多くの医師は、コレステロールが高いと血管が詰まると言い、スタチンなどの薬でコレステロールを下げようとします。コレステロールビジネスはすっかり医療の世界だけでなく、栄養や食品の世界にも浸透しています。コレステロールのように手軽に血液検査だけで数値がわかり、症状も何もないのに、それを標的として患者を脅し薬を処方するという、慢性疾患に対する医療のビジネスモデルは医療側にとって非常にうまくいっています。
同じように、尿酸も脅しに使われています。尿酸は体に悪いのでしょうか?
コレステロールと同様に尿酸は人間にとって非常に重要なものです。尿酸値の上昇は痛風になるとか、腎臓に悪いとか、様々な疾患の原因になると脅されるでしょう。本当でしょうか?
よく「尿酸は老廃物」というような表現がされています。老廃物であれば、骨や筋肉や脳に悪影響がありそうですが、以前の記事「尿酸値が高いことは悪いことなのか? その1 骨と筋肉」「その2 認知症」「その3 パーキンソン病」で書いたように、尿酸値が高い方が筋肉量や骨密度が高く、認知症やパーキンソン病などの神経疾患のリスクを低下させてくれます。
老廃物であれば、不必要であるし、体の外にすぐにでも排出したいですよね。でも人間の体はそのようにしていません。尿酸は、腎臓で約3分の2を排除し、消化管で3分の1を排除します。でも腎臓の近位尿細管で尿酸の約90%が血液中に再吸収されます。再吸収するということは必要なものだから体に残しておきたいのです。しかも、再吸収に関係する受容体はいくつも存在することを考えても、尿酸を体に残しておくように進化してきたと考える方が妥当でしょう。尿酸は体の中で作り出すメカニズムが存在し、それを単に排出せずに腎臓で再吸収するなんて、重要な物質であるに決まっていると思いませんか?
高尿酸血症は、尿酸の過剰産生、糸球体濾過の低下、尿細管再吸収の増加による排泄不足によって引き起こされる可能性があります。つまり、尿酸が上昇するには他の要因が強く影響し、その原因にこそ問題があるのです。その問題から目をそらずようにするのが現代医療のやり方でしょう。
尿酸は強い抗酸化作用があると考えられています。尿酸は、人間(類人猿)以外の哺乳類ではウリカーゼという酵素で分解されます。しかし、数千万年前に人間は尿酸を分解するウリカーゼを持たなくなってしまいました。また、同じころに抗酸化物質として有名なビタミンCを合成する能力を失ってしまいました。どっちが先かはよくわかりません。恐らく尿酸が高くなったことで、ビタミンCが必要なくなったのではないかと思います。
しかし、人間では尿酸のほうがビタミンCよりも遥かに高い抗酸化作用を発揮していると言われています。ウリカーゼを失ったことにより、人間の血中の尿酸値は他の哺乳類の7~8倍高くなっていると言われています。そして、血中の尿酸濃度はアスコルビン酸(ビタミンC)の約10倍高く、尿酸が血中の強力な抗酸化物質であることを示しています。おそらく、尿酸レベルが 7~8 倍高かったことで、進化の過程で人体が活性酸素の有害な影響から強く保護され、地球上で最も知能が高く、他の哺乳類よりも長寿になることができたと考えられます。
人体にとって、こんな重要な尿酸です。それが様々な疾患の根本原因であるはずがありません。根本原因は他にあり、その根本原因に目を向けなければ、尿酸=悪、というコレステロールと同じ図式になるのです。しかも症状もない高尿酸血症を薬で治療するのは日本だけです。高コレステロール血症によって直接起きているわけではない血管の閉塞を予防するためにスタチンを投与するように、痛風や、尿酸によって腎障害が起きているわけでもないのに、予防のために尿酸を下げる薬を投与しています。新型コロナワクチンでもあったように、これを使わないと大変なことが起きるぞ!と脅しているだけです。
ネットで痛風腎などを検索すると、どの医師も、高尿酸血症を放っておくと痛風から痛風腎になり、慢性腎臓病になり、腎不全になり、最悪は人工透析になるよ、と煽っています。
では、いったいどれくらいの人が痛風で人工透析になるまでの腎不全になっているのでしょうか?糖尿病と比較してみましょう。
「糖尿病が強く疑われる者」は、約1,000万人、「糖尿病の可能性を否定できない者」(糖尿病予備群)は約1,000万人と推計されています。(ここ参照)そして、糖尿病性腎症で透析を受けている人は130,653人で透析患者全体の約40%です。
一方痛風や高尿酸血症は、痛風で治療を受けている人は130万6千人、高尿酸血症は推定で1300万人です。そして、痛風腎で透析を受けている人は954人で透析全体のたった0.3%です。(下の図はここより)
糖尿病予備軍(前糖尿病)は糖尿病とほぼ同数であることから、ずっと糖質過剰摂取を続けていれば、前糖尿病からほとんどの人がいつか糖尿病になってしまう計算になります。一方高尿酸血症は、その10人に1人が痛風になると思われます。しかもその疾患で人工透析になった人を推定総患者数で割って単純計算をしてみると、糖尿病ではおよそ130,000/10,000,000=1.3%です。痛風は954/1,306,000=0.07%、高尿酸血症で計算すると、954/13,000,000=0.007%です。高尿酸血症や痛風で人工透析になるというのは誇大広告にしか思えません。もちろんゼロではありませんが、煽り過ぎでしょう。
一度でも脅しに乗せ、尿酸を下げる薬を飲み始めさせてしまったら、ずっと顧客のままでいてくれるので、煽りには力が入るでしょう。
人間の血中の尿酸の約3分の2は内因的に生成され、残りの3分の1は食事中のプリン体に由来します。異常なほどの尿酸値の上昇を招く代謝障害が問題であり、数値だけを整えて、尿酸値を薬で下げても、根本的な有害性は残ったままです。改善しなければならないのは数値ではなく代謝障害です。
放っておいていいと言っているのではありません。でも生活習慣、特に食事を変えずに、尿酸値だけを下げても無駄でしょう。
次回以降では、尿酸がどうして人体に悪影響を与えるほどまでに増加することがあるのか?そもそも薬で尿酸値を下げてどれほど効果があるのか?などについてを書きたいと思います。
糖質制限で代謝改善が健康の基本
かもしれませんね。
不安を煽って商品(治療)を勧める
のが商売(医療)の基本、
は言い過ぎでしょうか。