以前の記事「糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その2 自殺リスク」で書いたように、米国食品医薬品局有害事象報告システム(FAERS)によると、2018年以降にGLP-1受容体作動薬のセマグルチドを服用している患者またはその医療提供者から自殺念慮に関する報告が少なくとも60件あり、2010年以降、GLP-1受容体作動薬のリラグルチドの使用者またはその医療提供者から自殺念慮に関する報告が少なくとも70 件あったそうです。
今回の研究では、セマグルチドおよびリラグルチドに関連する自殺および自傷行為の薬物有害反応を分析しています。評価は報告オッズ比(ROR)で示しています。関連性がなければ、1に近い値となり、1より明らかに大きい値となる時、シグナルとして捉えることができます。2000年11月から2023年8月の間に、データベース内の合計36,172,078件の報告のうち、セマグルチドとリラグルチドでそれぞれ合計107件(年齢中央値48歳、女性患者59人[55%])と162件(年齢中央値47歳、女性患者100人[61%])の自殺および/または自傷行為の薬物有害反応が報告されました。
セマグルチドおよびリラグルチドのいずれの場合も、62.5%の症例で薬剤中止後に自殺念慮が解消しました。
セマグルチドに関連する自殺念慮についてのみRORが1.45倍でした。セマグルチド治療開始から自殺念慮発現までの平均期間は 80.39日でした。
抗うつ薬との併用例を含む分析では、セマグルチド関連の自殺念慮の報告がすべての薬剤と比較して不均衡でRORは4.45倍、ベンゾジアゼピンとの併用例を含む分析では、セマグルチド関連の自殺念慮の報告がすべての薬剤と比較して不均衡でRORは4.07倍でした。
糖尿病薬のSGLT-2阻害薬であるダパグリフロジンと比較して、セマグルチド関連の自殺念慮のRORは5.56倍、メトホルミンと比較して、セマグルチド関連の自殺念慮のRORは3.86倍、肥満治療薬のオルリスタットと比較して、セマグルチド関連の自殺念慮のRORは4.24倍でした。
発売の年から2023年8月まで、両薬剤で報告された自殺関連ADRの割合はわずかに増加しました。セマグルチドでは0%(2017年)から0.8%(2023年)、リラグルチドでは0.09%(2014年)から0.4%(2023年)に増加しました。
痩せるためにGLP-1受容体作動薬を使用している人もいるでしょう。しかし、副作用のない薬は存在しません。自殺関連の報告は少ないとはいえ、そのリスクを無視するわけにはいきません。
糖尿病も肥満も糖質過剰症候群なので、食事で改善します。安易に薬に頼らないようにしましょう。
「Disproportionality Analysis From World Health Organization Data on Semaglutide, Liraglutide, and Suicidality」
「セマグルチド、リラグルチドと自殺傾向に関する世界保健機関のデータからの不均衡分析」(原文はここ)