アセトアミノフェンは安全だ!という専門家もいるかもしれませんが、副作用のない薬はありません。その副作用が命に係わるのであれば非常に注意が必要です。
今回の研究ではアセトアミノフェンと血液のがんである白血病の関連を分析しています。ニューヨーク州バッファローのロズウェルパークがん研究所(RPCI)で医療サービスを受けた人で、20歳から84歳までの急性⽩⾎病の169⼈と、対照群として⾮腫瘍性疾患のためにRPCIで医療サービスを受けた7591⼈の適格者の中から無作為に選ばれた676⼈を対象としています。(図は原文より)
上の図のように、アセトアミノフェンを使った経験がある人は、使ったことがない人と比較して1.53倍も急性白血病になる可能性が高くなりました。1週間の1回以上でも1回未満でもリスクは変わりません。使用期間によっても違いはありません。使用量が多いと有意差が無くなっているのが何となく納得できませんが、1日2錠以下でも白血病の可能性が高くなっています。
一方アスピリンではそのようなリスク増加はないようです。
これだけでは根拠としてちょっと弱いですね。もう一つ見てみましょう。
20~79歳の新たに骨髄性白血病と診断された670人(急性骨髄性白血病 (AML) 420人、慢性骨髄性白血病 (CML) 186人)と対照群701人を対象に、鎮痛剤の使用と白血病との関連を調べました。(表は原文より改変)
女性 | 男性 | |||
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オッズ比 | 95%信頼区間 | オッズ比 | 95%信頼区間 | |
アスピリン | ||||
非ユーザー | 1.00 | 1 | 1.00 | 1 |
ユーザー | 0.62 | 0.42~0.90 | 1.02 | 0.74~1.42 |
1週間あたりの錠数 | ||||
<7 | 0.67 | 0.43~1.04 | 1.09 | 0.75~1.58 |
≥7 | 0.53 | 0.31~0.91 | 0.93 | 0.60~1.43 |
イブプロフェン | ||||
非ユーザー | 1.00 | 1 | 1.00 | 1 |
ユーザー | 0.89 | 0.60~1.32 | 1.02 | 0.69~1.51 |
1週間あたりの錠数 | ||||
<7 | 0.85 | 0.49~1.49 | 1.15 | 0.66~2.00 |
≥7 | 0.92 | 0.57~1.49 | 0.92 | 0.56~1.53 |
使用期間 | ||||
1~5年 | 1.02 | 0.56~1.87 | 1.71 | 0.91~3.21 |
6~10年 | 1.22 | 0.66~2.27 | 0.78 | 0.41~1.45 |
10年以上 | 0.59 | 0.32~1.09 | 0.74 | 0.38~1.44 |
アセトアミノフェン | ||||
非ユーザー | 1.00 | 1 | 1.00 | 1 |
ユーザー | 1.60 | 1.04~2.47 | 1.09 | 0.67~1.77 |
1週間あたりの錠数 | ||||
<7 | 1.06 | 0.59~1.89 | 1.08 | 0.56~2.07 |
≥7 | 2.37 | 1.34–4.18 | 1.09 | 0.57~2.12 |
使用期間 | ||||
1~5年 | 1.70 | 0.87~3.29 | 1.66 | 0.77~3.59 |
6~10年 | 1.24 | 0.63~2.44 | 1.44 | 0.60~3.47 |
10年以上 | 1.96 | 1.00~3.84 | 0.55 | 0.25~1.21 |
Cox2阻害剤 | ||||
非ユーザー | 1.00 | 1 | 1.00 | 1 |
ユーザー | 1.08 | 0.60~1.93 | 1.10 | 0.55~2.21 |
1週間あたりの錠数 | ||||
<7 | 0.13 | 0.02~1.12 | 0.88 | 0.12~6.72 |
≥7 | 1.45 | 0.77~2.72 | 1.13 | 0.54~2.36 |
使用期間 | ||||
1~2年 | 1.25 | 0.59~2.67 | 1.23 | 0.46~3.30 |
2年以上 | 0.90 | 0.39~2.05 | 0.99 | 0.38~2.57 |
上の表はアスピリンやアセトアミノフェンなどの鎮痛剤と骨髄性白血病との関連です。やはり前の研究と同様に、アスピリンは白血病のリスク増加はないばかりか、リスク低下と関連しているようです。
アセトアミノフェンは女性のみ、骨髄性白血病の可能性を1.60倍にしました。1週間当たりの使用錠数が7錠以上だと白血病の可能性は2.37倍、10年以上の使用で1.96倍になりました。
アセトアミノフェンの慢性的な使用は十分な注意が必要ですね。
アセトアミノフェン(カロナール)で白血病というのは、多くの人は想像していないでしょう。これはもう少し掘り下げてみた方が良さそうですね。
それは次回以降で。
「Opposing effects of aspirin and acetaminophen use on risk of adult acute leukemia」
「アスピリンとアセトアミノフェンの使用が成人急性白血病のリスクに及ぼす相反する影響」(原文はここ)
「Nonsteroidal anti-inflammatory drug and acetaminophen use and risk of adult myeloid leukemia」
「非ステロイド性抗炎症薬とアセトアミノフェンの使用と成人骨髄性白血病のリスク」(原文はここ)