肺炎球菌ワクチンの有効性

新型コロナウイルス感染が拡大し、インフルエンザや肺炎球菌などと比較される場合もあります。インフルエンザや肺炎球菌にはワクチンも治療薬もあり、新型コロナにはワクチンも治療薬もない、だから不安や恐怖を持つ人もいるのかもしれません。

以前の記事「インフルエンザワクチンの有効性」では、インフルエンザワクチンの有効性と必要性について書きました。

ワクチンの効果は相対的なリスク減少率で表されることが多く、見た目に誇張された数字によって、一般の人はかなり効果が高いと思ってしまうかもしれません。

しかし、もともとの感染する可能性、発症する可能性、そしてそれによって死亡する可能性はほとんど隠されてしまっています。

肺炎球菌ワクチンは現在、高齢者に対して定期接種となっています。

厚労省のホームページのQ&Aをのぞいてみましょう。

Q2.肺炎球菌感染症をワクチンで予防することは可能ですか?
A2.肺炎球菌には 93 種類の血清型があり、平成26年10月からの定期接種で使用される「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」は、そのうちの23種類の血清型に効果があります。また、この23種類の血清型は成人の重症の肺炎球菌感染症の原因の64%を占めるという研究結果があります。
(病原微生物検出情報IASR2018年7月号 「成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)症例の臨床像の特徴と原因菌の血清型分布の解析」を参照)

質問に対する明確な答えになっていません。23種類に効果がある、と言っていますが、どのような効果(重症化防止?死亡率低下?)があるのかについて全く触れていません。

海外のものですが、肺炎球菌ワクチンの有効性を分析したものがあります。(表は原文より改変)

予防接種を受けた症例の数総症例数ワクチン接種効果(%)(95%CI)1件を防ぐために予防接種に必要な数(NNV)
65歳以上
 未調整5713564.2(49.6、74.5)
 調整61.7(45.1、73.2)5206(4388、7122)
(年齢/性別)
 男性305953.5(22.5、72.1)6059(4499、14407)
 女性277671.1(53.7、81.9)9835(3987、5944)
65〜74歳
 すべて234954.4(20.1、74.0)9724(7148、26317)
 男性132441.0(-31.7、73.6)(10726)
 女性102564.6(21.1、84.1)9835(7554、30110)
75歳以上
 すべて348668.8(52.0、79.8)3145(2712、4162)
 男性173560.5(23.3、79.6)3801(2895、9891)
 女性175173.9(53.3、85.4)2836(2454、3932)

上の表は侵襲性肺炎球菌感染症の発生についてです。ワクチンを接種すると相対的に60%前後のリスク減少効果が認められました。しかし、NNV(1人の感染発症を防ぐために必要なワクチン接種数)は全体では5,206でした。

つまり5,000人以上にワクチン接種してやっと1人の感染防止ができるのです。男女別でみれば、女性ではNNVが10,000近くの数値です。また、高齢者の中で比較的若い世代(65~74歳)ではやはりNNVが10,000近い数値でした。

 

グループグループ内の総数死亡率(%)死亡リスク比(95%CI)未調整年齢層と性別で調整されたリスク比(95%CI)1人の死を防ぐためのNNV
65歳以上
 ワクチンなし8232.91.001.0014,810
 ワクチンあり6328.60.86(0.47、1.56)0.89(0.49、1.63)
年齢別
65〜74
 ワクチンなし2722.21.0039,172
 ワクチンあり2516.00.71(0.20、2.51)
75歳以上
 ワクチンなし5538.21.008,122
 ワクチンあり3836.80.96(0.49、1.89)
性別
男性
 ワクチンなし3132.31.00
 ワクチンあり3429.40.90(0.38、2.17)
女性
 ワクチンなし5133.31.00
 ワクチンなし2927.60.81(0.35、1.89)

上の表は肺炎球菌による死亡率、死亡のリスク比、NNV(1人の死亡を防ぐためのワクチン接種数)です。死亡のリスク比は男女や年齢別でもワクチン接種の有無で有意な差は認められませんでした。NNVは65歳以上全体で14,810で、しかも若い世代(65~74歳)で見るとNNV=39,172でした。つまり、若い世代では40,000人にワクチンを接種して、やっと1人の死亡を防げるのです。

肺炎球菌ワクチンでは、その感染による死亡を防げない可能性があります。つまり、ほとんど意味のないワクチンなのかもしれないのです。

こんなワクチンに莫大なお金がつぎ込まれています。

新型コロナウイルスのワクチンにも当然莫大な税金がつぎ込まれます。6月30日に、アメリカでワクチンを承認する米食品医薬品局(FDA)は、臨床試験における有効率の最低ラインを50%とするという指針を発表しています。(ここ参照)

感染率、発症率、日本での死亡率などを考えると、相対的に50%の有効性は接種してもしなくても何も変わらないレベルでしょう。接種のリスクも未知数です。

本当に意味のあるワクチンと、ビジネスのワクチンを見分けなければならないでしょう。恐怖や不安とワクチンや治療薬をセットにしたビジネスモデルに注意すべきでしょう。

 

「The impact and effectiveness of pneumococcal vaccination in Scotland for those aged 65 and over during winter 2003/2004」

「2003/2004年冬の65歳以上のスコットランドにおける肺炎球菌ワクチン接種の影響と有効性」(原文はここ

2 thoughts on “肺炎球菌ワクチンの有効性

  1. 「金融は社会の血液」という言葉をみつけました。
    健康も大事ですが、お金や経済もより大事、という考えも大きいのでしょうね。

    健康を失っては、経済もなにもないですが、、、

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      経済的に困窮すれば、健康も損なわれる可能性が高くなります。健康でなければ経済活動ができません。
      両方大事でしょうね。

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