昨日2023年8月27日、北海道マラソンが行われました。いやー、暑かった!スタートの8時30分の時点で、気温29.2度、湿度78%、その後最高気温は30度を超えました。レース前日は35度以上になったことを考えると、少しはマシだったと考えるべきなのでしょうか?これまでのレースの中で最も暑いマラソンとなりました。しかし完走率はなんと81.1%。60%くらいなのかな?と思うくらいの前半の暑さでしたが、やはりみなさんしっかり準備してきているのですね。中盤は土砂降り、アンダーパスを何度か通るので、あまり激しい雨が降ると中止にもなりかねない状況、後半も人によってはさらに激しい土砂降りと雷雨に見舞われていました。何とか完走できましたが、夏のレースの過酷さが身に沁みました。
さて、糖質制限をするとLDLコレステロール上昇を認めることが少なくありませんが、極端に増加することもあります。
今回の症例報告は、ケトン食を行って、それまでのおよそ4倍にまでLDLコレステロールが上昇した報告です。
38歳の男性で、BMIは21.6、活動的で喫煙者です。過去15年間はLDLコレステロールが100~140mg/dLの範囲でした。そして1年前からケトジェニックダイエットを開始していました。(図は原文より)
上の図はLDLコレステロールの推移です。 496mg/dLと極端にLDLコレステロール上昇を認めて、クリニックに紹介され、その他の血液検査は正常範囲内でした。リポタンパク質(a)も40nmol/L(日本の単位でおよそ16mg/dL)と正常でした。1か月してもLDLは475mg/dLだったので、食事を変更し、飽和脂肪酸の摂取量を減らし、高強度のスタチンと小腸からのコレステロール吸収を阻害するエゼチミブ(商品名ゼチーア)の併用療法を開始するようにアドバイスされました。冠動脈CTによるカルシウム定量では明らかな冠動脈の石灰化はなく、カルシウムスコアはゼロでした。
2度目の追加のLDLコレステロール検査も445mg/dLだったので、患者はエゼチミブ10 mg内服、飽和脂肪酸の摂取量をある程度減らした食事を開始しました。
数週間後にはLDLは173mg/dLまで急速に低下、HDLコレステロールは70mg/dL、中性脂肪は67 mg/dL でした。
以前の記事「糖質制限でLDLコレステロールが大きく上昇する人の特徴」で書いたように、糖質摂取量の大きな減少により、痩せている(非常に運動量が多い痩せた人)または筋肉量が少なく、もともとのHDLが高く、中性脂肪が低い人でLDLの大きな上昇が起きる可能性があります。糖質制限前と比較してHDLコレステロールが1増加するとLDLコレステロールは0.53増加し、以前の中性脂肪が1減少すると、LDLコレステロールは0.19増加します。以前の中性脂肪/HDL比が1減少すると、LDLコレステロールは10.5増加します。また、BMIが1減少するとLDLコレステロールは6.1増加します。
以前の記事「糖質制限によるLDLコレステロール激増の良い意味での症例報告」「糖質制限は一部の人のLDLコレステロールを劇的に上昇させる」にもあるように、LDLコレステロールが増加したからって、何か有害なことが起きているわけではありません。
今回の報告のように、ここまでLDLコレステロールが上昇してしまうと医師はFH(家族性高コレステロール血症)と勘違いして大騒ぎでしょう。糖質制限をするとLDLコレステロールが増加することを知らない医師も多いでしょう。
また今回の報告のように、このような糖質制限でLDLコレステロールが上昇した人では、ゼチーアを飲むと大きくLDLコレステロールが減少することも多いようです。ということは、もしかしたら糖質制限でLDLコレステロールが上昇する人はLDLコレステロールの吸収が非常に亢進しているのかもしれません。どうしても健康診断等でLDLコレステロールが高いことが指摘されて、医師の脅しが鬱陶しければ、検査前にゼチーアを何日か飲んでみるのも対策になるかもしれません。ただ私もLDLコレステロールは非常に高いですが、大量の卵を一度に摂取してもLDLコレステロールは変動しません。吸収が亢進しているとしても、どんどん際限なく上がるわけではなさそうです。
ただ私はLDLコレステロールが上昇しても気にしていません。(「糖質制限でLDLコレステロールが上昇したらスタチンは必要か? その1」「その2」「その3」「その4」「その5」など参照)
LDLコレステロールが高いから、それがどうかしましたか?と言って通じる医師はほとんどいないでしょう。でも心血管疾患は糖質過剰症候群であり、LDLコレステロールはほとんど関係ありません。
「Extreme Hypercholesterolemia Following a Ketogenic Diet: Exaggerated Response to an Increasingly Popular Diet」
「ケトジェニックダイエット後の極度の高コレステロール血症:人気が高まっているダイエットに対する過剰な反応」(原文はここ)
こんにちは。いつも参考にさせていただいております。
スタチンは以前、脱力がひどくなり、それと先生のブログから良くなさそうだなと思って拒否して処方されてないのですが、LDLが高く、エゼチミブは処方されております。
服用しても大丈夫ですか?ちなみに多発性嚢胞腎でGFRは現在30台です。
ちばさん、コメントありがとうございます。
服用しても大丈夫ですか?という質問は腎機能に影響しないですか?という意味でしょうか?
そうであれば影響しないと思われます。
しかし、LDLコレステロールを下げても大丈夫でしょうか?という意味であれば、
私は下げる意味はないと思います。
非常に興味ある報告です。個人的にここまでLDLcが上昇する人は少ないかもしれませんが
一般的に糖質制限するとLDLcは上昇しますね。しかしこれほど上昇するのはなぜでしょうか。
代謝上のアポBの異常もなさそうですしLPLの異常もなさそうです。そして短期的にも脂肪の
蓄積もないということはこのLDLの形をPAGEで確認したいですね。
このLDLは酸化しにくいことを証明すると面白い論文になりますね。
松田さん、コメントありがとうございます。
糖質制限でLDLコレステロールが400以上というのはそこまでいないとしても、200を超えることは珍しくありません。
私はLDLコレステロール高い方が標準で、糖質摂取で低下していると考えています。
糖質制限をすれば酸化ストレスが低下してLDLの酸化は低下すると思います。
ブタペスト陸上世界選手権マラソン、
見てるだけでも暑さ、苦しさが
実感されました。
同日に酷暑の北海道マラソン、
リアルに参加、完走されたのですね。
すごいです。
ところで、
LDLコレステロールが高いから、それがどうかしましたか?
スタチン勧められたら言ってみたい。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
世界陸上のマラソンも凄い暑さだったようですね。東京オリンピックでも問題になりましたが、
一流のアスリートが競うのですから、無理な環境ではなく、マラソンや競歩、トライアスロンは冬の競技にすべきではないかと思います。
もちろん北海道マラソンは夏にやってほしいですが。
清水先生、お世話になります。
LDL-Cholは糖質制限を始めて数年間、300 mg/dLあたりで推移しています。
最近、7月末頃の検査値は次の結果でした。
TG 56 mg/dL
HDL-Chol 89 mg/dL
LDL-Chol 270 mg/dL
医師からはスタチンを勧められていましたが、いつも拒否していました。今回、ゼチーアを勧められたので、人間ドックに備え、ゼチーアを服用してみることにしました。
ほぼ1ヶ月くらいのゼチーアの服用でしたが、検査結果は以下のようになっていました。
TG 48 mg/dL
総コレステロール 242 mg/dL
Non-HDL-Chol 147 mg/dL
HDL-Chol 95 mg/dL
LDL-Chol 131 mg/dL
私は、HDLが高値で、かつTGが低値なので、LDLが高値であることは気にしていませんでした。
それにしてもゼチーアの効果のキレに良さにはびっくりです。
ゼチーアの作用機序は、胆汁性および食事性コレステロールの吸収を選択的に阻害ということですが、血清LDL値に関係するのは食事性よりも胆汁性の方なのかもしれないですね。
じょんさん、コメントありがとうございます。
確かにゼチーアのLDLへの効果はありそうですが、スタチンほどではないにしても筋毒性があります。
この件についてはいつか記事にしたいと思います。
清水先生、こんばんは。
ゼチーアを飲み始めて1週間ほどだったと思うのですが、階段で10階くらい上ったのですが、いつもならなんともないのですが、左右のふくらはぎが筋肉痛になりました。念のため、痛みがなくなるまでの数日間は飲むのをやめていました。その後、また飲み始めましたが、同じような筋肉痛は起こっていません。