Lp(a)は本当に超悪玉? 結局心血管リスク因子にはなり得ないかも

LDLコレステロールの次に脅しに使われそうなリポタンパク質(a)(Lp(a))ですが、本当に心血管リスクを増加させるのでしょうか?

今回の研究では、ウエストヒップ比(WHR)などの肥満指標がLp(a)と動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の関係を変化させるかどうかを評価しました。多民族アテローム性動脈硬化症研究(MESA)の参加者4,652人(平均年齢62歳)が対象です。

Lp(a) < 50 mg/dLかつWHR <90パーセンタイル、Lp(a) < 50 mg/dLかつWHR ≥ 90 パーセンタイル、Lp(a) ≥ 50 mg/dLかつWHR <90 パーセンタイル、Lp(a) ≥ 50 mg/dLかつWHR ≥ 90 パーセンタイルの4つのグループに分けました。。ちなみにWHR <90パーセンタイルの平均値はWHR0.90で、WHR ≥ 90 パーセンタイルは1.04でした。WHR の 90 パーセンタイルは男性で 1.03、女性で 1.00 でした。男性は0.90、女性は0.85を超えると肥満と判断されますので、90パーセンタイル未満でも肥満の人を含んでいます。(図は原文より)

中央値17.4年の追跡期間中に792例のASCVD症例が確認されました。上の図は、グループ別のASCVD累積発生率です。

心血管疾患発症リスクは、Lp(a) <50 mg/dLかつWHR < 90パーセンタイルと比較して、Lp(a) <50 mg/dLかつWHR ≥90パーセンタイルの場合は1.14倍(有意差なし)、Lp(a) ≥50 mg/dLかつWHR <90パーセンタイルの場合は1.15倍(有意差なし)、Lp(a) ≥50 mg/dLかつWHR ≥90パーセンタイルの人の場合は2.34倍でした。

上の図は、WHRを3つのグループに分けたときの、Lp(a)との関連で、ASCVD累積発生率がどうなるかを見ています。WHRが低いグループと中間のグループでは、Lp(a) ≥ 50 mg/dLとLp(a) < 50 mg/dLのASCVD累積発生率に違いはありません。しかし、WHRが最も高いグループでは、Lp(a) ≥ 50 mg/dLの方がLp(a) < 50 mg/dLよりもASCVD累積発生率が有意に高くなり、リスクは1.60倍でした。

男女別で見ると、Lp(a) <50 mg/dLかつWHR < 90パーセンタイルと比較して、Lp(a) ≥50 mg/dLかつWHR ≥90パーセンタイルの人はASCVDリスクが、女性で3.43倍、男性で1.97倍でした。冠動脈疾患リスクだけを見ると、Lp(a) ≥50 mg/dLかつWHR ≥90パーセンタイルの人は、女性で5.09倍、男性で2.29倍でした。

つまり、Lp(a)が高い場合、それはWHRが非常に高いグループの場合のみでリスク因子となるだけです。逆に言えば、Lp(a)は心血管疾患の主要因とはなり得ないのです。

ウエストヒップ比は腹部肥満、内臓脂肪を反映しています。内臓脂肪の増加の方が心血管疾患にとって非常に危険なのです。

以前の記事「Lp(a)に対する食事や運動などの影響」で書いたように、Lp(a)は90%が遺伝的に決まっていると言われながら、食事や運動で大きく変動します。特に医療業界が目の敵にする脂質、飽和脂肪酸の摂取量増加はLp(a)を低下させます。

また「頸動脈プラークに関係するのはLp(a)よりも血糖値」で書いたように、Lp(a)よりも重要なのは耐糖能障害の程度でしょう。

Lp(a)の数値を整えることは、LDLコレステロール値と同様に、意味がない可能性が高いと思います。それよりも糖質制限をして、血糖値の変動を抑え、内臓脂肪を減少させることの方が非常に重要です。

Lp(a)が高値だと、医師から強い脅しが入るでしょう。しかし、Lp(a)は心血管リスク因子ではないと考えられます。

心血管疾患は糖質過剰症候群です。

「Waist to hip ratio modifies the cardiovascular risk of lipoprotein (a): Insights from MESA」

「ウエストヒップ比はリポタンパク質(a)の心血管リスクを変化させる:MESAからの洞察」(原文はここ

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