家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない その6 スタチンの絶大な効果?

以前の記事「家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない その1」「その2」「その3」「その4」「その5」の続きです。

家族性高コレステロール血症(FH)ではLDLコレステロールが異常に上昇するので、治療ではスタチンが必須と考えられています。

しかし、その4ではLDLコレステロールは低下させても、アテローム性動脈硬化症は改善しないことや、その5ではスタチン自体が禁忌ではないかということを書きました。

この研究ではFHにスタチンを使用すると、どれほどの効果が得られる可能性があるのかを研究しています。結果は絶大(?)です。

対象は1,559人のFHの患者です。スタチン使用者は1,041人で、スタチンを使っていない人は518人です。

結果はスタチン使用者は11,674人年(人年はフォローアップの年数と、人数を掛け合わせたもの)の間に89の冠動脈イベントと17人の死亡がありました。一方スタチンを使用しない人では4,892人年の間に22の冠動脈イベントと9人の死亡を経験しました。1,000人年当たり7.6対5.3でした。

スタチン使用はそのまま重み付けなしのまま調整なしでは、冠動脈疾患や全原因死亡のハザード比が1.65とリスクの増加と関連していました。しかし、様々な調整をするとハザード比が0.56まで低下し、44%のリスク減少になりました。

なぜ調整したかというと、スタチン使用者がやや年齢が高く、ややBMI、LDLコレステロール値と中性脂肪値が高かったからです。そして、明らかな違いとして、スタチン使用者は他の脂質低下療法、血圧の薬、糖尿病の薬、抗血小板薬を飲んでいました。

調整した後でも、他の脂質低下療法、血圧の薬、糖尿病の薬、抗血小板薬の割合はスタチン使用者で明らかに多い状態でした。

しかし、単純に考えると、スタチンを使用していない人では4,892人年あたり死亡は9人で、1000人年あたり1.8人の死亡で、スタチン使用者では、11,674人年当たり17人の死亡で、1000人年当たり1.5人の死亡となります。スタチンの使用により1000人年あたり0.3人の死亡の減少、つまり3300人年に1人をやっと助けられるようにしか見えません。
33年間100人を治療するとやっと1人死亡を減らせるとも言えます。

調整した状態では抗血小板薬を使用しているスタチン使用者の有利さは大きなことではないかと思います。

44%リスク減少と大きな効果を見せるための調整なのかもしれません。他の研究で9つの無作為化された、コントロールされたFHのコレステロール低下試験の結果では、どれも統計的に有意ではなかったという報告があります。

しかし、このような絶大な効果があるように見せかける統計的なテクニックが多くの人を混乱させるでしょう。

その5」で書いたように、スタチンはFHでは禁忌だと考えます。

 

「Statins in Familial Hypercholesterolemia: Consequences for Coronary Artery Disease and All-Cause Mortality」

「家族性高コレステロール血症におけるスタチン類:冠動脈疾患および全死亡率の影響」(原文はここ