家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない その3 PCSK9阻害薬のウソ

以前の記事「家族性高コレステロール血症から考える 高LDLコレステロールは心血管疾患の原因ではない その1」「その2」で、家族性高コレステロール血症においてもLDLコレステロール値は心血管疾患と関連していないとの考えを書きました。

高LDLコレステロールの治療薬としてPCSK9阻害薬という薬があります。この薬を使うと非常にLDLコレステロールが低下します。適応にはもちろん家族性高コレステロール血症(FH)があります。FHにPCSK9阻害薬を使うのはもちろんLDLコレステロール悪玉説によります。それでは、FHでPCSK9阻害薬を使ってLDLコレステロール値はどれほど下がり、どれほどの効果があるのでしょうか?

PCSK9阻害薬によりFHではプラセボ群と比較して、55%もLDLコレステロールが低下します。ApoBも50%低下、総コレステロールは38%低下します。中性脂肪も18%低下し、HDLコレステロールは7%近く増加します。

しかし、その効果は疑問です。FHの人で、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、または心臓血管死は、PCSK9阻害薬を使った群では18/781 (2.38%)、コントロール群では22/797 (2.86%)です。これをハザード比で見ると0.83となり、PCSK9阻害薬のボコシズマブはリスクを17%も低下させると考えることもできるかもしれませんが、心血管イベントの発生率の差はたった0.48%です。NNT(NNTについては「糖質制限にスタチンの併用は危険ではないか?」参照)という面で考えれば、NNT=208です。つまりPCSK9阻害薬でFHに効果をもたらすには208人もの人を治療してやっと1人効果が得られるのです。数字のマジックに騙されないようにしなければなりません。

PCSK9阻害薬は以前の記事「脂質異常症の治療薬、PCSK9阻害薬エボロクマブ(レパーサ)は本当に必要か?一人救うのに2億円かかります!」にも書いたように効果が怪しい上に、薬剤の価格は非常に高く、これを積極的に使って喜ぶのは製薬会社だけです。患者さんにメリットはほとんどありません。製薬会社が研究費を出して、これほどわずかな効果しか出せないのであれば、中立な研究であれば恐らく全く効果は認められないでしょう。

PCSK9阻害薬は確かに確実にLDLコレステロール値は大きく低下します。しかし、それにより心血管疾患は減少しません。FHでは若いころに心血管疾患のリスクが高くなります。そして高LDLコレステロール血症が必発です。心血管疾患とLDLコレステロールをつなげて考えたいのはわかりますが、そのLDLコレステロールを大きく低下させることで全くの恩恵がないわけです。これは心血管疾患の原因がLDLコレステロールとは関係していない証拠でもあります。

それでもまだLDLコレステロール値にこだわりますか?自分自身でよく考え判断しましょう。

「Cardiovascular event reduction with PCSK9 inhibition among 1578 patients with familial hypercholesterolemia: Results from the SPIRE randomized trials of bococizumab」

「家族性高コレステロール血症患者1578人のPCSK9阻害薬による心血管イベントの減少:ボコシズマブのSPIRE無作為化試験からの結果」(原文はここ