GLP-1受容体作動薬の副作用シリーズも「その11」になりました。「その2」や「GLP-1受容体作動薬の自殺念慮のリスク」でも書いたように、GLP-1受容体作動薬は自殺リスクと関連がある可能性があります。
今回の研究は、GLP-1受容体作動薬を使用している肥満患者におけるうつ病、不安、自殺行動のリスクについてです。対象は、GLP-1受容体作動薬を処方された肥満の人162,257人と対照群としてGLP-1受容体作動薬を処方されていない肥満162,257人です。過去1年以内に双極性障害、統合失調症、うつ病、不安症、自殺念慮または自殺企図があった人は除外されています。平均年齢は約52歳です。
インデックス日以降のイベントの累積発生率 | |||||
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6ヶ月 | 1年 | 3年 | 5年 | ハザード比(95% CI) | |
全ての精神疾患 | |||||
GLP-1受容体作動薬 | 9.36% | 15.29% | 29.62% | 39.64% | 1.98(1.94-2.01) |
非GLP-1受容体作動薬 | 4.76% | 7.63% | 16.45% | 23.38% | 1 |
大うつ病性障害 | |||||
GLP-1受容体作動薬 | 1.41% | 2.38% | 4.99% | 7.02% | 2.95(2.82-3.08) |
非GLP-1受容体作動薬 | 0.36% | 0.66% | 1.67% | 2.68% | 1 |
不安 | |||||
GLP-1受容体作動薬 | 6.35% | 10.69% | 21.68% | 30.03% | 2.08(2.04-2.12) |
非GLP-1受容体作動薬 | 3.09% | 4.98% | 11.16% | 16.45% | 1 |
自殺念慮または自殺企図 | |||||
GLP-1受容体作動薬 | 0.22% | 0.42% | 1.45% | 3.64% | 2.06(1.92-2.21) |
非GLP-1受容体作動薬 | 0.21% | 0.35% | 0.89% | 1.42% | 1 |
上の表のように、6か月から5年まで、GLP-1受容体作動薬使用者の様々な精神疾患などが一貫して増加しました。GLP-1受容体作動薬を使用していない人と比較すると、全ての精神疾患のリスクは1.98倍、うつ病は2.95倍、不安は2.08倍、自殺念慮または自殺企図は2.06倍です。
サブグループ | 全ての精神疾患 | 大うつ病性障害 | 不安 | 自殺念慮または自殺企図 |
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性別 | ||||
女性 | 2.05(2.01–2.09) | 3.16(2.98–3.34) | 2.19(2.14–2.24) | 2.53(2.32–2.76) |
男性 | 1.77(1.72–1.83) | 2.89(2.63–3.19) | 1.89(1.82–1.96) | 1.70(1.50–1.92) |
年 | ||||
18~49歳 | 2.01(1.96–2.07) | 2.34(2.15–2.55) | 2.16(2.09–2.24) | 3.01(2.70–3.37) |
50~69歳 | 1.78(1.73–1.83) | 2.44(2.25–2.64) | 1.89(1.83–1.95) | 2.40(2.13–2.71) |
≥ 70 | 1.71(1.61–1.82) | 2.49(2.07–2.99) | 1.81(1.67–1.95) | 1.65(1.21–2.27) |
人種 | ||||
白人 | 1.92(1.89–1.96) | 3.03(2.87–3.21) | 2.03(1.99–2.08) | 2.18(2.01–2.36) |
黒人 | 2.18(2.08–2.28) | 2.76(2.41–3.16) | 2.37(2.25–2.50) | 3.45(2.86–4.17) |
アジア人 | 1.78(1.57–2.02) | 1.89(1.28–2.79) | 1.98(1.71–2.29) | 0.87(0.49–1.54) |
GLP-1受容体作動薬使用者の中で、女性の方が男性よりもさまざまなリスクが増加しています。年齢別では、18~49歳という若年層の方がリスクが高くなります。人種別では、我々アジア人は、ややリスクが低めで、自殺念慮または自殺企図に関しては有意差はありませんでした。でもメカニズムを考えると油断は禁物です。
GLP-1受容体作動薬は脳にも働き、脳の報酬系に作用して、ドパミンシグナル伝達が低下させて、食欲を抑制している可能性があります。(ここ参照)ドパミンは人間が触れてはいけない領域です。ドパミンを刺激すれば、依存や衝動行動、異常行動に結びつきますし、ドパミンの低下はうつや不安を起こし、そして自殺にも関連していると考えられています。(ここ参照)
こんな危険な副作用が起こるリスクまで負って、この薬を使う必要がありますか?安易に薬を使えば、その代償は非常に大きいかもしれません。
糖尿病にも体重減少にも糖質制限です。
「The risk of depression, anxiety, and suicidal behavior in patients with obesity on glucagon like peptide-1 receptor agonist therapy」
「GLP-1受容体作動薬療法を受けている肥満患者におけるうつ病、不安、自殺行動のリスク」(原文はここ)
余計な薬は不要。
黙って糖質制限一択ですね。