スタチンの問題はこれまでも何度も取り上げました。「スタチンの長期使用は乳がんを増加させるかもしれない」「スタチンにまた有害作用の可能性 パーキンソン病との関係」「高齢女性はスタチンを摂るべきではないかもしれない」「心臓病予防にスタチンを使うと命が縮むかも!」「糖質制限にスタチンの併用は危険ではないか?」
また、以前からスタチンの使用は糖尿病のリスクを増加することが指摘されていました。今回は日本人のデータではっきりとした糖尿病発症のリスクを増加させる結果が出たのです。今回のデータで示されたリスクは相当高いです。特に高力価に分類されるスタチンでは実にリスクは2.6倍です。高力価のスタチンは、アトルバスタチン(商品名リピトール)、ピタバスタチン(商品名リバロ)、ロスバスタチン(商品名クレストール)です。
ピタバスタチン(商品名リバロ)に関してはなんと3.11倍のリスクです。
もう、コレステロールを下げることをやめませんか?コレステロールは下げなくても良いということを早く認めないと被害が拡大しそうです。
「Lipid-lowering drugs and risk of newonset diabetes: a cohort study using Japanese healthcare data linked to clinical data for health screening」
「脂質低下薬と新たに発症する糖尿病のリスク:健康スクリーニングの臨床データにリンクされた日本の医療データを用いたコホート研究 」(原文はここ)
要約
脂質低下薬が、糖尿病の新規発症に関連するかどうかを調べた、後ろ向きコホート研究。
2005年1月1日〜2011年3月31日の間に脂質異常症を呈した20〜74歳の6万8,620例。
結果として、脂質異常症を有する68,620人で、平均追跡期間1.96年の間に3,674人が治療を開始した。薬剤は低力価スタチン979人、高力価スタチン2,208人、フィブラート487人だった。脂質低下薬の新規使用者3,674人のうち3,621人は、脂質低下薬を投与する前にどの脂質低下薬も使用していない期間があった。スタチン使用者のうち、新規発症糖尿病の発生率は、1,000人1年間当たり124.6人であったのに対して、非使用者では1,000人1年間当たり22.6人であった。ハザード比は低力価スタチンについて1.91(95%CI 1.38〜2.64)、高力価スタチンについて2.61(95%CI 2.11〜3.23)であった。
結論として、スタチンの使用は、糖尿病の臨床的危険因子を調整したにもかかわらず、日本人労働者年齢の人たちの新規発症糖尿病リスクの1.9倍から2.6倍の増加と関連していた。
個々の脂質低下薬と新規発症糖尿病との関連
HR(95%CI) | ||||
薬物クラス | 薬物名 | 未調整 | 年齢と性別の調整 | 多変量*調整 |
不使用 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | |
低力価 | プラバスタチン | 4.86(3.49~6.75) | 3.40(2.44~4.74) | 1.93(1.32〜2.82) |
フルバスタチン | 4.81(2.11~10.94) | 3.31(1.44~7.59) | 2.25(1.04〜4.90) | |
シンバスタチン | 3.56(1.52~8.46) | 2.37(0.99〜5.62) | 1.53(0.64~3.68) | |
高力価 | アトルバスタチン | 4.99(3.59〜6.93) | 3.37(2.41~4.71) | 2.15(1.52~3.04) |
ロスバスタチン | 5.56(4.30~7.19) | 4.00(3.09〜5.18) | 2.70(1.99~3.66) | |
ピタバスタチン | 7.96(5.85~10.82) | 5.74(4.21~7.84) | 3.11(2.20~4.40) | |
ベザフィブラート | 4.24(2.37~7.59) | 3.14(1.72~5.71) | 1.54(0.79~3.00) | |
フェノフィブレート | 4.53(2.25~9.13) | 3.45(1.71~6.97) | 1.82(0.82~4.02) |