肺炎球菌ワクチンは現在、高齢者に対して定期接種となっています。厚労省のホームページには、次のように書かれています。
「高齢者に対する肺炎球菌ワクチンによって、重症な肺炎などにかかることを予防できます。65歳の方と、60~64歳で一定の基礎疾患がある方は1回接種ができます。」
「予防できる」、と断言しています。しかし、そんなはずはなく、その後の文章で4割程度の有効性だとも書かれています。
また、以前の記事「肺炎球菌ワクチンの有効性」で書いたように、肺炎球菌ワクチンの感染のNNV(1人の感染発症を防ぐために必要なワクチン接種数)は全体では5,206でした。つまり5,000人以上にワクチン接種してやっと1人の感染防止ができるのです。男女別でみれば、女性ではNNVが10,000近くの数値です。また、高齢者の中で比較的若い世代(65~74歳)ではやはりNNVが10,000近い数値でした。
そして、肺炎球菌による死亡のNNV(1人の死亡を防ぐためのワクチン接種数)は65歳以上全体で14,810で、しかも若い世代(65~74歳)で見るとNNV=39,172でした。つまり、若い世代では40,000人にワクチンを接種して、やっと1人の死亡を防げるのです。
この程度のワクチンをなぜ定期接種にしているのかわかりません。
さて、今回の研究は、スペイン・カタルーニャ州における50歳以上の2,234,003人を対象とした人口ベースのコホート研究です。追跡期間は2019年1月1日から2019年12月31日までです。肺炎球菌性肺炎による入院(PP)および/または全原因肺炎による入院(ACP)に対する13価肺炎球菌ワクチン(PCV13)および23価肺炎球菌ワクチン(PPsV23)の臨床的有効性を検討しました。(表は原文より改変)
| 肺炎による入院 | 肺炎による死 | |||
|---|---|---|---|---|
| 肺炎球菌 | 全原因 | 肺炎球菌 | 全原因 | |
| 多変量調整HR | ||||
| PCV13の場合 | 1.83 | 1.55 | 0.98 | 1.91 |
| (95%信頼区間) | (1.49~2.24) | (1.42~1.70) | (0.64~1.49) | (1.45~2.52) |
| PPsV23の場合 | 1.21 | 1.24 | 1.24 | 1.01 |
| (95%信頼区間) | (1.10~1.36) | (1.18~1.31) | (0.53~2.91) | (0.86~1.18) |
上の表は、多変量調整後のワクチン接種による肺炎の入院および肺炎死のリスクを示しています。研究期間を通じて、肺炎球菌性肺炎による入院2,319件(PCV13接種者110人、PPsV23接種者1,558人)と全原因肺炎12,848件(PCV13接種者542人、PPsV23接種者9,097人)が観察されました。
多変量補正後、ワクチン接種の有意な有効性は認められなかっただけでなく、実際、PCV13ワクチン接種は、肺炎球菌性肺炎による入院リスクが1.83倍、全原因肺炎による入院リスクが1.55倍と、リスク増加と有意に関連していました。PPsV23ワクチン接種もまた、肺炎球菌性肺炎による入院リスク1.21倍、全原因肺炎による入院リスク1.24倍と、のリスク増加と関連していました。
死亡率について、多変量補正後、PPsV23ワクチン接種は死亡リスクに有意な変化は認められませんでしたが、PCV13ワクチン接種は全原因肺炎による死亡リスクの1.91倍の増加と関連していました。
高齢者(65歳以上)、高リスク者(免疫不全者)、リスクのあるサブグループ(慢性呼吸器疾患、慢性心疾患および/または糖尿病)など、ワクチン接種が強く推奨される人口サブグループに焦点を当てた別の分析でも、PCV13またはPPsV23ワクチンの利点は認められませんでした。
つまり、肺炎球菌ワクチンはリアルワールドでは、良くて有効性なし、悪くて入院や死亡リスク増加の結果なのです。
子供も、高齢者も当たり前のようにワクチンをいくつも接種しているでしょう。しかし、もう一度、真の有効性を確かめるべきです。今回の研究のように、もしかしたら逆効果であることも十分にあり得るワクチンは多いでしょう。
利益相反のある専門家の話を聞くべきではありません。高市政権になって、ワクチンに対する態度もアメリカのように変わるのでしょうか?
「Real world effectiveness of antipneumococcal vaccination against pneumonia in adults: a population-based cohort study, Catalonia, 2019」
「成人の肺炎に対する抗肺炎球菌ワクチンの実際の有効性:人口ベースコホート研究、カタルーニャ、2019年」(原文はここ)