乳がん患者のホットフラッシュを軽減するためのマグネシウム

乳がん患者は、その後のホルモン療法により、比較的高頻度に不快なホットフラッシュ(ほてり)を感じます。漢方薬などが処方されることが多いですが、もしかしたら、もっと効果のあるものがあるかもしれません。それはマグネシウムです。

今回の研究では、乳がん患者の不快なホットフラッシュをマグネシウムで軽減できるかどうかを調べています。週に少なくとも14回のホットフラッシュがある乳がん患者25人が対象です。平均年齢は53.5歳で、8人がタモキシフェン、9人がアロマターゼ阻害剤、14人が抗うつ薬を服用していました。ホットフラッシュスコアは、1日の頻度と平均ホットフラッシュ重症度を掛け合わせた数値として定義され、ホットフラッシュスコアは1週間分の合計で示されました。

最初の週は、比較のためにマグネシウムなしのベースラインとして使用されました。次の2週間、就寝時に酸化マグネシウム400mgを服用するように求められました。(なんで酸化マグネシウム?)これにより症状が十分に緩和された場合、つまりホットフラッシュの頻度または重症度が約50%減少、その用量を4週間継続しました。2週間後に症状が十分に緩和されなかった場合、マグネシウムの用量を1日400mgを2回に増やしました。17人の患者は治療開始2週間後にマグネシウムの投与量を増量しました。(図は原文より)

上の図はホットフラッシュスコアの推移です。マグネシウムによりホットフラッシュの頻度とスコアはともに有意に減少しました。25人のうち、4週間の終了時にベースラインと比較してホットフラッシュスコアが50%以上減少した患者は14人(56%)、25%以上減少した患者は19人(76%)でした。平均週間ホットフラッシュ頻度はベースラインで52.2であったのに対し、5週目には27.7となり、41.4%減少しました。平均週間ホットフラッシュスコアは109.8から47.8に50.4%減少しました。

酸化マグネシウムは下剤なので、ひょっとしたら下痢が増加するかもしれないと思っていたのですが、2人の女性がグレード1の下痢を起こしましたが、治療は継続しました。

どうせならもっと吸収の良いマグネシウムを使うべきだと思いますが、酸化マグネシウムでさえ、効果があるようです。

ただ、喜ぶのはまだ早く、275人を対象にしたその後の研究(ここ参照、図もここより)では、効果なしとなっています。その研究では、プラセボと酸化マグネシウム800mg、1200mgを比較しています。

上の図のAはホットフラッシュスコア、Bはホットフラッシュの頻度の変化の割合です。どれも低下しています。しかし、プラセボでさえ同じように低下してしまっています。つまり、マグネシウムの効果ではなく、プラセボ効果である可能性があります。

しかし、別の研究(学会発表のみ、ここ参照)を見てみましょう。1日あたりの平均ホットフラッシュ回数を、酸化マグネシウム(400mg)の4週間投与前と投与後を比較しました。対象は乳がんの治療を受け、不快なホットフラッシュを訴える22人の女性です。年齢の中央値は48歳(34-75 歳)でした。乳がん治療には、タモキシフェン11人、全身化学療法6人、アナストロゾール2人、レトロゾール人、フルベストラント1人でした。1日あたりのほてり回数は、4週間のマグネシウム治療前の中央値は10回でした。酸化マグネシウムにより10人(45%)の患者でホットフラッシュが完全に消失しました。また10人(45%)の患者で、1日あたりのホットフラッシュ回数が少なくとも50%減少しました。 2人(10%)の患者では、ホットフラッシュの回数に変化は認められませんでした。

また、2009年のJournal of Clinical Oncologyには2人の症例報告が掲載されています。(ここ参照)1人は1時間ごと(1⽇24回)ホットフラッシュがあり、中等度の症状が現れ、睡眠を妨げ、寝巻きがびしょ濡れになりました。それがマグネシウム服用後はホットフラッシュが1⽇3回~4回に軽減し、症状も軽度になり、⽣活や睡眠に⽀障はなく、びしょ濡れの発汗も起こりませんでした。

もう1人は、夜間に3~4回のホットフラッシュがありました。マグネシウムを飲み始めて⼀晩で、ホットフラッシュの頻度と重症度が半分になり、その後ホットフラッシュが消失しました。

この2人の乳がん患者はいずれの場合も、マグネシウムによる緩和を期待していなかったため、プラセボ効果は考えられないと書かれています。

マグネシウムを飲んでも、万が一プラセボ効果であったとしても、適切な量であれば、失うものはないでしょう。マグネシウムでホットフラッシュが軽減、消失すれば、こんなに安全で安価な治療はないでしょう。

乳がんではなくても、更年期でホットフラッシュが気になる方は是非マグネシウムを飲んでみてください。

できれば吸収の良いグリシン酸マグネシウムなどが良いと思います。

「A pilot phase II trial of magnesium supplements to reduce menopausal hot flashes in breast cancer patients」

「乳がん患者の更年期のほてりを軽減するためのマグネシウムサプリメントの第2相パイロット試験」(原文はここ)

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