「その1」「その2」「その3」「その4」に続き糖質制限でLDLコレステロールが上昇してもスタチンは不要論を書いていきます。
スタチンの効果はLDLコレステロール低下によって起きているのではないと思っています。スタチンの抗炎症作用によるものだと思います。(図はここより)
上の図はスタチンの中のシンバスタチンで治療を受けた4S試験というものの再分析したものです。縦軸は冠動脈イベント発生率を示していますが、横軸は左はアテローム発生性の3要素(高LDL、高中性脂肪、低HDL)の患者と右は非アテローム発生性(高LDL、低中性脂肪、高HDL)の人です。アテローム発生性の3要素のある人ではスタチンによって冠動脈イベントが有意に低下していますが、非アテローム発生性の人ではプラセボとスタチンでは違いがありませんでした。つまり、LDLコレステロールに関係なく、低中性脂肪で高HDLという糖質制限で得られる状態ではスタチンの効果はほとんどないことがわかります。
上の図はスタチンの中のプラバスタチンで治療したときの冠動脈イベントの発生率です。左は43mg/dL未満という低HDLの人で、右がHDL53mg/dL以上の人です。先ほどと同様に低HDLではスタチンで発生率が低下していますが、高HDLではプラセボと違いがありません。
つまり、LDLコレステロールは関係なく、低中性脂肪、高HDLコレステロールという糖質制限で得られる状態ではスタチンを使用したことによる恩恵はないことがわかります。高中性脂肪、低HDLはインスリン抵抗性の状態です。重要なのはインスリン抵抗性を改善することでしょう。
スタチンは逆にインスリン抵抗性を増加させる可能性があります。(「スタチンはインスリン抵抗性を増加させる」参照)そして、糖尿病を発症させたり進行させたりする可能性があります。(「スタチンは糖尿病を進行させる」「スタチンの使用は、はっきりとした糖尿病発症のリスク増加がある!」参照)さらに様々な副作用が知られています。(「スタチンはあなたの体の重要な機能を低下させる」など参照)
糖質制限でLDLコレステロールが上昇しても、これらのリスクを背負ってスタチンを飲んでも恩恵はほとんど無く、逆に有害である可能性が高いと思います。
「Statin therapy is not warranted for a person with high LDL-cholesterol on a low-carbohydrate diet」
「スタチン療法は、低炭水化物食で LDL コレステロールが高い人には必要ありません」(原文はここ)