胎盤はケトン体生産工場

人間の胎児の脳のメインエネルギーはケトン体です。約50年前に測定された、中絶された人間の胎児の脳では、ケトン体とブドウ糖はそれぞれエネルギーの60%と40%を占めており、人間の胎児の脳がエネルギー源として ケトン体を優先的に使用しているという報告がされています。(ここ参照)

脳にとってケトン体利用は初期設定です。(「脳のケトン体の利用は標準装備」参照)

宗田哲男先生の著書「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」および論文でもケトン体が胎児にとって重要なエネルギー源であることが述べられています。

今回の研究では、胎児へのケトン体の供給経路が2つあるのではという提議が行われています。(プレプリントなので注意が必要です)

9人の帝王切開を受けた羊水、臍静脈、臍動脈、母体血中のケトン体のβヒドロキシ酪酸濃度を測定しました。(図は原文より)

上の図は左から羊水、臍静脈、臍動脈と母体血のβヒドロキシ酪酸濃度を示しています。母体の血中のケトン体のβヒドロキシ酪酸は0.12mM(日本の単位では120μmol/L)ですが、羊水は0.56mM、臍静脈は0.43、臍動脈は0.42です。

上の図は分娩直後の胎盤のミトコンドリア3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAシンターゼ 2 (HMGCS2)の発現を示しています。HMGCS2はケトン体を合成する際に重要となる酵素です。

HMGCS2は絨毛の栄養膜で発現すると考えられていましたが、その発現はあるのですが、特に強力ではありませんでした。最も強力な組織は絨毛膜板と絨毛膜羊膜であり、おそらくβヒドロキシ酪酸を羊水中に放出していると考えられます。

そうすると、胎盤から胎児にどのように供給されるかというと、1つは絨毛膜板 → 羊水 → 小腸 → 胎児、もう一つは胎盤絨毛栄養膜→臍帯静脈→胎児という流れでしょう。

いずれにしても、胎児にとってはケトン体は非常に重要です。母親の糖質過剰摂取、高血糖により、胎盤のケトン体産生が低下する可能性があります。(「高血糖は妊娠中の胎盤での脂肪酸酸化を減少させ、胎盤の中性脂肪の蓄積を増加させる」「母親の高血糖は、胎児を高インスリン血症にさらす」参照)

以前は妊娠してつわりで尿にケトン体が出ると、産科医は慌てて点滴入れていました。(現在はどうなのかな?)脱水補正は理解できますが、尿にケトン体が出ることは問題なのでしょうか?

 

「High 3-hydroxybutyrate concentrations in the placenta-produced amniotic fluid in the human uterus」

「人間の子宮の胎盤で生成される羊水中の高濃度の3-ヒドロキシ酪酸」(原文はここ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です