人工甘味料は砂糖ほどは危険ではないと思っていますが、しかし、人類は適応していない物質であり、リスクはあると思っています。砂糖入りドリンクを飲めば、糖質過剰摂取となり、血糖値スパイクも起こるので、心血管疾患リスクも高くなるでしょう。では、人工甘味料入りドリンクはどうでしょうか?
食事系の研究なので、食事アンケートという質の低いデータを用いていますが、飲んだか飲まないかくらいはある程度答えられるでしょう。
今回の研究では、2466人(平均年齢40.4歳)を対象にしています。食事摂取量は、研究開始時(0年目)およびその後7年目と20年目の3回行っています。(たった3回ですが)砂糖入りドリンク(SSB)、人工甘味料入りドリンク(ASB)、無糖ドリンク(USB)の摂取頻度を調査し、ASBとUSBについては、ゼロ(0サービング/日)、低(1サービング以下/日)、高(1サービング超/日)の3つのグループに分類されました。SSBの摂取量は、低(0~1サービング/日)、中(1~2サービング/日)、高(2サービング超/日)に分類されました。(1サービングはおよそ240ml)
また、冠動脈カルシウム (CAC)の測定は15年目、20年目、25年目に実施されました。かなり長期の研究です。CAC重症度は、検出不能 (CAC = 0)、軽度 (0<CAC≤100)、中等度から重度 (CAC>100) の 3 つのカテゴリーに分類されました。
平均9.2年の追跡期間で、715件の新たなCAC進行例が認められました。
下の表はASB摂取群におけるCAC進行リスクです。(表は原文より改変)
ASB摂取グループ | モデル4 | モデル4(B) |
---|---|---|
ゼロ | 1 | 1 |
低 | 1.35 | 1.41 |
高 | 1.54 | 1.63 |
人工甘味料入りドリンクを飲まない人と比較すると、1日1サービング以下でも1.35倍、1サービングを超えると1.54倍、CAC進行リスクが増加しました。SSBとUSBの消費量で調整(モデル4(B))を加えても、CAC進行リスクはASB摂取量が多いほどリスクが増加しました。
下の表はSSB摂取群におけるCAC進行リスクです。
SSB消費グループ | モデル1 | モデル4 | モデル4(B) |
---|---|---|---|
低い | 1 | 1 | 1 |
適度 | 1.11 | 1.09 | 1.13 |
高い | 1.37 | 0.99 | 1.02 |
様々な調整をする前の段階(モデル1)では、砂糖入りドリンクを1日に2サービングを超えるとCAC進行リスクが1.37倍でしたが、様々な調整を加えると砂糖入りドリンク摂取量とCAC進行リスクの関連はなくなりました。ASBとUSBの消費量で調整を加えても、SSBとCAC進行リスクの関連はありませんでした。(本当かな?)砂糖入りドリンクに関しては、すでに糖質過剰摂取者が対象となるため、飲み物だけでは違いが出ないのかもしれませんし、自己申告なのでいい加減なデータかもしれません。
人工甘味料は血糖値は上げないとしても、別のメカニズムで上乗せのリスクがあるのかもしれません。
実験的には、人工甘味料はHDL、特にapoA-Iの構造と機能を変更することによって、HDLの有益な機能を損なう可能性があり、それによってHDLの抗動脈硬化効果を減少させる可能性があることが示されています。(ここ参照)
また、腸内細菌も変化させたりするので、それも大きな影響があるかもしれません。
そして、もしかしたらこれが糖質制限でも一部の人でアテロームが増加する原因かもしれませんね。(「糖質制限による高LDLコレステロールは心疾患の予測因子ではない」参照)
もちろん糖質制限は重要ですが、人工甘味料も摂取しないに越したことはないでしょう。
「Association between cumulative intake of sugar-sweetened and artificially sweetened beverages and progression of coronary calcification: Insights from the CARDIA study」
「砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の累積摂取量と冠動脈石灰化の進行との関連:CARDIA研究からの知見」(原文はここ)