「その1」「その2」「その3」に続き糖質制限でLDLコレステロールが上昇してもスタチンは不要論を書いていきます。
LDLコレステロールは別として、心血管疾患のリスク因子はいっぱいあります。
アテローム性動脈硬化症はメタボリックシンドローム、前糖尿病、2 型糖尿病などで広く見られます。高血糖、インスリン抵抗性は糖尿病が無くても心血管イベントのリスクを増加させます。
中性脂肪、HDLコレステロール、血糖値、内臓脂肪、血圧などメタボの基準に含まれるもの、そして体重やBMIなどもリスク因子でしょう。
また炎症やあまりなじみがないかもしれませんがLp(a)もリスク因子だと考えられています。
そうであるのであれば、LDLコレステロール以外のリスク因子はほとんどが糖質制限で有益な方向に変化しますので、糖質制限が悪いはずがありません。
その3でも書いたように、アテローム発生性脂質異常症のリスクの3要素のsdLDLの増加、中性脂肪の増加、HDLコレステロールの低下は全て糖質制限で大きく改善しますし、糖質制限で血糖値、インスリン抵抗性、HbA1c、肥満および内臓脂肪も大きく改善します。
さらに、炎症や血圧も改善します。Lp(a)は個人的にはリスク因子としては微妙だと思っていますが、低脂質高炭水化物食で増加します。(ここ参照)私自身の人体実験での高脂質食でも大きくLp(a)は低下しました。(「5日間の高脂肪高エネルギー食負荷試験(人体実験) その2 リポタンパク質(a)Lp(a) あなたは何者?①」参照)心血管疾患予防には脂質を減らすように言われているのに、高脂質の食事でLp(a)が低下するのも興味深いですね。PAI-1という線溶系阻害因子も低下します。(「高血糖は凝固を促進し、高インスリン血症は線溶を阻害する」「血液がドロドロってなんだろう? その1」など参照)(図はここより)
つまり、糖質制限で心血管疾患のリスク因子として考えられているもので、改善しない(LDLが変化しなかったり、低下する人もいますが)のはたった一つLDLコレステロールだけなのです。それ以外は非常に大きく改善します。こんな改善を見る薬剤、食事法は他にはないでしょう。そうであるのであれば、後はLDLコレステロールが本当に心血管疾患のリスクとして非常に重要なのかが問題となるだけです。
スタチン医者は他のリスク因子の改善には目もくれず、LDLコレステロールの上昇だけを指摘し、スタチンを処方したがるでしょう。しかし、実際にはLDLコレステロールのリスク増加の程度は無いか、非常に小さいという研究が多くあります。そうであるならば、糖質制限にスタチンは必要ないでしょう。
LDLコレステロールの基準はスタチン処方のために設定されていると言っても過言ではないでしょう。次回はスタチンの恩恵はどの程度か?について書きたいと思います。
体調の良さを日々実感できるのも、糖質制限の利点ですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
体調ってなかなか数値化できないので、自分しかわかりませんが、非常に重要だと思います。
検査データの数値が良くなっても体調が悪くなっては、実際には体には良くないと思います。
数値で脅す人、数値に踊らされる人、様々ですが、数字は説得力があり、使い方で人を誘導できてしまうことも少なくないでしょう。
新型コロナのワクチン有効率95%っていうのを信じた人も多いのではないでしょうか?
清水先生 何時もながら興味を持って拝読させて頂いています。
私もLDLコレステロールが高いから動脈硬化が進展することはないと
思っている一人です。しかし現実的に動脈硬化巣に酸化 LDLが蓄積
しております。すなわちLDLがほとんどないⅤ型脂質異常症にも
動脈硬化性の虚血性心筋梗塞か発症しますし、small dense LDL
コレステロールが殆どないⅡa型脂質異常症にも心筋梗塞が発症し
ています。
以上から酸化LDLが何処からどのように蓄積するかが未解明な現在
LDL低下療法が全く無意味だと判断することは難しいのではないかと
思っています。
早いし機会に何故どこで酸化LDLが発生してどのように動脈硬化巣に
集まるのかその研究がまず先ではないかと思っています。
既に仮説はできていますがその検証に追われています。
ご参考になれば幸甚です。
2022-8-26
松田
松田さん、コメントありがとうございます。
私の勝手な考えでは、
酸化LDLは結果であり、多くは漏れ出てきたものだと思います。
しかし、sdLDLや糖化LDLが酸化したものも多いかもしれません。
それらは通常のLDL受容体には取り込まれず、LOX-1受容体にくっつきます。
LDLは血管壁に勝手に入っていくのではなく受容体を介して入ります。LDL受容体が制御されていれば問題は起きないでしょう。
sdLDLだけでなくインスリン抵抗性、高血糖などにより増加する電気陰性LDL(L5)は
炎症や凝固を活性化し、アテロームを発生させるのではないかと思います。
電気陰性LDLは弱く酸化されているにも関わらず、通常のLDL受容体にもLOX-1にも取り込まれるので、
それが血管壁に入った後さらに酸化ストレスなどで酸化して、酸化LDLが出来上がるとも考えています。
LDLを低下させても有害なLDL自体やそれがもたらす有害な反応を低下させることができなければ、
LDLの数値が低下しても動脈硬化は起きるのではないかと思います。
根本は凝固系を亢進させ、LDLの質を悪くする高血糖、インスリン抵抗性だと思います。