前回の記事「尿酸値が高いことは悪いことなのか? その1 骨と筋肉」では、尿酸値が高い方が骨密度が高く、骨折が少なく、筋肉量も多いことを書きました。
尿酸値が高い利点はそれにとどまりません。
今回は認知症です。4618人の尿酸値と認知症の発症を分析したところ様々な調整をした後で、尿酸値の値で4分位に分けて、尿酸値のもっとも低い群と比較すると、最も高い群では認知症のリスクが27%低下していました。(図は原文より、表は原文より改変)
尿酸 | モデル2 |
---|---|
第1四分位 | 1 |
第2四分位 | 0.95(0.73-1.23) |
第3四分位 | 0.90(0.69-1.18) |
第4四分位 | 0.73(0.55-0.97)* |
認知機能を比較すると、下のようになります。
上の図は異なる領域での認知機能を表しています。グラフの真ん中の線より上にあれば認知機能のスコアが高く、下にあれば認知機能のスコアが低下していると考えてください。横軸は尿酸値による4分位で最も低いのが左側の1、最も高い尿酸値の群が右側の4です。
そうすると、全てのグラフで、最も尿酸値の低い群がスコアが低く、尿酸値が高い方がスコアが良いことがわかります。
他の研究でも、尿酸値とアルツハイマー病との間に逆相関が認められ、高尿酸血症であるとアルツハイマー病のリスクが34%低下しているという研究もあります。(その研究はここ)
また、高尿酸血症だけではなく、痛風のある人のアルツハイマー病との関連を分析した研究もあります。(その論文はここ、図はこの論文より)
上の図は10年間のアルツハイマー病の累積発症率です。実線が痛風のある人、点線が痛風のない人です。痛風がある方が発症が少ないことがわかります。
認知症は多因子性で起きると考えられます。一つの大きな要因として、酸化ストレスの増大が考えられています。尿酸は強い抗酸化作用をもっていることを考えると、この認知症との関連は十分に考えられます。尿酸には神経保護作用があるのかもしれません。
もちろん実際には、尿酸値が高いから認知症になりにくいのか、認知症になる人において尿酸値を下げる何か要因があるのかわかりません。
しかし、このような認知症との関連を見ると、何でもかんでも尿酸値が高ければ薬で低下させることに疑問を持たざるを得ません。
尿酸の役割はまだまだよくわかりません。ということは適切な尿酸値もわかりません。さらに尿酸値をコントロールする意味があるのかどうかもわかりません。尿酸値を上昇または低下させる別の要因が、様々な病気のリスクを上げたり、リスクを下げたりするのだとしたら、尿酸値そのものをコントロールしても、その別の要因は変化せず、リスクも変化しないはずです。
いずれにしても、私はただ尿酸値が上昇しただけでは尿酸値を低下させる必要は無いと思います。
「Serum uric acid and cognitive function and dementia」
「血清尿酸と認知機能および認知症」(原文はここ)
高尿酸値万歳な感じですが(笑)
私の場合、ケトン体上昇と連動しているような気もしないでもないのですが関連性は考えられるのでしょうか。
ねけさん、コメントありがとうございます。
腎臓では尿酸は乳酸,ニコチン酸,ケトン体などと交換輸送されるので、ケトン体が増加すると尿酸の再吸収が増加する可能性があります。
10年前に中期アルツハイマー型認知症発症して、スーパー糖質制限食実行で1週間足らずでアルツハイマー型認知症寛解した らこ です。
7年後(今から3年前)高尿酸血症になりました。アルツハイマー型認知症はずっと寛解中です。
アルツハイマー型認知症経験者でも高尿酸血症にはなります。確かに再発はしていませんが。
「高尿酸血症万歳」には、私らこ はなりません。きちんと、高尿酸血症悪化を未然に防ぐことが最優先です。アルツハイマー型認知症再発にならなくても、透析になったら、元も子もないですから。
らこさん
私は高尿酸血症をお勧めしているわけではありません。
糖質制限をしている場合、水分不足や塩分制限になって、高尿酸値を示している人が多いのではないかと思います。
>私は高尿酸血症をお勧めしているわけではありません。
◎高尿酸血症とアルツハイマー型認知症は逆相関になっている
◎痛風になっていなければ、高尿酸血症に投薬するのは疑問である
勧めているではないですか!
らこさん
対面でお話ししているわけではなく、文字のみのコミュニケーションの限界です。
私の文章が高尿酸血症を勧めていると受け取られたなら、私の文章の貧弱さに原因があるのでしょう。
高尿酸血症のすべてが問題あるわけではないと思っています。