糖質制限は様々な検査値が改善しますが、LDLコレステロール値だけは、一般的な医療常識の中の数値としては悪化し、劇的に上昇してしまうことがあります。その後少しずつ低下することもありますが、ずっと高いままの人も少なくありません。私もその一人です。
血液検査で LDLコレステロール値が190mg/dL以上であることが判明した後、高脂血症の診断のために循環器科に紹介された患者の中でケトン食を行っている17人が対象です。平均年齢は46歳で、患者の11人が男性で、6人が女性でした。患者の平均BMIは27で、範囲は14.83~43.87 の範囲です。まぶたの黄色種は1人のに認められましたが、それ以外で重大な高脂血症の他の身体的所見を示した患者はいませんでした。(図は原文より、表は原文より改変)
BMI | 以前のベースラインLDL | ケトLDL | 回復LDL | アポ A1 | アポB | Lp(a) | 遺伝 | スタチン療法開始 | |
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ケース 1 | 25.3 | 115 | 213 | – | 128 | 148 | 27 | ネガティブ | はい |
ケース 2 | 14.83 | 96 | 810 | 31 | 192 | 136 | <6 | – | はい |
ケース 3 | 23.1 | – | 439 | 100 | – | 263 | <6 | アポe2/E3 | いいえ |
ケース 4 | 22.23 | 119 | 210 | 125 | – | – | 44 | – | いいえ |
ケース 5 | 25.09 | 167 | 300 | 185 | – | – | 19 | – | いいえ |
ケース 6 | 43.87 | 100 | 222 | – | 162 | 172 | – | – | いいえ |
ケース7 | 24.3 | 150 | 224 | 137 | – | 118 | 7 | – | いいえ |
ケース 8 | 24.5 | 121 | 224 | 154 | – | – | – | – | いいえ |
ケース9 | 26.8 | – | 337 | – | 151 | 227 | – | – | いいえ |
ケース10 | 23.4 | – | 226 | 117 | 181 | 139 | 13 | – | はい |
ケース11 | 24.3 | 103 | 272 | 78 | – | – | – | – | いいえ |
ケース12 | 36.4 | 159 | 217 | – | – | – | 234 | LDL-R | はい |
ケース13 | 24.5 | 109 | 271 | 258 | 139 | 205 | < 6 | – | はい |
ケース14 | 23 | 112 | 579 | 428 | – | 332 | < 6 | ネガティブ | いいえ |
ケース15 | 39 | 130 | 337 | 30 | 93 | 170 | 103 | LDL-R | はい |
ケース16 | 35.6 | 173 | 277 | 90 | – | 191 | – | – | はい |
ケース17 | 22.5 | 158 | 215 | 122 | – | 37 | – | はい |
平均ベースラインLDLコレステロールは129mg/dLで、ケトン食を平均12.3か月行った後のLDLコレステロールは平均で316 mg/dL、範囲は210~810mg/dL でした。ケトン食を中止して平均9か月後にはLDLは142.7mg/dLに低下していました。8人はスタチンが開始されました。フォローされた13人中7人は食事の変更だけでLDLが低下しました。急性の心血管疾患イベントを経験した人はいませんでした。患者のうち4人は、家族性高コレステロール血症の遺伝子検査を受けました。患者のうち2人は、LDL-R遺伝子の変異を持っていることが判明しました。リスク因子だと考えられているLp(a)は非常に炊き人もいれば、全く低値の人もいます。
上の図はLDLコレステロール値の推移です。ベースラインと比較してケトン食では大幅にLDLが上昇し、平均して245%、187 mg/dLの増加を示しました。スタチン医者はこれを見たらパニックでしょうね。ケトン食を止めると、スタチンを開始したかどうかにかかわらず、LDLはベースラインに前後まで低下しています。スタチンなしで220%減少、スタチンありで290%減少しました。
興味深いことに、BMIが低い患者でLDLコレステロール値の増加率が非常に高いことです。
以前の記事「糖質制限でLDLコレステロールが大きく上昇する人の特徴」で書いたように、痩せていて、中性脂肪/HDL比が低いほど、糖質制限でのLDLコレステロール上昇が大きいことになります。
糖質制限前のHDLコレステロールが1増加するとLDLコレステロールは0.53増加し、糖質制限前の中性脂肪が1減少すると、LDLコレステロールは0.19増加します。糖質制限前の中性脂肪/HDL比が1減少すると、LDLコレステロールは10.5増加します。また、BMIが1減少するとLDLコレステロールは6.1増加します。
以前の記事「みなさんの血液検査データ2020 集計 その3 LDLコレステロール」で書いたように、糖質制限ではLDLコレステロールの異常値である140以上の人の割合では、男女ともに50%を超えています。日本人は比較的BMIが低い人が多いことが影響している可能性はあります。
ここで、最も重要なことは、そもそもLDLコレステロール値が高いことが健康に悪いことなのか?ということです。この前提が間違っていれば、糖質制限のLDLコレステロール上昇は気にする必要はありません。多くの研究でLDLコレステロールが高い方が長生きであり、感染にも強いことがわかっています。LDLコレステロールが高いことが様々な病気のリスクを上げるというのも否定的な研究が多く存在します。
また、通常世の中の血液検査の基準値(正常値)というのは、検査機関によって少しずつ違いがあるのに、コレステロールだけは完全に一律です。不思議です。企業の力が働いているんですね。スタチンを処方すれば、ずっと処方し続けられます。そして、様々な副作用で医療から離れられなくなるでしょう。
「糖質制限でLDLコレステロールが上昇したらスタチンは必要か? その4」で書いたように、糖質制限ではLDL上昇以外は多くの健康的なパラメータが改善します。
糖質制限でLDLが上昇してしまった時に、医師に脅される人もいるでしょう。どのように判断するかはご自身の問題です。私は糖質制限をしているのであればLDLコレステロール値は全く気にしていません。
「Dramatic elevation of LDL cholesterol from ketogenic-dieting: A Case Series」
「ケトン食によるLDLコレステロールの劇的な上昇: ケースシリーズ」(原文はここ)
LDL→スタチン同様、有効ではないけど何らかの事情で処方され、
逆に健康を害するような処方はありそうですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
PPIですか?
清水先生、こんにちは。
コレステロール値には悩まされます。個人的には、先生の記事を読み、気にしていないのですが、会社では人間ドックや健康診断で必ず問題視されます。
早くコレステロール値について、本質的な見直しをしていただきたいものです。
じょんさん、コメントありがとうございます。
大量虐殺ワクチンでさえ見直されないので、コレステロールを見直すなんて夢のまた夢でしょう。
ADPKD持ちの56歳のおばちゃんです。
私も腎臓内科医からスタチンを処方されそうになって、スタチンは嫌、薬飲まないといけないのならゼチーアにしてほしいと。とりあえずスタチンは回避しました。すごい勢いでスタチンを勧めてくるのでげんなりしてます。
nao@berryさん、コメントありがとうございます。
コレステロール高い=スタチン処方はもう条件反射なのでしょう。