新型コロナウイルス感染では、本当に様々なことが起きています。イタリアなどからの報告では次のような症状が出ているようです。
Very glad this tweet was brought to my attention. I’ve had this issue for about a week now. 2 toes and 1 finger. Treated at first as athletes foot, then a hematoma, another doctor told me Reynauds! pic.twitter.com/R4BqC0BLoO
— Nicole B (@_NicB_) April 13, 2020
しもやけのようにも見えますが、下の写真はすでに青黒くなっており、血流が途絶えているように見えます。相当痛みを伴うのではないでしょうか?これらは恐らく、微小血管の血栓症でしょう。
今回のウイルスがもたらす問題の多くはこの血栓によるものかもしれません。そうだとすると血液型O型の人は血液が固まりにくいので、少し保護されている可能性があります。(「血液型占いではない! O型は出血死リスクが高い?」参照)O型の血液型は他の血液型に比べ、血液凝固因子の1つであるフォンビルブラント因子の濃度が約30%低いと言われています。さらに武漢やニューヨークからの報告では、O型の人は感染自体が少し少ないとも言われています。(論文はここ。プレプリント)O型の新型コロナウイルスの陽性の可能性は約27%低く、一方でB型は約25%高い結果でした。感染と血栓と血液型の関係は複雑かもしれません。
また、武漢からの報告では生存者と比較して、死亡した人では凝固亢進のマーカーであるD-ダイマーというものが大きく増加していたようです。(図は原文より)
上の図はD-ダイマーの推移です。赤が死亡した人、青が生存者です。亡くなった人ではどんどんD-ダイマーが増加しています。全身で、様々な臓器で血栓が発生している可能性があります。入院時に1.0μg/mLを超えるD-ダイマーである人では、0.5以下の人と比較して、18倍以上も死亡率が高まっていました。
新型コロナウイルスの受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、筋細胞および血管内皮細胞で発現します。肺だけでなく心臓、肝臓、腎臓を含むすべての臓器の小さな血管の血栓を作って様々な臓器の障害を起こしている可能性もあります。
重症化のリスクの高い基礎疾患である、高血圧、糖尿病、心血管疾患は全て、糖質過剰症候群であり、血管のグリコカリックスが破壊され、凝固亢進が起きやすい状態であると考えられます。そこに新型コロナウイルス感染が起きて一気に全身の血栓症が起きるのかもしれません。
以前の記事「高血糖は凝固を促進し、高インスリン血症は線溶を阻害する」で書いたように、高血糖や高インスリン血症は凝固線溶系に影響を及ぼし、血栓ができやすい状態をもたらします。特にそこに強い炎症が加わった場合にはさらに深刻になる可能性もあります。
ただ、最近気になる報告もあります。3人の新型コロナウイルス感染症で重症化した人で抗リン脂質抗体が認められました。(その論文はここ)抗リン脂質抗体は異常にリン脂質タンパク質を標的とした自己抗体で、これらの抗体の存在は抗リン脂質症候群の診断の中心となります。(詳しい診断基準は知りません。抗リン脂質抗体症候群についてはここ参照)すべての患者の情報はありませんが、3人とも高血圧や糖尿病などの基礎疾患がありました。そして3人ともに脳梗塞を発症しています。1人の患者は両側の下肢ならびに左手の第2、3指に上の写真のような指の虚血が起きていました。
新型コロナウイルスの死亡した人の中には、もしかしたら、劇症型の抗リン脂質抗体症候群を起こし、全身性の血栓症で死亡してしまった人もかなり多い可能性もあります。もちろん抗リン脂質抗体は一過性の出現の可能性もあるでしょう。
劇症型の抗リン脂質抗体症候群は以前に新型インフルエンザのときに症例報告もあります。(ここ参照)
妊婦さんはやはり心配ですね。劇症型でなくても抗リン脂質抗体症候群は流産、子宮内胎児発育遅延等の可能性があります。十分に注意してください。
「Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study」
「中国武漢におけるCOVID-19の成人入院患者の死亡率の臨床経過と危険因子:後ろ向きコホート研究」(原文はここ)
こんにちは。
武漢とニューヨークでO型の感染が少ないと示されたプレプリンとについてですが、SARSですでに動物実験までされており、エビデンスがあります。
もし新型コロナとSARSが同じメカニズムと仮定すると、抗A抗体がS蛋白を阻害してウィルスの吸着を妨げるそうです。だとしたら、O型はフサンは不要かもしれませんね(逆に言うと、O型の人は生来フサンを服用している状態?)。
やまさん、コメントありがとうございます。
確かに動物実験上は抗A抗体がACE2にウイルスがくっ付くのを抑制しているようですね。
香港でのSARSの報告では院内感染でO型のオッズ比は0.18ですからね。
ただ、人間では抗A抗体の力価が低いO型の抑制効果はなさそうです。日本人は力価が低いようです。
O型の私はちょっとだけ期待していますが。
早速のご返事ありがとうございます。
新型インフルの、中国ではなくニューヨークの方の結果ですが、アメリカ人はB型とAB型が少なく、有意差はあってもデータとしての信頼性に欠けるかな、と思いました。
あと、Rh因子は赤血球だけに発現するので、慎重に精査する必要があるのかな、とも思いました。いずれにしても追試が必要ですね。