家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない その2

前回の「その1」の続きです。家族性高コレステロール血症の心血管疾患の原因が高LDLコレステロールが原因であると考えることの矛盾点をさらに挙げてみます。

3.心血管疾患を伴わないFHのLDLコレステロールは、心血管疾患を有する同じ年齢のFHとほぼ同じくらい高い

これまでの考えでは、LDLコレステロールが高ければ高いほど、心血管疾患のリスクが高くなると考えられています。当然FHでは心血管疾患に苦しむ人はそうでない人よりもLDLコレステロールが高くなければならないと考えるのが普通でしょう。

しかし、心血管疾患あり無しのLDLコレステロール値および平均年齢は、6つの研究のうちの5つで有意に違いはありませんでした。その一方で、HDLコレステロールは、心血管疾患のあるFHでは6つの研究のうち4つにおいて有意に低かったのです。

つまり、LDLコレステロールは心血管疾患には関連せず、HDLコレステロールが関連があることを示唆しています。

4.FHのみを含むコレステロール低下ランダム化比較試験での結果は、疑問があるか全く利益がない

倫理的理由から、FHでプラセボとのランダム化比較試験はほとんど行われていません。その代わりに、高強度コレステロール低下は低強度コレステロール低下とで比較されているものもあります。9つの研究の結果をみると、冠動脈疾患での死亡率、全原因死亡率、非致死的冠動脈疾患、心血管疾患などを改善にはどれも成功していません。

5.早期の心血管疾患を伴うFH家系の一部の非FHの人は、FHではない(つまりコレステロールが高くない)にもかかわらず早期の心血管疾患に苦しんでいる

もしも、高LDLコレステロールがFHにおける心血管疾患の原因であれば、加齢に伴いさらに心血管疾患のリスクは増加するはずですが、実際にはそのようになっていません。つまり、高LDLコレステロール以外の要因がFHの早期の心血管疾患の原因であると考えられます。さらに、高齢まで生存しているFHはその高LDLコレステロール以外の要因が存在していないから、高齢まで心血管疾患にならないとも考えられます。

FHの家系で正常な血中の脂質の値を有する人の一部は、高LDLコレステロール以外の要因を受け継ぎ、一般の人と比較して大きなリスクがあると考えられます。

実際にFHの家系1691人、9世代を調べた研究があります。FH家系の40人の死亡年齢を分析したところ、FHを有する13人の男性の平均死亡年齢は57.3歳であり、FHなしの6人の男性の平均死亡年齢は61.8歳でした。FHを有する11人の女性の平均​​死亡年齢は65.7歳であり、FHのない女性では59.3歳でした。FHを有する男性は、FHのない親族の男性と比較してやや短いもののほぼ同じくらいの寿命の長さであり、FHを有する女性は、FHのない女性よりも6年長く生きていたのです。その頃の平均寿命は、白人男性と女性ではそれぞれ67歳と75歳、非白人男性と女性ではそれぞれ61歳と67歳でした。

6.FHのいくつかの研究は、様々な凝固因子が心血管疾患を引き起こし得ることを示している

凝固システムの先天性な異常を示している研究があります。17人のFHおよび26人の正常な人の研究で、FHでは血小板凝集薬に対する感度が有意に高くなっていました。FHの別の研究でもFHの人の血小板が正常な人の血小板よりも様々な凝集剤に対して有意に反応性が高いことがわかりました。

また別の研究で、正常な人の洗浄血小板をFHの血漿で培養すると血小板凝集薬に対する反応性が増加しました。つまり、FHにおける血小板活性化の増加は、異常な血漿成分によって誘発されると考えられるのです。

さらに別の研究では、血漿フィブリノーゲンおよび第VIII因子は、心血管疾患を伴うFHで有意に高かったのですが、LDLコレステロールや他の脂質に関しては有意差がなかったのです。

FHの39人の研究では3分の1の人に心血管疾患がありましたが、心血管疾患のある人では、インスリン、インスリン抵抗性、中性脂肪、t-PAI-1抗原および活性が有意に高くなっており、HDL-Cは有意に低くなっていました。その一方で、喫煙、血圧、肥満またはLDLコレステロールに関して有意な差はなかったのです。

他にもFHにおける多くの凝固因子に関する研究があります。

明らかに、心血管疾患になるFHの人では、高LDLコレステロールより心血管疾患の他のより重要な危険因子(凝固線溶系因子の異常など)を遺伝的に受け継いでいる可能性があるのです。

心血管疾患を伴わないFHの中ではHDLコレステロールがより高く、一般的にHDLは抗血栓作用や抗炎症作用を有していると考えられているので、HDLコレステロールの増加がFHでも抗血栓作用と関連していると考えられます。

現在当たり前のようにFHの人はスタチンで治療されていますが、コレステロールを低下させることによるFHでのメリットは証明されていないと考えられます。スタチンにはいくつもの深刻な副作用があります。

凝固系を活性化させず、炎症をできる限り抑え、HDLを増加させることが最も重要な治療だと考えられます。LDLコレステロール値の異常さにとらわれず、糖質制限を行い、必要であれば抗血小板薬などを使用するのが最も合理的ではないでしょうか?

家族性高コレステロール血症は非常に高いコレステロール値を示します。それであっても、心血管疾患のリスクとは考えにくく、FHではない一般の人であればなおさらコレステロール値の上昇がリスクになるとは思えません。糖質制限でも「糖質制限とLDLコレステロール上昇」などに書いたようにLDLコレステロールが上昇することがあります。しかし、中性脂肪が低くHDLコレステロール値が十分に高ければ、何ら心配する必要はないでしょう。

 

「Inborn coagulation factors are more important cardiovascular risk factors than high LDL-cholesterol in familial hypercholesterolemia」

「先天性凝固因子は、家族性高コレステロール血症の高LDLコレステロールよりも重要な心血管疾患のリスク因子である」(原文はここ

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