低炭水化物食はメタボになりやすい?

また糖質制限に批判的な研究が出てきましたが、いつものようにアホらしい内容でした。

炭水化物の推奨量を満たしている人と比較して、推奨を下回る炭水化物の摂取量だとメタボになりやすいという内容です。

気にする必要はありませんが、一応中身を見てみましょう。炭水化物からのエネルギーが45%未満を「炭水化物の摂取推奨量を下回る」、炭水化物からのエネルギーが45~65%を「炭水化物の摂取推奨量を満たす」と定義しました。しかし、いつものように食事の内容は食事アンケートという非常に質の低いデータです。メタボと判定するには、8.5時間以上絶食した朝に次の状態、腹囲の拡大、中性脂肪値の上昇、HDLコレステロール値の低下、血圧上昇、血糖値の上昇、のうち3つが該当した場合としました。

両方の群の平均年齢は 48 歳でした。炭水化物の推奨量を下回るグループの炭水化物からのエネルギーの平均は42% でしたが、炭水化物の推奨量を満たしたグループの炭水化物からのエネルギーの平均は50% でした。たった8%の違いです。摂取量が推奨を下回っていた人は、推奨を満たしている人よりも、エネルギーの割合としてより多くのアルコールを摂取しました(6.3%対3.2%)。アルコール摂取では中性脂肪が高くなるので、メタボと判定される可能性が高まりますが、実際はそうではなく推奨量を下回ったグループの方が中性脂肪値が上昇する可能性が低くなりました。(図は原文より改変)

結果OR95%信頼区間
メタボリックシンドローム
推奨量以下1.0671.063-1.071
推奨量を満たす1
腹囲増加
推奨量以下1.2971.289-1.304
推奨量を満たす1
空腹時中性脂肪値上昇
推奨量以下0.8650.859-0.870
推奨量を満たす1
空腹時HDLコレステロール低下
推奨量以下0.9580.955-0.962
推奨量を満たす1
血圧上昇
推奨量以下1.0861.084-1.089
推奨量を満たす1
空腹時血糖値の上昇
推奨量以下1.1071.103-1.110
推奨量を満たす1
炭水化物の摂取量が少ないことによるメタボの可能性はたった1.067倍です。質の低いデータを使っても1.067倍にしかなっていないのであれば、意味はありません。さらに、下回っているグループで腹囲が増加し、血圧や血糖値が高い可能性が高くなるとしたら、それは逆で、メタボだから、腹囲が増加したり血圧や血糖値が増加しているのを気にしているので、炭水化物を減らしているのかもしれません。または炭水化物を減らしているように見せかけたい、自分では努力していると見せたいので、メタボの人は過少申告している可能性もあります。また、日によって食事の内容、栄養のバランスは異なるのに、2回食事アンケートを行ったくらいで、その人が本当に推奨量以下なのか、以上なのかを判定するのは非常に無理があります。
また、炭水化物の推奨量を下回る群では、どの種類の脂質の摂取量も多いほど、メタボの可能性が高くなりました。総脂肪で1.27倍、飽和脂肪酸で1.072倍、一価不飽和脂肪酸で1.317倍、多価不飽和脂肪酸で1.056倍でした。これも同じ理由で意味がありません。炭水化物を過少申告すると、自然と脂質の摂取量が増加しているように見えます。
いずれにしても、炭水化物42%の摂取を低炭水化物食とは言えません。これを糖質制限と絡めて、糖質を制限するとメタボになるという人も出てくるかもしれません。糖質制限否定派はちょっとでも低い糖質摂取を低炭水化物、低糖質、糖質制限など一緒くたにしてしまいます。ほんのわずかな低炭水化物食は逆に本当にメタボを起こしやすいかもしれません。それは糖質過剰摂取でありながら、脂質も多く摂取することになるのからです。血糖値が上がり、インスリン分泌が増加するのに、脂質も大量摂取すれば、体内の脂肪は消費されず蓄積されてメタボにもなるでしょう。
低炭水化物、低糖質の定義は決まっていません。言葉が独り歩きして、内容を良く見ずに、結果だけを鵜呑みにする人もいるでしょう。
結局この研究は何の研究をしているのかよくわかりません。
炭水化物40%未満では45~55%と比較して、中性脂肪、血圧、および体重が減少し、HDLコレステロールが増加したというメタアナリシスは存在します。(ここ参照)これでさえ40%未満というのは糖質制限とは程遠く、糖質制限を否定する材料には全くなりえません。130gまたは25%程度以上の炭水化物を低炭水化物だと言っている研究は見る必要もありません。
糖質制限をやってみればわかります。腹囲、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値すべてが改善します。しかも大きく改善します。
医療は食事で病気や症状が改善してしまっては困るのかもしれませんが、食事を改善せずに健康に向かうことはできません。多くの慢性疾患の原因は食事の誤りです。

 

「Carbohydrate Intakes below Recommendations with a High Intake of Fat Are associated with Higher Prevalence of Metabolic Syndrome」

「炭水化物の摂取量が推奨値を下回り、脂質の摂取量が多いと、メタボリック シンドロームの有病率が高くなる」(原文はここ

4 thoughts on “低炭水化物食はメタボになりやすい?

  1. 何らかの目的(糖質制限否定)ありきのレポートなのか、
    単に頭のネジが緩んでいるのか

    きっと両方なのでしょうね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      意味のない論文でも、論文を出したことが重要な人がいますから、
      本人も何を言いたいかわからないかもしれません。

  2. そもそも炭水化物の推奨量とはどうやって決めたのかと言う疑問があります。厚労省は炭水化物の摂取量の規定を撤廃し、必須栄養素ではなくなったはずです。要するに全く食べなくても悪影響があると言うエビデンスが存在しないと言う事ですね。
    以前にも書きましたが低炭水化物かどうかは脂肪酸代謝になっているかどうかで判断すべきでしょう。こう言う研究では食事内容をアンケートなどに頼るよりケトン体値とその他の項目との関係を測定値で客観的に評価できないのでしょうか。何を食べたかは参考程度で良いと思います。

    1. 西村典彦さん、コメントありがとうございます。

      アンケートで論文が書けるんですから、検査するよりも簡単で安く済みます。
      あとは最初かた決まっている結果に結びつけるように操作するだけでしょう。

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