ご自身の血糖値の変動を見るために、フリースタイルリブレを使っている人もいると思います。私も以前はマラソンのレースでのグルコース値の変動を知りたくて、何度も使っていました。今年はレースがほとんどないので最近は全く使っていません。
以前の記事「お風呂と血糖値上昇」では、フリースタイルリブレのグルコース値が入浴中に高くなるのではないか、ということを書きました。
一方で、それについてコメントをいただきました。
こんにちは!
私は以前、家庭の風呂と温泉でそれぞれフリースタイルリブレと自己血糖測定を入浴前後に行って数値を比較してみたことがあります。
するといずれも自己血糖測定では入浴前後に血糖値はまったく変化がなく、リブレでは20~30も上がりました。温度上昇による偽高値ではないかと想像しています。
入浴前後では血糖値に全く変化がないけれど、リブレの値では20~30上昇していたそうです。確かに温度変化は関係してそうですね。
また、フリースタイルリブレは装着した初日は何となく不安定であることが多いです。例えば下の図です。
装着してすぐはいきなり130台のグルコース値、そしてその後の低血糖のようなグルコース値など、非常に不安定な値が頻発していました。実際には低血糖ではありませんでした。次の日からは落ち着きましたが、この後はフリースタイルリブレを装着して1日置いてから起動させるようにしました。そうするとちょっとマシになった気がします。
しかし、なぜフリースタイルリブレはこのようなことになるのでしょうか?細かい技術的なことはよくわかりませんが、もともとリブレは血糖値は測定していません。間質液のグルコース値を測定しています。つまり、違うものを測定しているのです。安定した血糖値の状況下では血糖値と間質液のグルコース値は非常に近い値を示します。だから、急激な変動がきなければ問題ありません。
しかし、様々な状況で間質液のグルコース値は影響を受けると考えられます。
まずは装着時。リブレは針を刺すようにして、センサーを留置します。その際、刺す場所によっては出血します。1度センサーの真ん中から結構は血が出てきてビックリしました。出血すれば、そこに血腫、血栓ができます。そうするとそれを修復するために様々な細胞などが集まってくるでしょう。出血は無くても炎症も起きるでしょう。そうするとセンサーの周りには通常の安定した間質液ではない状況が生まれます。センサーのそのものに何かが付着するかもしれません。そうすると、それによってグルコース値が変動する可能性は十分にあります。
その時のグルコース値が血糖値と不一致したとしても不思議ではありません。リブレの値が血糖値と不一致だった場合、それは誤作動や不良品等の「エラー」なのか、そのような間質での様々な状況による不可避な影響なのかは、実際にはわかりません。恐らくセンサーはちゃんと作動しているのに、その装着したときの出血や炎症などの影響で、血糖値と差が出てしまうのではないかと思います。装着しなおしができれば良いのですが、そのようなわけにもいきません。あまりにも血糖値と違うので別のセンサーを付けた場合、正常な血糖値との近似値が得られたとしても、センサーが問題だったのか、装着した部位の影響なのかはわかりません。
そう考えた場合、お風呂で体が温かくなったとき、血糖値が上がっているのか、リブレの値だけ上がっているのか、測定しなければわかりませんが、リブレだけ高値を示したとしても、それが「エラー」だとは言い切れません。
フリースタイルリブレのセンサーの周りの血流も変化していますし、温度の変化で間質液の何かが変化している可能性もあります。
他にも寒さで体が冷えた場合や、センサー部を下にして皮膚を圧迫したような状況、服用している薬の影響、運動、急激な糖質摂取などが間質液やその周りに変化をもたらすでしょう。
実感としてはフリースタイルリブレのグルコース値は血糖値よりも大げさに変化するように感じます。血糖値が高くなったときにはリブレのグルコース値はより高く、血糖値が下がったときにはより低くなっていると思います。
先ほども書いたように、これは「エラー」「誤作動」ではなく(もちろん一部は誤作動だと思いますが)、間質液のグルコース値は実際にこのように変化しているのではないかと思います。
全くの仮説ですが、間質液はリザーバーまたは緩衝材のような役割をしているのではないかと思います。急激な血糖値の変化を和らげるために、高血糖のときには間質液にグルコースをより多くため込み、逆に血糖値が低下したときにはより早く間質液からグルコースを血中に戻すようなメカニズムでもあるのではないかと思います。そうすると、血糖値よりもグルコース値の変動が大きいのも何となく納得できると思います。
フリースタイルリブレの値は安定しているときはそのまま問題ありませんが、食事などで変動しているときはその推移は非常に参考になりますが、その値は血糖値とはずれている可能性が高く、穿刺して実際の血糖値を測定した方が良いでしょう。
リブレを使っているときはその値に一喜一憂するのではなく、血糖値との不一致は当然と考え、心配であれば血糖値を測定すれば良いのです。
間質液の役割はまだ完全にわかっているわけではありません。しかし、血液よりも圧倒的に多く、9~10Lにもなる間質液には大きな役割があると考えるのが当然でしょう。
「Discrepancies Between Blood Glucose and Interstitial Glucose-Technological Artifacts or Physiology: Implications for Selection of the Appropriate Therapeutic Target」
「血糖値と間質性ブドウ糖の間の不一致—技術的アーチファクトまたは生理学:適切な治療標的の選択への影響」(原文はここ)
私が実験でうどんを食べた時の血糖値とグルコース値の比較です。
リブレを60個以上使っていますが、この実験に使用したものは標準的な差異だと思います。
(注)私はうどんを食べた時のピークはかなり遅いです。5時間後の事もあります。
食前 30分 60分 90分 2時間 150分 3時間 4時間 5時間
SMBG 104 103 187 169 213 217 199 188 149
リブレ 84 87 164 156 183 190 204 200 138
差 異 -20 -16 -23 -13 -30 -27 +5 +12 -11
グラフにすると明らかですが、リブレ(3時間)はSMBG(2.5時間)より遅れてピークになっています。たまたまかもしれません。
この時のSMBGとの差異は、マイナス~プラスまでありますが、平均するとほとんどの個体でマイナスです。
したがってHbA1cの計算値はかなり低く出ます。クリニックでの検査値は5.9なのですが、その前の2か月間のリブレで計算した推定A1cは4.7%です。
メーカーもアナウンスしていますが、装着した日は不安定です。私の経験では最大3日間不安定なことがあります。
そして2週間の期限の最後の2~3日もかなり低く出ることが多いです。
日本向け製品は装着後1時間から計測が開始され、2週間の使用期間となっていますが、アメリカ国内向け製品は装着10時間後からの計測で10日間の使用期限と聞いたことがあります。
私の経験からアメリカでの運用方法がより実用的だと思います。
なぜ、日本向けと異なるのか分かりませんが、保険適用との関係があるのでしょうか。
西村 典彦さん、貴重なデータありがとうございます。
測定誤差を考えると、それほどずれているようには見えませんが…?
(国際規格基準では血糖値が100mg/dL以上であれば測定結果の95%が基準値の±15%以内)
特に上昇するタイミングは同じですね。180を超える時間がどちらも2時間以上続いていて、それほど大きな変動を示していません。
最大値だけをとらえたら確かに時間はずれていますが。
90分値では一度低下するのが、なぜなのか気になりますね。
また、ベースラインからの上昇幅はリブレの方がやや大きいですね。
うどんが5時間も続く高血糖をもたらすのも興味深いですね。他の炭水化物ではそのようにならないのでしょうか?
血液検査でのHbA1cの測定値と、リブレの計算による推定値は全く違うものでしょう。比較するものではないと思います。
アメリカで装着10時間後に計測が開始されるというのが本当であれば非常に妥当だと思います。