「Neuroscience News」というサイトの記事に次のようなタイトルの記事が掲載されました。
「Long-Term Keto Diet May Damage Your Body」「長期のケトダイエットは体にダメージを与える可能性がある」
長期にケトン食を摂っていると体にダメージを与えるというものです。でも、その元となる論文の題名を見てみましょう。
「A long-term ketogenic diet causes hyperlipidemia, liver dysfunction, and glucose intolerance from impaired insulin secretion in mice」
「長期のケトジェニックダイエットは、マウスのインスリン分泌障害により高脂血症、肝機能障害、耐糖能障害を引き起こす」(原文はここ)
もうお分かりですね。またネズミさんの研究です。マウスはケトン食なんて食べません。我々人類はマウスではありません。ケトン食はマウスの体重増加を防いだものの、数か月後にはマウスに脂肪肝疾患、インスリン分泌障害、血糖調節不全を引き起こしました。だからどうした?
我々は糖質制限をもっと長い間行っています。高脂血症をLDLコレステロール値高値と捉えるのであれば、それは起こるでしょう。しかし高中性脂肪の高脂血症は起きません。糖質制限、ケトン食では中性脂肪が激減します。肝機能障害も改善します。耐糖能は糖質を摂らなければ、インスリン分泌障害は起こらず、血糖値の上昇もないし、わざわざ糖質を摂ることもありません。
もういい加減、人間とマウスを分けて考えてほしいですね。
もう一つケトン食という名の糖質過剰摂取食の研究です。この研究は、以前の記事「ケトン食は全てのがんのリスク増加と関連しているというウソ研究」で紹介した研究と同じチームのものです。それだけでウソの研究とわかってしまいます。2007年から2018年までのアメリカの国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いて、食事性ケトン体生成比(DKR)と高血圧有病率との関連を調査したものです。
DKRは、(0.9 × 脂質グラム数 + 0.46 × タンパク質グラム数)÷(0.1 × 脂質グラム数 + 0.58 × タンパク質グラム数 + 純炭水化物グラム数)で算出されます。DKR値が高いほど、食事誘発性栄養性ケトーシスを達成する可能性が高いことを示します。例えば、糖質制限のPFCバランスを30%:60%:10%として、摂取エネルギーを2000kcalとすると、タンパク質150g、脂質133g、炭水化物50gとなるので、DKRは120+69/13.3+87+50=1.26です。通常の食事のPFCバランスを20%:30%:50%とすれば、タンパク質100g、脂質66.7g、炭水化物250gとなるので、DKRは60+46/6.67+58+250=0.34です。
さて、DKRと高血圧の可能性のグラフを見てみましょう。(図は原文より)
上の図はDKR値と高血圧リスクの関連性を示しています。DKRが0.34を超えると、高血圧の可能性が高くなること示しています。一応0.34以上だと高血圧の可能性は1.40倍だそうです。
DKR0.34は先ほど例で示したように、PFCバランス20%:30%:50%、タンパク質100g、脂質66.7g、炭水化物250gで、DKRは0.34です。全くケトン食でもなんでもない、通常の糖質過剰摂取食です。
先ほど例として示した、PFCバランス30%:60%:10%、タンパク質150g、脂質133g、炭水化物50gで、DKRは=1.26です。上のグラフに1.26の目盛りすらありません。つまり、この研究で糖質制限やケトン食を摂取している人はほぼ皆無です。それなのに、この研究のタイトルには「ケトジェニックダイエット」という言葉が使われています。酷いものです。
あまり深く読むだけ無駄な研究ですが、中身も読まずに、結果だけで糖質制限を批判しようとする人や記事がありますので、注意が必要です。
糖質制限は高血圧を改善します。高血圧も糖質過剰症候群です。
「Ketogenic diets are associated with an elevated risk of hypertension: Insights from a cross-sectional analysis of the NHANES 2007-2018」
「ケトジェニックダイエットは高血圧リスクの上昇と関連している:NHANES 2007-2018の横断的分析からの知見」(原文はここ)
