糖質制限をすると、少なくない割合でLDLコレステロールが上昇します。その後下がる人もいますが、ずっと高いままの人も多いです。
このような高コレステロール血症が起きることで、専門家たちは大騒ぎして、糖質制限の危険性を煽るでしょう。
今回の研究では、ケトン食の摂取によって誘発された高LDLコレステロールを示した人の心臓の評価を行っています。以前の記事「糖質制限によるLDLコレステロールの上昇と動脈硬化」の続きでしょうかね。
ケトン食誘発性LDLコレステロール≥190 mg/dL、HDLコレステロール ≥60 mg/dL、中性脂肪≤80 mg/dLを示す100人を対象として、冠動脈カルシウムおよび冠動脈CT血管造影を使用して1年間追跡しました。
ケトン食群参加者の参加基準は、ケトン食を24か月以上継続している、ケトン食を採用する前の最後のLDLコレステロール≤160 mg/dL、最新の検査でLDLコレステロールが190 mg/dL以上、ケトン食導入後のLDLコレステロールの50%以上の増加、HDLコレステロール≥60 mg/dL、中性脂肪≤80 mg/dL、HbA1c<6.0%、空腹時血糖値<110 mg/dL、高感度CRP<2 mg/Lです。
一方、除外基準は、高血圧、2型糖尿病または生涯にわたる抗糖尿病薬の使用、腎不全、肝酵素が正常上限値の2倍以上または総ビリルビンが1.5以上、LDLコレステロールを上昇させる薬剤の使用(アナボリックステロイド、イソトレチノイン、免疫抑制剤、アミオダロン、チアジド系利尿薬、グルココルチコイド、チアゾリジンジオン)、脂質低下サプリメントまたは薬剤の使用(スタチン、紅麹、ニンニク、エゼチミブ、ベルベリン、PCSK9阻害剤)、遺伝的に定義された家族性高コレステロール血症などです。
ケトン食の遵守については、毎日のケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸のデータを取っているので、大丈夫でしょう。87%が大部分の測定でβ-ヒドロキシ酪酸≥0.3 mmol/L を超える値を記録していました。平均でおよそ4.5年のケトン食期間なので、長期の適応で定常状態の低下を考えると、これくらいの値で問題ないでしょう。下の表はベースラインの状態の平均±SD、または中央値です。(図は原文より、表は原文より改変)
男 | 59% | |
年齢(歳) | 55.3 ± 10.6 | 57.0 (50.8-63.0) |
ケトン食期間(日) | 1,642.7 ± 913.5 | 1,427 (1,002-1,938) |
BMI(kg/m 2) | 22.5±2.7 | 22.3 (20.6-24.4) |
収縮期血圧(mmHg) | 121.8±21.1 | 120 (112-135) |
総コレステロール(mg/dL) | 355.1±89.9 | 338 (301-337) |
LDL-C (mg/dL) | 253.7±84.7 | 237 (202-308) |
HDL-C (mg/dL) | 88.8 ± 20.0 | 88 (74-102) |
中性脂肪(mg/dL) | 66.7 ± 30.4 | 61 (52-77) |
アポリポタンパク質B (mg/dL) | 185.0 ± 50.8 | 178 (149-214) |
非石灰化プラーク量(mm 3) | 75.9 ± 88.3 | 44 (15.4-102.3) |
冠動脈カルシウムスコア | 50.3 ± 100.9 | 0 (0-54) |
アテローム容積率 | 3.2 ± 3.8 | 1.25 (0.5-3.6) |
総プラークスコア | 1.7±2.6 | 0 (0-2.0) |
10年間のCVDリスク(MESA ETH-CAC、%) | 5.2±5.3 | 3.4(2.0-5.9) |
平均のLDLコレステロールは253.7なので、専門家が見たら大騒ぎになるでしょう。
炭水化物(g/日) | 39.5±29.8 | 30.8 (12.6-51.1) |
脂質(g/日) | 120.2±46.4 | 113.1 (89.8-139.3) |
飽和脂肪(g/日) | 44.7±18.9 | 39.4 (29.9-52.6) |
糖質(g/日) | 20.2±18.5 | 11.1 (6.3-22.2) |
食物繊維(g/日) | 6.9±6.5 | 6.9 (1.3-11.3) |
ナトリウム(mg/日) | 3,292.5 ± 1,263.0 | 2,931.4 (2,217.7-3,265.7) |
糖質の1日の摂取量の平均が20g、中央値で11gと、さすがケトン食ですね。(自己申告ですが)
1年後、ApoBとBMIのどちらにも有意な変化は認められませんでした。
ほとんどの参加者の非石灰化プラーク量(NCPV)は安定していました。一方、1人ではNCPVが低下し、6人では1年間で総プラークスコア(TPS)が低下しました。アテローム容積率 (PAV)の変化率の中央値は0.8%であり、NCPVおよびPAV値は他の集団で観察された値とほぼ同等でした。
研究期間中のApoB の変化も、ベースライン時のケトン食におけるApoB値も、NCPV の変化やTPSとは関連がありませんでした。
上の図は、非石灰化プラーク量(NCPV)および総プラークスコア(TPS)の変化とアポリポタンパク質B(ApoB)および冠動脈カルシウム(CAC)の関連を示してます。
食事中のLDLコレステロール総曝露量(図のG)も、ApoBのベースライン値やApoBの変化(DとE)も、プラークの変化とは関連していませんでした。
ベースラインのCACはNCPVおよびTPSの変化と正の相関を示しました。(CとF)
図のHのように飽和脂肪酸摂取量はApoBとは関連していませんでした。
すべてのベースラインのプラーク指標(CAC、NCPV、TPS、PAV)は、NCPV の変化と強く関連していました。つまり、すでに存在するプラークがプラークを生むが 、ApoB はプラークを生むわけではない、ということです。
現代の医療では、ApoBとLDLコレステロールの上昇が主要な治療目標とすべき重要なリスク要因であると仮定しています。しかし、代謝的に健康な集団における高 LDLコレステロールおよびApoBは、代謝機能障害のある人の高LDLコレステロールとは異なる影響を受ける可能性が高いと思われます。
除脂肪体重ハイパーレスポンダー(LMHR)では、以前の記事「糖質制限でLDLコレステロールが大きく上昇する人の特徴」「糖質制限によるLDLコレステロール激増の良い意味での症例報告」「糖質制限による極端なLDLコレステロール上昇」で書いたように、糖質制限、ケトン食でLDLコレステロールが大きく増加します。私も健康診断ではいつも高LDLコレステロールなので、「要治療」のコメントをつけられて、健診ハラスメントを受けています。
高コレステロールの方が長生きであるといういくつもの研究を見れば、LDLコレステロールを気にしないでOKだということがわかります。それよりも中性脂肪の増加やHDLコレステロールの低下には注意が必要でしょう。
医師があまり中性脂肪やHDLコレステロールの値について、あまり指摘しないのであれば、それは、中性脂肪を十分に下げる薬やHDLを上げる薬が存在しないことにより、的確な処方や指示ができないからでしょう。本当は食事を変えるだけでいいのに、それを強く推奨することはしないでしょう。自分が処方した薬ではなく、食事で改善してしまっては、困るでしょうから。
糖質制限でLDLコレステロールが上がっても気にしなくても良いです。糖質過剰摂取で高LDLコレステロールは恐らくインスリン抵抗性がかなり進んでいると思われます。
「Plaque Begets Plaque, ApoB Does Not: Longitudinal Data From the KETO-CTA Trial」
「プラークはプラークを生むが、ApoBはそうではない:KETO-CTA試験の縦断的データ」(原文はここ)
わかりやすさ=受け入れやすさ
だったりしますが、
糖質過剰がデフォルトの世の中の影響受け
た認知機能では
「コレステロールは血管詰まらせるので
薬で数値を下げるのが正解」
なのでしょうね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
メシのタネを手放したくはありませんからね。