糖質制限ではLDLコレステロールが低下する人、変化しない人、上昇する人と様々ですが、上昇することは決して珍しくはありません。いわゆる高LDLコレステロール血症という定義に当てはまる140mg/dL以上の人割合は日本人で20%ですが、糖質制限ではなんと50%を超えます。(「みなさんの血液検査データ2020 集計 その3 LDLコレステロール」「糖質制限とLDLコレステロール上昇6 みなさんの血液データから」参照)

そして、糖質制限を始めて何年経っても上昇したままの人も珍しくありません。私もその一人です。

このLDLコレステロール上昇が糖質制限反対派やスタチン医者の標的にされます。

糖質制限でLDLコレステロールが200とか300mg/dLとかに上昇を認めたときにスタチンを飲んだ方が良いのでしょうか?

これまで私のブログの記事で様々なエビデンスを紹介してきました。今回それをまとめたようなわかりやすい論文が出たのでそれに沿ってみていきましょう。題名は「Statin therapy is not warranted for a person with high LDL-cholesterol on a low-carbohydrate diet」「スタチン療法は、低炭水化物食で LDL コレステロールが高い人には必要ない」(原文はここ)です。

まずは、そもそもLDLコレステロールはアテローム性動脈硬化症のアテロームを発生させる原因なのか?ということです。

高LDLコレステロールの代表と言えば家族性高コレステロール血症(FH)です。FHは遺伝的にLDL受容体の問題があり、血中のLDLコレステロールは激増しています。本当に高LDLコレステロールがアテロームを発生させるのであれば、FHの人は長く生きられない可能性が高くなります。

以前の記事のFHのシリーズを読んでみて下さい。

家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」「その7

実際にはFHの方のいくつもの研究で、LDLコレステロールと超音波で調べたアテローム性動脈硬化症の程度との間に関連性は見られませんでした。さらに、早期の心血管疾患のない家系で、20歳以上の多くの健康なFHである人は、一般の人と同様の平均余命を持っていることがわかっています。

また別の研究では、遺伝的に決定されたFHを有する3人の家族を時間の経過とともに追跡し、前の世代も合わせて合計412人を特定しました。これらのメンバーの冠動脈疾患での死亡率および全原因死亡率をオランダ全土の死亡率と比較しました。そうすると、なんと19世紀では、これらのFHの家族の死亡率は一般の人よりも顕著に低かったのです。その理由は、当時の最も一般的な死亡の原因は感染性の疾患です。高LDLコレステロールが感染から保護するという多くの証拠があるのです。

さらにさらに、心血管疾患あり無しのLDLコレステロール値および平均年齢は、FHの6つの研究のうちの5つで有意に違いはありませんでした。その一方で、HDLコレステロールは、心血管疾患のあるFHでは6つの研究のうち4つにおいて有意に低かったのです。つまり、LDLコレステロールは心血管疾患には関連せず、HDLコレステロールが関連があることを示唆しています。

高LDLコレステロールがFHにおける心血管疾患の原因であれば、加齢に伴いさらに心血管疾患のリスクは増加するはずですが、実際にはそのようになっていません。つまり、高LDLコレステロール以外の要因がFHの早期の心血管疾患の原因であると考えられます。さらに、高齢まで生存しているFHはその高LDLコレステロール以外の要因が存在していないから、高齢まで心血管疾患にならないとも考えられます。

明らかに、心血管疾患になるFHの人では、高LDLコレステロールより心血管疾患の他のより重要な危険因子(凝固線溶系因子の異常など)を遺伝的に受け継いでいる可能性があるのです。

17人のFHおよび26人の正常な人の研究で、FHでは血小板凝集薬に対する感度が有意に高くなっていました。FHの別の研究でもFHの人の血小板が正常な人の血小板よりも様々な凝集剤に対して有意に反応性が高いことがわかりました。

別の研究では、血漿フィブリノーゲンおよび第VIII因子は、心血管疾患を伴うFHで有意に高かったのですが、LDLコレステロールや他の脂質に関しては有意差がなかったのです。

720人のFHの研究では、スタチンだけでも、スタチンにエゼチミブ(ゼチーア)を併用しても、コレステロールの数字は良くなりますが、効果は無いばかりか、アテローム性動脈硬化症の進行を止めることができていません。プラセボと何ら変わらなかったのです。

LDLコレステロールが原因だという考えは非常に矛盾しています。ずっと長い間LDL コレステロールのリスクは誇張されてきており、LDLコレステロールを下げることが目的になってしまっているように思えます。

糖質制限をして、中性脂肪値が低下し、HDLコレステロールが上昇している前提ではLDLコレステロール上昇を恐れる必要はないでしょう。

この続きは明日以降の記事で。

12 thoughts on “糖質制限でLDLコレステロールが上昇したらスタチンは必要か? その1”
  1. 私自身は、スタチンは怖い薬と認識するようになりましたが、ノーベル賞受賞され、マラソンランナーでもある山中先生が
    スタチンを絶賛していた記事を見たことがあり、残念な印象でした。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      山中先生はすっかり有名人になったおかげで、様々な質問を受けるのでしょう。
      知らない、わからないという答えは期待されていませんし、ご自身のプライドもあるのでしょう。
      またよくわかりませんが、スポンサーに対する配慮なのかもしれません。

  2. 清水先生、こんばんは。
    人間ドックでも、まだまだLDLコレステロールが高いと大問題だ、と言われます。
    また、健康のためにスタチンを飲んでいる医師もいる、ということを聞いたこともあります。
    コレステロールの問題は根が深いと感じています。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      私の知人の医師にも、スタチンを飲んでいることを自慢げ(?)に話している人が何人かいました。
      かわいそうに、と思ってしまいましたが、本人が医師なのでなかなか聞く耳は持ってないでしょう。

  3. こんにちは。
    まさしく、糖質制限食+ファスティング+運動(筋トレ)でLDLコレステロールが高値(192)の者です。
    LDL以外は中性脂肪、肝臓、腎臓、糖尿の指標などすべて正常なのですが、「3ヶ月後にLDLが高ければスタチン」と言われてしまいました。
    以前のブログにあった、中性脂肪/HDLの値は1.2ぐらいです。
    何とか先生を説得できないものでしょうか。

    1. りんりんさん、コメントありがとうございます。

      スタチン医者を説得などできる確率はほぼゼロです。LDLコレステロールの数値が最も重要だと思い込んでいますので。
      もちろん、自分の意思、自己責任でスタチンを飲まない選択を認めてくれる医師はいると思います。

      1. 清水先生、ご返信ありがとうございます。
        先生のブログのお陰で数年来のLDLの疑問が解けてホッとし、感謝しております。
        問題のお医者さんは、元々動脈エコーを撮ってほしいと希望して受診しているのに、エコーを撮りもせずLDLの数値だけでスタチンと仰るのが不思議でした。
        次回、血液検査前にLDLの粒子サイズを測ってくださいと言うか、動脈エコーを撮ってくださいと言うか、いずれにせよこちらの意向をきちんと話すようにします。
        勇気をありがとうございました。

        1. 清水先生、その後のご報告です。
          問題のお医者さん(地域では名の通った循環器内科のクリニック)に、LDL-cの粒子サイズの検査をして欲しいと伝えたところ、「それは自費診療なのでうちではできません。それにLDL-cは粒子サイズにかかわらず悪さをします。あなたの値では危険です」との回答。
          続けて頸動脈エコーを撮ってくださいとお願いしたところ、「頸動脈だけでなく心エコーも必要。それに今の時点でエコーが問題なくてもある日突然来ることがあり得る」。
          私の高LDL-cが初めて見つかったのは3年前でその当時かなり詳しく全身の動脈エコーを撮ったこと、そして仮に現在もエコーが問題無いとなればこのLDL-cは悪さをしないLDL-cだと考えていいのではないですか、と言いましたが全く聞き入れてくれません。もうこれは清水先生がおっしゃるようにどこかの宗教と一緒だ、と考えて諦めました。
          その後近隣の大手の病院に片端から電話してLDL-cの粒子サイズを計測してくれませんかときいたところ、某旧帝大病院が、「院内ではできないが先生に相談してくれれば臨時で外注検査してもらえるかもしれない」とのことでした。
          今後も健診で引っかかって嫌な思いをしたくないので、かかりつけ医(先程の押し問答をしたところです)に紹介状を書いてもらって旧帝大病院に行ってこようと思います。
          長々とすみません。日本の片隅で(とはいっても大都市なのですが)今もこんなやりとりが行われていることを知っていただきたくて。

          1. りんりんさん、その後の経過報告ありがとうございます。

            予想通りでしたね。スタチン医者には期待できないでしょう。
            しかし、最近は患者側から言えばスタチンではない薬を処方してくれる医師もいます。
            ただ、そもそも糖質制限でLDLコレステロールが上がることが問題なのか?ということです。

  4. りんりんさんへ。
    いかにも有りがちな医師とのやり取り、臨場感持って読ませていただきました(清水先生も学ばれた「旧帝大」さすが)。
    参考になります、有難うございます。

    1. 鈴木 武彦さん、こんにちは。
      LDLの無理解悩ましいですね。
      ちなみに「旧帝大」以外の日赤などでも、「そんな検査は聞いたことがない」という回答でした…

  5. 清水先生、再々ありがとうございます。
    スタチンは、糖尿病発症率を上げるということも怖いのですが、筋トレ愛好者としては、LDLを下げることで筋肥大が起きなくなってしまうor低下してしまうことが怖いです。
    先生が書かれたように、LDLが筋肉に脂質を届ける重要な役割を担っているならば、素人考えですが筋肥大を手伝ってくれる相棒のはずなので、それを下げてしまったら。。と。
    スタチンで筋壊死が起こるのはごく一部の患者だ、と医師は言うのですが、そのように考えると誰にでも起きてもおかしくありません。
    なので、スタチンに限らずできればLDLを下げる薬を飲みたくない、LDLの粒子サイズを計測しかつ必要ならエコーやCTも撮ってもらってLDLが悪さをしていないことを証明してもらいたい、トータルで「あなたは健康ですよ、今やっている糖質制限と運動はそれで大丈夫ですよ」と言ってもらいたいというのが今の心境です。

    また、長々とすみません。先生の貴重なお時間を費やしてしまうのが申し訳ないので、ご返信は結構です。少しでも先生のご参考になれば幸いです。

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