終末糖化産物(AGEs)を除去してくれるタンパク質も糖質過剰で機能不全になるかもしれない

糖質過剰摂取では高血糖になり、それにより終末糖化産物(AGEs)ができて蓄積してしまいます。このAGEsが様々な疾患の原因となったり、老化や組織の機能不全の原因になります。

糖化を薬で抑制することは今のところできないでしょう。そうするとこのAGEsを除去するメカニズムが重要と思われますが、十分には解明されていません。

AGEsはできてしまうとなかなか除去できないと言われています。AGEsが形成されると、タンパク質から結合された糖または糖誘導体を特異的に除去する特別な酵素はありません。しかし、体の中にはそれを除去するメカニズムとして、ユビキチン-プロテアソームシステム(UPS)というものとオートファジーの2つの経路が考えられています。これらの分解経路の機能は加齢とともに低下してしまうようです。

今回の研究はネズミさんのものですが、人間にも当てはまると思われます。p62と呼ばれるパックマン(懐かしい?)のようなタンパク質が、オートファジーのプロセスを通じて、糖によって引き起こされる有毒な細胞老廃物の除去に不可欠であることを示しています。このp62がないマウスでは大量の糖化ストレスでの生存率が20%でしたが、p62のあるマウスでは生存率50%でした。つまりp62は糖化ストレスに対して保護的であると考えられます。そしてp62のないマウスではよりAGEsが蓄積しやすくなっていました。

しかし、さらに糖化ストレスがかかると、AGEsの蓄積は、p62があってもなくても、糖化産物の濃度と時間に依存していました。つまり、タンパク質の糖化が閾値に達すると、AGEsの分解が効率的でなく、不溶化または凝集が起こり、これが糖化ストレス下での細胞毒性の加速に関連していることを示唆しています。

しかも、糖化はAGEsを除去するp62のプロセスを機能不全に陥らせているようなのです。糖化でできたAGEsを除去するメカニズムは糖化ストレスで機能が大きく低下してしまい、細胞毒性を増加させていると考えられるのです。しかし、この機能低下は可逆的で、糖化ストレスが低下すると、再度AGEsの分解能は増加するようです。このことは、加齢性黄斑変性症の動物モデルでも確認されており、糖化ストレスの除去は、加齢性黄斑変性症の原因である網膜病変の蓄積を逆転または停止させることが報告されています。(ここ参照)

p62を機能させる糖化ストレスのレベルでは、p62はAGEsの除去に対して主要な役割を担います。糖化ストレスのレベルが上昇すると、p62は機能不全になります。つまり、我々人間でも毎日の糖質過剰摂取による高血糖とそれによる糖化ストレスで、機能不全に陥ったp62依存性オートファジーが、加齢に伴うタンパク質恒常性の喪失、損傷したタンパク質での細胞毒性の蓄積および細胞死、老化などに大きくかかわっていることを示唆しています。

恐らく進化の中で、現代ほど糖質過剰摂取する時代はなく、糖化ストレスに対する防御能がそこまで備わっていないのではないかと思われます。ここまでの糖質過剰は想定していなかったのでしょう。

糖化ストレスに対してどれだけ耐えられるかは、その組織や細胞によって異なるでしょう。特に脳などの神経は脆弱だと考えられます。しかし、糖化ストレスを抑えれば、まだ逆転できる組織や細胞も多く存在しているでしょう。

AGEsは普段目に見えるわけではありませんし、蓄積していることが何かで示されるわけでもありません。そして、何かが不調になって、何かが機能低下や機能異常を起こして、老化や病気という形で表れてきます。しかし、多くはそのまま加齢性の変化で仕方がないことだと受け流してしまいます。糖質過剰摂取をやめることで、加齢性変化は停止はできなくても、ゆっくりすることは可能です。

糖化ストレスを抑制するには、糖質制限が最も有効な手段だと考えます。時間はかかるかもしれませんが、糖質制限で逆転できる症状も多くあると思います。糖質過剰摂取を放置しておいては、AGEsがどんどん蓄積してしまいます。今からでも糖質制限を始めましょう。

糖質過剰症候群

「Autophagic receptor p62 protects against glycation‐derived toxicity and enhances viability」

「オートファジー受容体p62は、糖化由来の毒性から保護し、生存率を高める」(原文はここ

One thought on “終末糖化産物(AGEs)を除去してくれるタンパク質も糖質過剰で機能不全になるかもしれない

  1. ランニングとヨーガを長年続けていると、年々柔軟性低下が実感されます。
    終末糖化産物(AGEs)蓄積の影響もあるのではないでしょうか。

    ただ、断食時間が長いと柔軟性が回復する感覚もあり、
    『「空腹」こそ最強のクスリ』(青木厚)
    記載のオートファジー機能で、AGEsも除去されているのは、と想像しています。

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