インスリン抵抗性が続くと心血管疾患のリスクが高くなる

時折、糖尿病の人であっても、空腹時血糖やHbA1cが落ち着いていると、肥満のままでいる場合があります。食事療法は当然カロリー制限をされているのでしょうが、明らかにインスリン抵抗性が非常に高く状態だと思います。

しかし、血糖などの数値が良ければ、専門医側ではやることもないのか、太っていることは患者側の努力不足(運動不足であったり、食事の摂取カロリーを順守していないなど)と考えている可能性があります。カロリー制限では十分に痩せられなかったり、継続が難しかったりする人も多いのではないでしょうか。

インスリン抵抗性そのものは非常に危険な状態だと思います。

今回の研究では冠動脈疾患とインスリン抵抗性が新たに診断された175人の非糖尿病の人を対象として、その後6か月間投薬や生活習慣の変更を個別に適した方法で治療し、再度6か月後にインスリン抵抗性を評価しました。最初にインスリン抵抗性が高い状態から、6か月後に改善した人とインスリン抵抗性が持続した人で、その後3年間または心血管疾患での死亡、致命的でない心筋梗塞、冠動脈血行再建術を必要とする不安定狭心症、または虚血性脳卒中のいずれかが起こるまで追跡しました。(図は原文より、表は原文より改変)

 

上の図は最初と6か月後のインスリン抵抗性を表すHOMA-IRです。HOMA-IRが2.5以上をインスリン抵抗性ありとしています。左がインスリン抵抗性の持続したグループ、右がインスリン抵抗性の改善を認めたグループです。

104人が持続的なインスリン抵抗性でしたが、残りの71人は有意にインスリン抵抗性が改善しました。

持続的インスリン抵抗性 改善されたインスリン抵抗性
継続された喫煙(%) 37(15/41) 8(2/25)
BMI 25±3.3 25±2.7
収縮期血圧(mmHg) 136±24 135±23
HbA1c(%) 5.7±0.6 5.6±0.5
空腹時血糖値(mg/dL) 108±24 95±10 *
空腹時インスリン(μU/mL) 15±6 6.4±2 *
Hs CRP(mg/dL) 0.08(0.03、0.18) 0.05(0.03、0.12)
LDLコレステロール(mg/dL) 100(84、124) 106(85、124)
HDLコレステロール(mg/dL) 42±9 44±11
中性脂肪(mg/dL) 143(115、184) 126(97、176)
1回目から2回目の検査での変化率
BMI −0.1 −2
収縮期血圧(mmHg) −4 −2
HbA1c(%) 1 -1
Hs CRP(mg/dL) 55 -1
LDLコレステロール(mg/dL) −13 −13
HDLコレステロール(mg/dL) 6 5
中性脂肪(mg/dL) −4 −12

1回目と2回目の検査での喫煙の継続、空腹時血糖値、空腹時インスリンを除くLDLコレステロールなどのアテローム性動脈硬化症の危険因子は、2つのグループ間で違いはありませんでした。さらに、1回目と2回目の検査の間で使用された心血管薬の使用された頻度、および1回目のテストの直後の投与量の変更または新しい薬の追加は2つのグループ間で違いはありませんでした。

 

上の図は心血管イベントを起こさずにいた期間を示しています。実線がインスリン抵抗性改善グループ、点線がインスリン抵抗性持続グループです。持続グループでは20人(19%)が心血管イベントを起こしました。(心疾患での死亡1人、致命的でない心筋梗塞3人、冠動脈血行再建を必要とする再発狭心症13人、脳卒中3人)

改善グループでは3人(4%)で、冠状動脈血行再建術を必要とする再発性狭心症2人、脳卒中1人でした。有意に改善グループの方が心血管イベントが起きない割合が大きいですね。
一変量 多変量
ハザード比 95%CI ハザード比 95%CI
持続的インスリン抵抗性 4.8 1.4–16 4.8 1.4–11
2回目の検査でのHsCRP 2.8 1.4〜8.4 2.8 1.1–6.9
年齢 1.1 1.0〜1.1 1.1 1.0〜1.1
喫煙の継続 1.9 0.7〜4.8
高血圧 2.0 0.9–4.1
高脂血症 1.1 0.8〜1.4
家族歴 1.4 0.6〜3.3
多血管疾患 1.4 0.6〜2.5
2回目の検査で空腹時血糖値 1.4 0.6〜3.2
1回目の検査でのHOMA-IR 1.2 0.6〜2.5
2回目の検査でのHbA1c 1.0 0.9〜1.0
上の表は心血管イベントの予測因子です。持続的なインスリン抵抗性が最もリスクが高く、4.8倍も心血管イベントのリスクが高くなります。次には炎症所見を示すCRPで2.8倍です。
LDLコレステロールなどが高い高脂血症(脂質異常症)はリスク因子ではありませんでした。
つまり、インスリン抵抗性が増加したまま放置しては非常に危険だということになります。
メトホルミン投与だけでなく、肥満や過体重でインスリン抵抗性を示す場合には、体重を落としてインスリン感受性を改善する必要があると思います。
糖質制限をしっかりして、インスリン抵抗性を速やかに改善すべきでしょう。
糖質過剰症候群
「Insulin resistance negatively affects long-term outcome in non-diabetic patients with coronary artery disease after therapies to reduce atherosclerotic risk factors」
「インスリン抵抗性は、アテローム性動脈硬化症の危険因子を減らすための治療後の冠状動脈疾患の非糖尿病患者の長期転帰に悪影響を及ぼす」(原文はここ

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