PPI(プロトンポンプ阻害薬)で鉄欠乏!当たり前!その他にも問題だらけ!

逆流性食道炎などに使われる薬に関して、メディカルトリビューンの記事に次のようなものがありました。

酸分泌抑制薬の長期使用が鉄欠乏症リスク

 2017.04.03

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)またはヒスタミンH2受容体拮抗薬の2年以上の使用は鉄欠乏症のリスクを高めると、米・Kaiser Permanente Division of ResearchのグループがGastroenterologyに発表した。(これ以上は会員登録が必要)

原文はここ

簡単な内容はPPIを2年間以上使用すると鉄欠乏のリスクが2倍以上高くなり、H2ブロッカーでもPPIほどではないけれど鉄欠乏になりますよ、ということです。そんなことは当たり前で、食事中の野菜や果物に含まれる非ヘム鉄は胃酸による還元を受けて、小腸付近から吸収されます。胃酸の分泌が抑制されれば、鉄の吸収が下がることは当たり前ではないでしょうか?しかし、この薬を売るためには、鉄の吸収にはほとんどの人は問題ない、と言うしかありません。逆に鉄が少し減ったぐらいでどうしたの?という発想でしょうか。

PPIの問題点は鉄欠乏だけではありません。以前の記事で書いた、認知症との関連血管の老化との関連、そしてビタミンB12の吸収阻害(原文はここ)、心筋梗塞のリスク増加(原文はここ)、その他胃酸分泌抑制による高ガストリン血症とそれに伴う胃がんの発生の懸念(原文はここ)、誤嚥性肺炎や市中肺炎の増加(原文はここ)、変形性関節症や胸痛、尿路感染症、深部静脈血栓症、皮膚感染症などとの関連性(原文はここ)、難治性下痢(クロストリジウム・ディフィシレ感染)、低マグネシウム血症、骨粗しょう症や骨折の増加(原文はここ、他多数)、高用量PPIで脳梗塞リスク増加、精子の質に悪影響(総運動精子数が減少する)(原文のアブストラクトはここ

と、探し出したらキリがありません。

1か月などの期間飲むのはわかりますが、なぜにこんなに年単位でPPIを使用している人が多いのでしょうか?

これには現在の医学教育の問題と安易な患者の要求があると思います。現在の医学教育はあまりに細分化され、あまりに専門化されたために、人間全体を見渡すことがめっきりと減りました。そして、治療一辺倒の教育で、予防はほとんど教えません。生活習慣病や難しい病気の研究や治療、がんの治療には精を出すのに、その予防は2の次どころか5の次あたりです。栄養教育もほとんどありません。

人間に関わらず生物は食事をします。それは楽しむことではなく、必要だから行います。生きていくために、体を構成するのに必要な栄養素を取り入れるために食事をします。必要な栄養素はタンパク質であり、脂質であり、ミネラルやビタミンであります。それらを体に取り入れることが食事であり、それを過不足なく取り入れる仕組みが消化吸収です。それが上手く行くようにこれまでに進化してきました。未だにマイナーチェンジをしてはいますが、現在の体はほぼ完成形でしょう。それなのに、その重要な消化吸収に関わる胃酸の分泌を抑えてしまっては問題が起こるに決まっているのではないでしょうか?先進国では近年食事を楽しむことができるようになりました。しかし、まだ貧しい国では食べることは命のためであることも珍しくはありません。楽しむ食事の多くは脳が喜ぶものであり、それはほとんどが糖質を多く含むものです。そのような楽しむ食事が増加したことと逆流性食道炎が増えたことは関連していると考えています。その証拠に糖質制限をすれば逆流性食道炎のほとんどは改善するからです。

生物の体は機械ではないので、故障したら部品を交換するというようにはいきません。さらに単純な配線で成り立っているものではなく、非常に複雑に様々な臓器やホルモン、分泌が関わっており、いまだに未解明な部分が多くあります。それなのに、症状が和らぐというだけで長期に薬を投与しても良いのでしょうか?一時的に薬を使って症状を抑え、その間に食事や生活を変えて症状が出なくするようにしなければなりません。しかし、どのようにしたらいいかわからないので、漫然と薬を投与し続け、症状だけを抑え、その裏では問題が起きている可能性があっても、目をつぶっています。ほとんどの薬、治療は対症療法です。対症療法は本来の治療ではありません。一時的な回避に過ぎません。それを医師はわかっているのか、わからないままやっているのかは、それぞれでしょう。薬を出すだけでなく、食事や生活をどのように変えればいいかの説明もしない医師は、もしかしたら本当にその薬で治療を行っているつもりなのかもしれません。

患者側にも問題があります。調子が悪くなったら病院に行って薬をもらえば治る、と安易に思っている人が非常に多い気がします。喘息や心臓が悪いのにタバコを吸っている人、肥満で様々な問題が出ているのに食事を変えない人、年をとったら病気になるのが当たり前だと思い何もしない人。そんな人たちが安易に薬を要求します。しかし、人間の体はタバコを吸うようには進化してきてはいません。糖質を過剰摂取するようには進化してきていません。安静ばかりで動かないでいるようには進化してきていません。取扱説明書が無いので、自分の体の使い方が良くわからないのかも知れませんが、多くの病気や症状の原因は自分が作り出しています。狩猟採集民であったことを想像して、その生活に近いことを実践してみてください。そうすれば人間の進化した体の使い方に非常に近づくはずです。もちろん穴倉にまで住む必要はありませんが。

人間の体は複雑すぎてわからないことだらけです。胃酸を分泌するスイッチを切れば、胃酸の分泌だけが抑えられる訳ではありません。わからないところで様々なスイッチが切れ、また様々な入って欲しくないスイッチが入ってしまうかもしれません。遺伝子は持っているだけで、スイッチがオフのままのものがいっぱいあります。それが食事や生活でオンになることもあります。逆もあります。安易な治療もどきに手を出す前に自分の食事と生活を見直してみましょう。

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