脂質異常症の治療薬、PCSK9阻害薬エボロクマブ(レパーサ)は本当に必要か?一人救うのに2億円かかります!

脂質異常症の新しい治療薬の試験(FOURIER試験)が行われ、発表されました。原文はここです。スタチンだけではコントロールが不良の方の心血管イベントのリスクを低下させるという内容ですが、私には、どうしてもこの薬のメリットが理解できません。

まず、LDLコレステロールがいまだに悪玉という前提です。そして、コレステロールは非常に人間にとって重要なものであるのに、こんなに低下させて大丈夫なんでしょうか?LDLコレステロール値が20とか30で本当に大丈夫なんでしょうか?この試験では追跡期間がたった2.2年なので、長期に投与されるとどうなるかはわかりません。

そして、主要評価項目(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術)が15%改善とあります。しかし、数時で見るとエボロクマブ群が9.8%と、プラセボ群の11.3%。たった1.5%の差です。統計的に有意だというのは良いのですが、実際の数字はこんな高い薬を投与してもその差は1.5%ですよ。改善率は15%と10倍良く見えます。グラフにすると、ほとんど差がないものを大きく拡大すると非常に差が出たようには見えます。

(図は原文より抜粋)

一方、心血管死、全死因死亡に差はありません。主要評価項目を合わせると1.5%の差がつくけど、実際の心血管死は差がありません。つまり、統計的に有意差が出るように項目を操作している可能性もあるのです。

もっとも怪しい気持ちにさせるのは、この試験自体が開発元のAmgen社の助成による試験だということです。そのことを差し引いて考えたら全く効果のない薬だとも考えられます。

著者は「心血管系の死亡、心筋梗塞、または脳卒中を予防するために、74人の患者を2年間にわたって治療する必要がある。」つまり、NNT(治療必要数)は74です。

コストはアメリカでは、年間の供給では患者1人当たり約14,350ドル、または月に約1,200ドルかかると推定されているようです。エボロクマブで2年間治療した74人の患者の推定費用は2,123,800ドルです。 これは、2年間にわたり1つの事象(心血管死、心筋梗塞または脳卒中)を予防するための費用です。日本円に換算すると軽く2億円を超えます。人間の命はお金には換算できませんが、誰が払うのでしょうか?

今回同時にコレステロールが非常に低値になることによる神経認知機能的影響を調査するEBBINGHAUS Studyも行われ、プラセボとの差がないとの結果だったようですが、この試験も20か月しか行われず、長期に投与した場合の影響はわかりません。

74人を2年間治療して、2億円以上のお金をかけて、何もしなかった場合と比べて1.5%だけしか有効性はありません。本当にこの薬必要ですか?コストパフォーマンスが低すぎませんか?糖質制限をしたほうが恐らく有効性はもっと高くなるでしょう。お金もかかりませんし。こんな薬を保険で賄っていたら日本の医療保険はすぐに破綻します。今でも危ういのですから。

エボロクマブ追加で心血管イベントリスクを有意に低減/NEJM

2017/04/03 ケアネット より 

 前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)は、スタチン治療でLDLコレステロール(LDL-C)値のコントロールが不良なアテローム動脈硬化性心血管疾患患者のLDL-C値を30mg/dLまで低下させ、心血管イベントのリスクを有意に低減することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らが行ったFOURIER試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。本薬は単剤でLDL-C値を約60%低下させることが報告されているが、心血管イベントを予防するかは不明であった。

2万7,564例を対象とするプラセボ対照無作為化試験
 FOURIER試験は、エボロクマブのスタチンへの上乗せによる心血管イベントの予防の改善効果を検証する国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Amgen社の助成による)。

 対象は、年齢40~85歳、アテローム動脈硬化性心血管疾患でスタチンの投与を受けているが、LDL-C値が≧70mg/dLの患者であった。被験者は、エボロクマブ(患者の好みで、2週ごとに140mgまたは1ヵ月ごとに420mgから選択)またはプラセボを皮下投与する群に無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術の複合エンドポイントであった。主な副次評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとした。

 2013年2月~2015年6月に、49ヵ国1,242施設で2万7,564例が登録され、エボロクマブ群に1万3,784例、プラセボ群には1万3,780例が割り付けられた。追跡期間中央値は2.2年だった。

LDL-C値が59%低下、主要評価項目が15%改善
 ベースラインの全体の平均年齢は63歳、女性が24.6%含まれた。心筋梗塞の既往が81.1%、非出血性脳卒中の既往が19.4%、症候性末梢動脈疾患が13.2%に認められた。スタチン治療は、ACC/AHAガイドラインのhigh-intensityが69.3%、moderate-intensityが30.4%に行われ、5.2%にはエゼチミブも投与されていた。

 ベースラインのLDL-C値中央値は92mg/dL(IQR:80~109)であった。48週時に、エボロクマブ群のLDL-C値中央値は30mg/dL(IQR:19~46)に低下し、プラセボ群との絶対差は56mg/dL(95%信頼区間[CI]:55~57)であった。LDL-C値の減少率の最小二乗平均値は59%(95%CI:58~60、p<0.001)であり、エボロクマブ群が有意に良好であった。

 主要評価項目の発生は、エボロクマブ群が9.8%(1,344例)と、プラセボ群の11.3%(1,563例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.79~0.92、p<0.001)。主な副次評価項目の発生も、エボロクマブ群が有意に良好だった(5.9%[816例] vs.7.4%[1,013例]、HR:0.80、95%CI:0.73~0.88、p<0.001)。

 また、エボロクマブ群はプラセボ群に比し、心筋梗塞(3.4 vs.4.6%、HR:0.73、95%CI:0.65~0.82、p<0.001)、脳卒中(1.5 vs.1.9%、0.79、0.66~0.95、p=0.01)、冠動脈血行再建術(5.5 vs.7.0%、0.78、0.71~0.86、p<0.001)、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(1.7 vs.2.1%、0.77、0.65~0.92、p=0.003)を有意に改善した。一方、心血管死、全死因死亡、不安定狭心症による入院、心血管死/心不全の増悪による入院には差がなかった。

 主要評価項目と主な副次評価項目に関するエボロクマブ群のベネフィットは、年齢、性、アテローム動脈硬化性血管疾患のタイプなどの主要なサブグループのほとんどに一貫して認められた。さらに、ベネフィットは、ベースラインのLDL-C値の最高四分位群(中央値:126mg/dL、IQR:116~143)から最低四分位群(74mg/dL、69~77)まで、一貫してみられた。

 有害事象(77.4 vs.77.4%)、重篤な有害事象(24.8 vs.24.7%)、治験薬関連と考えられる有害事象の発現および治験レジメンの中止(1.6 vs.1.5%)は、両群に有意な差はなかった。また、筋関連イベント(5.0 vs.4.8%)、白内障(1.7 vs.1.8%)、新規糖尿病(8.1 vs.7.7%)、神経認知有害事象(1.6 vs.1.5%)にも、両群に差はなかったが、注射部位反応(2.1 vs.1.6%、p<0.001)はエボロクマブ群で有意に多くみられた。

 著者は、「これらの知見は、アテローム動脈硬化性心血管疾患患者は、LDL-C値を現在の目標値よりも、さらに下げることでベネフィットが得られることを示すもの」と指摘している。

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コメント

  1. 吉岡 斎 より:

    レパーサ皮下注射を受けようとしている者です。通院中の病院では、12月からこの薬を投与し続けても認知症にならない事を証明するための治験が行われるとのこと、私はその治験に参加する予定です。また、治験が終了した後も、効果が期待できるなら、引き続き投薬してもらう事も考えています。

    この記事は、レポーサが費用対効果の率が大変低いから健康保険の対象薬から外すべきではないのか、等という事を述べたいのだと思うのですが、私がこの記事を読んでもその根拠が良くよくわかりません。

    私はヘテロ型(片親のみからの遺伝)の家族性高コレステロール血症で、LDLが高くHDLが低い状況です。クレストール5mgを1日4錠とゼチーア10mgを1日1錠服用して、何とかLDL・HDL共に正常範囲に入っていますが、レパーサの方がもっと効果的にLDLコレステロールを減らせると言われています。

    そもそも、LDLコレステロールが多くてHDLコレステロールが少ないと動脈硬化が進みやすい、という前提知識のもとで我々は考えていますので、その前提が覆れば、我々一般人は判断出来ません。

    私のような患者はどうすれば良いと言われるのでしょうか?

    • Dr.Shimizu より:

      吉岡 斎さん、コメントありがとうございます。
      私の文章力の無さかもしれません。「74人を2年間治療して、2億円以上のお金をかけて、何もしなかった場合と比べて1.5%だけしか有効性がない」
      「心血管死、全死因死亡には差がない」という程度の薬を税金を使って、使用する意味があるかどうかということです。
      LDLコレステロール値は通常の方ではあまり意味がありません。LDLの粒子数や大きさが最もリスクに関係します。
      HDLは多い方が良いというのは原則的には合っていると思っています。

      ただ、家族性の高コレステロール血症では、単にLDLコレステロールが高いことが問題ではないはずです。(血栓ができやすいなど)
      また、コレステロール値は心血管イベントと関連は少ないはずです。虚血性心疾患を起こした人と起こさない人のLDLコレステロール値は
      差がないという論文はいっぱいあるからです。
      遺伝の病気なので、専門の医師に相談すること意外、現状ではどうしようもないことだとは思います。

      しかし、「認知症にならないことを証明するための治験」というのもすごいですね?
      証明できなかったとしたらどうなるのですか?

      いずれにしても、自己の判断です。医学の世界はまだまだ分からないことだらけです。
      新しい薬も正直、未知の世界です。
      医師によって考え方も違います。何が正しいかを判断するのは自分しかいません。