糖尿病ではない人が導入することは血糖スパイクを抑える効果は期待できると思うのですけどね。
    ただ、先生のおっしゃるように数値に一喜一憂するような方は使用しない方が良いかもしれないですね。自分は日常的に50台とかたたき出しますし、GI値が低いと言われるものでもスパイク上に血糖上昇します。こういうのを見るとGI値って何だろう?って思っちゃいますよね。

    1. 啓ドンさん、コメントありがとうございます。

      仰る通り、私もウルトラマラソンで使用し、自分自身の感覚と概ね一致しています。
      血糖値の推移を見るのは非常に有用ですし、通常の食事の血糖値スパイクは十分にとらえられます。
      専門家は病院に来なければ、血糖値コントロールはできないよ、とでも言いたいのでしょう。

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