新型コロナウイルスと糖尿病 その1

新型コロナウイルスの重症化のリスクが高い基礎疾患として糖尿病があります。新型コロナウイルスの論文は毎日のように出てきますが、糖尿病との関連を示した論文が発表されました。

以下はその要旨です。

新型コロナウイルス感染での糖尿病の全体的な割合は5.3%から20%であることが報告されています。自然免疫応答が損なわれているため、糖尿病患者は、新型コロナウイルス感染後の感受性が増加し、疾患の重症度が増加しています。さらに、糖尿病を伴う新型コロナウイルス感染は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および敗血症性ショックを伴う急速に進行する可能性がはるかに高く、最終的には多臓器不全が続く可能性があります。糖尿病を伴う人は、より集中治療室(ICU)への入院と関連していまいた。ICUに入らなかった患者と比較して、ICUに入った患者は、糖尿病のある人で22.2%で、糖尿病のない人では5.9%でした。中国で最大の疫学調査により、糖尿病を伴う新型コロナウイルス感染の死亡率は最大7.3%であり併存疾患のない患者の死亡率は0.9%と大きな違いがありました。糖尿病における新型コロナウイルスの感染は、ストレス状態を引き起こし、糖質コルチコイド(副腎皮質ホルモン)やカテコールアミンなどの高血糖ホルモンの分泌を増加させ、血糖値の上昇、血糖値の異常な変動、糖尿病の合併症を引き起こす可能性があります。しかし、プロの内分泌専門医と比較して、武漢の第一線の呼吸器専門医および救命救急専門家のほとんどは、血糖値の懸念がなく、糖尿病治療の臨床経験が不十分であり、糖尿病患者の血糖変動につながる可能性があります。病気の進行を監視し、悪化を避けるために、入院中のすべての患者の血糖を管理する必要があります。

 

イタリアの発表でも糖尿病の患者の死者は非常に多いようです。ある記事によると「イタリア国立衛生研究所の17日の発表によると、感染による死者のうち、3つ以上の疾患を抱えていた人は49%。全く疾患がなかった人は0・8%にとどまった。死者の76%は高血圧で、36%は糖尿病にかかっていた。感染者の平均年齢は63歳だが、死者の平均は79・5歳と高い。」とされています。(記事はここ

その他の中国の論文でも、糖尿病があると新型コロナウイルスの肺炎が4.7倍も重篤化する可能性があるとしています。(その論文はここ

さらに、最近のアメリカの状況の報告が発表されました。2020年2月24日から3月9日の間に9つのシアトルの病院の集中治療室(ICU)に入院した患者24人について分析しています。平均年齢63歳で、23歳~97歳でした。(97歳でICUに入院するんですね?)

患者の50%は入院時に発熱し、58%は糖尿病でした。なんと6割近い人が糖尿病だったのです。また、5人(21%)は慢性腎疾患を患っていました。3人(14%)に喘息があり、3人全員が、重症になる前に、全身的なグルココルチコイドを外来で最近処方されていました。5人の患者(21%)は現在または以前の喫煙者であり、5人(21%)は睡眠時無呼吸でした。8人の患者(33%)は、複数の基礎疾患がある状態でした。

75%(18人の患者)は人工呼吸器を必要としました。ICUの1日目から18日目までの間に患者の半数(12人)が死亡しました。生存している12人の患者のうち、5人は自宅に退院し、4人はICUから出ましたが入院中でした。(下の図はこの論文より)

早くて1日で死亡した人もいますし、年齢は不明ですがDNR(蘇生処置拒否)の意思を示していた人も4人もいました。アメリカらしいというのでしょうか?重症化すると50%もなくなってしまう状況のようです。ニューヨークの報告でもICU入室者の41%が死亡するというデータが報告されていました。

糖尿病はやはりかなりリスクが高いようです。以前の記事「インフルエンザと糖尿病」でも書いたように、糖尿病の人では圧倒的にインフルエンザでも重症化するリスクが高いのです。感染に対する免疫力は高血糖で大きく低下すると考えられます。

糖質制限をすることは重症化予防の第一歩かもしれません。

 

「Timely blood glucose management for the outbreak of 2019 novel coronavirus disease (COVID-19) is urgently needed」

「2019年の新規コロナウイルス病(COVID-19)の発生に対するタイムリーな血糖管理が緊急に必要である」(原文はここ

4 thoughts on “新型コロナウイルスと糖尿病 その1

  1. 清水先生の御著書「糖質過剰」症候群を読んだり、毎日のブログを拝見させていただいている者としては、今日の内容はある程度は予想していました。
    間抜けな自分の過去の疾患(高熱のインフルエンザ、帯状疱疹等)を振り返ってみると、その時は年のせいで済ませていましたが、糖質過剰による免疫機能の低下が大きかったのだろうと思います。
    免疫機能低下は「糖質過剰」症候群の最たるものかもしれないと実感している自分がいます。

    1. 太田さん、コメントありがとうございます。

      記事を予想されてしまいましたね。私は単純ですからね。
      しかし、糖質過剰は免疫低下に大きく関係しているのではないかと思います。

  2. 清水先生の次のブログの予想があたったという意味ではありません。尊敬している清水先生にそんな恐れ多い事はできません。
    真意としては新コロナウイルスに対しも、血糖コントロールができてない人が罹患率、死亡率も高いのだろうな予想してましたです。
    もう少し文章力を付けるようにしたいと思います。
    失礼しました。

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