妊娠糖尿病などでは高血糖を来し、巨大児など胎児に悪影響があると考えられます。高血糖が胎盤にどのようなエネルギー代謝の変化を起こすのでしょうか?

この研究では帝王切開時に得られた胎盤を分析しました。(図は原文より)

 

上の図は黒いバーが妊娠糖尿病群、白いバーが糖尿病のないコントロール群です。Aは胎盤のミトコンドリアでの脂肪酸の酸化、Bはミトコンドリア含量の指標であるクエン酸シンターゼ活性、Cは胎盤の中性脂肪の量です。そうすると、Bが示すように、ミトコンドリアの量には差がありませんが、Aが示すように妊娠糖尿病では脂肪酸の酸化が明らかに減少し、Cが示すように中性脂肪がコントロール群よりも3倍も多くなっています。

 

上の図はCPT-1 という酵素の活性を表しています。CPT-1 という酵素は脂質の代謝には非常に重要なものです。カルニチンと脂肪酸から生成されたアシルCoAというものを結合させ、アシルカルニチンというものを合成する酵素です。アシルカルニチンにならないと長鎖脂肪酸はミトコンドリアの中に入れません。ミトコンドリアに入り込んで、脂肪酸はβ酸化という代謝が可能となり、アセチルCoAになります。そしてTCA回路によりエネルギーを生み出します。

つまりCPT-1 の活性が低下することは、脂肪酸の酸化が低下し、脂肪酸をエネルギーとして使えるのが低下することを意味します。上の図で、5mmol/L=約90mg/dL、11mmol/L=約198mg/dLです。通常の90mg/dLの血糖値が200近くに上昇すると、CPT-1 の活性は約70%低下しました。

マロニルCoAというものがあり、これはCPT-1 の活性を強力に阻害します。インスリンは、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)という酵素の活性を促進し、脂肪酸合成を促進し、マロニルCoA生成を促進します。今回の研究ではこのACCの不活性化が高血糖により約25%低下するという結果でした。つまり、その分マロニルCoAが増加することとなります。

まとめると、高血糖→インスリンが大量に分泌→インスリンはACCの活性を促進→マロニルCoA生成を促進→CPT-1 の活性の低下→脂肪酸酸化(β酸化)の減少と脂肪酸合成の促進→中性脂肪の増加となるのです。これは胎盤にかかわらず、人間の体内で起きている代謝です。この高血糖によって起きる代謝が胎盤でも同じように起きているのです。

つづく…

 

「High glucose levels reduce fatty acid oxidation and increase triglyceride accumulation in human placenta」

「高血糖値は、脂肪酸酸化を減少させ、ヒト胎盤における中性脂肪蓄積を増加させる」(原文はここ

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