高血糖は凝固を促進し、高インスリン血症は線溶を阻害する

2型糖尿病は血栓性合併症のリスク増加と関連しています。糖尿病の80%が血栓性疾患で亡くなっています。これらの死亡の75%は心血管合併症によるものであり、残りは脳血管イベントと末梢血管合併症によるものです。(ここ参照)

また、糖尿病の人は糖尿病ではない人よりも、感染症を発症したり感染で死亡するリスクが高くなります。その感染リスクの増大は免疫低下に関連していると考えられます。

感染が起きると、強い炎症が起こります。炎症と血液の凝固線溶は互いに相互作用があると考えられます。糖尿病では感染が起きていなくても、血液の凝固や線溶系が変化すると考えられています。糖尿病および炎症性疾患はそれ自体で凝固促進状態となっています。

それでは、全身的に炎症が起きた場合に高血糖や高インスリン血症は凝固線溶系のどのような影響を与えるのでしょうか?

今回の研究では、ブドウ糖やインスリンなどを注入して、血糖値やインスリン値を一定に保ち、そこに炎症を起こす内毒素(エンドトキシン)を注入しました。

低インスリン正常血糖(L insu E gluc)(目標インスリン値:100 pmol / L、目標血糖値:5 mM(90mg/dL))

低インスリン高血糖(L insu H gluc)(目標インスリン値:100 pmol / L、目標血糖値:12 mM(218mg/dL))

高インスリン正常血糖(H insu E gluc)(目標インスリン値:400 pmol / L、目標血糖値:5 mM(90mg/dL))

高インスリン高血糖(H insu H gluc))クランプ(目標インスリン値:400 pmol / L、目標血糖値:12 mM(218mg/dL))

の4つのグループに分けました。

上の図は血糖値とインスリン値の推移です。矢印は毒素注入のタイミングです。血糖値のコントロールは非常に安定していますが、インスリン値は毒素注入後2~4時間で低インスリン正常血糖以外のグループで大きく上昇しています。

また、インスリン濃度に関係なく、急性高血糖は好中球の活性化を減少させました。

上の図は凝固系のマーカーを示しています。高血糖は、TATc(トロンビン-アンチトロンビン複合体)とsoluble TF(可溶性組織因子)のレベルを強く上昇させました。つまり高血糖は炎症における凝固系を活性化させたことになります。さらに、その活性化は毒素注入直前にはすでに起こり始めているのです。つまり、炎症が起きる前から高血糖は凝固系の活性化が起きていることになり、さらに炎症でその活性化が促進されたことになります。

上の図は線溶系のマーカーです。細かい説明は省略しますが、高インスリン血症は、すべての測定パラメーターに強く影響しました。高インスリン血症の影響は、PAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1)に最も深くなっていました。PAI-1は線溶系阻害因子です。つまり、PAI-1により形成された血栓の溶解が阻害されるため、血栓の成長を促進する危険因子と考えられています。

しかも毒素注入前に、高インスリン血症はPAI-1をほぼ倍増させていました。したがって、高インスリン血症は線溶系を炎症がない時にも低下させ、炎症時にも大きく線溶を阻害していたのです。

つまり、急性高血糖はインスリンレベルとは無関係に凝固を活性化するのに対し、高インスリン血症は血糖値レベルに関係なく線溶を阻害することを示しました。

糖質過剰摂取による高血糖や高インスリン血症自体がすでに炎症状態です。そこに感染で大きな炎症が加われば、血液の凝固は増加し、線溶系が低下してしまい、血栓を形成するリスクが非常に高くなります。

以前の記事「LDLやHDLは免疫システムの一部である その2」などで書いたように、糖質過剰に対して人類の体のメカニズムは、糖質過剰摂取が炎症を起こすので、感染時と同様の対応をしていると考えられます。人体は感染の炎症も高血糖の炎症も区別していないと思われます。

新型コロナウイルスと糖尿病 その1」などで書いたように、新型コロナウイルスの感染では糖尿病の人の重症化リスクが高くなっています。

糖質制限はパンデミックで命を救うかもしれません。

糖質過剰症候群

「Hyperglycemia enhances coagulation and reduces neutrophil degranulation, whereas hyperinsulinemia inhibits fibrinolysis during human endotoxemia」

「高血糖は凝固を増強し、好中球の脱顆粒を減少させるが、高インスリン血症はヒト内毒素血症時の線維素溶解を阻害する」(原文はここ

コメント

  1. まーさん より:

    ”糖質制限はパンデミックで命を救うかもしれません。”

    私もそう思います。結局のところパンデミックはウイルスではなく我々人間の問題だと思うのです。免疫や代謝がきちんと機能していれば、無症状あるいは単なる風邪で何の問題も無く済むものかもしれませんね。基礎疾患の無い若い人が重症化した例もあるようですが、疾患としてまだ症状に出ていない未病の状態だったかもしれませんね。詳しい検証が待たれます。
    結局、肥満体国アメリカで猛威を振るったインフルとコロナは、糖質過剰への警告なのではと思っています。

    • Dr.Shimizu より:

      まーさんさん、コメントありがとうございます。

      基礎疾患の有無については、診断がされているかどうかだけの問題なので、若い人でもインスリン抵抗性が高い人もリスクは高いのではないかと思います。
      また、今回はアメリカだけに限ったことではないですね。