鉄サプリメント摂取とパーキンソン病リスク

鉄代謝の調節異常は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などのいくつもの神経変性疾患に共通しています。安易な鉄サプリメントの摂取が、脳に蓄積し、もしかしたら将来の様々な病気を引き起こすかもしれません。

今回の研究では、2006年から2010年にイギリスのバイオバンク研究に参加し、2018年まで追跡調査された中高年のイギリス人385,898人のデータを分析しています。鉄サプリメントの摂取はアンケートなので、食事アンケートと同様にデータの質が低い可能性がありますが、食事とは違い、サプリを飲んでいるかどうかはある程度正確に答えられるでしょう。

解析はパーキンソニズム発症例911人と、全原因パーキンソニズム発症例のない385,898人を対象としています。(図は原文より)

上の図は、鉄サプリメント摂取量、ビタミンCまたはマルチビタミン摂取量、ヘモグロビン濃度を共変量として含む分析、鉄サプリメント摂取量とビタミンCまたはマルチビタミン摂取量を共変量として含む分析、鉄サプリ摂取量(あり/なし)とビタミンCまたはマルチビタミン剤摂取量(あり/なし)を組み合わせた4つのカテゴリの分析です。

鉄サプリメント摂取量、ビタミンCまたはマルチビタミン摂取量、ヘモグロビン濃度を含む分析では、鉄サプリを飲まない人と比較して、鉄サプリ摂取はパーキンソン病発症が1.689倍でした。

鉄サプリメント摂取量とビタミンCまたはマルチビタミン摂取量を共変量として含む分析でも、鉄サプリを飲まない人と比較して、鉄サプリ摂取はパーキンソン病発症が1.734倍でした。

鉄サプリ摂取量とビタミンCまたはマルチビタミン剤摂取量を組み合わせた4つのカテゴリでは、鉄サプリもビタミンも飲まない人と比較して、哲サプリのみ飲む人では、パーキンソン病発症が2.224倍でした。

代表的な鉄過剰症である遺伝性ヘモクロマトーシスでも体内の様々な臓器への過剰な鉄蓄積はあるものの、脳への過剰な鉄沈着はほとんど認められないようです。このことから脳では体内と独立した鉄代謝系が機能していると予想されています。

パーキンソン病で脳に鉄が蓄積するメカニズムはわかっていません。もしかしたら、医原性のものもあるかもしれません。例えば、以前の記事「コレステロールとスタチンとパーキンソン病のリスク」で書いたうように、コレステロールの低下、スタチンの使用がパーキンソン病のリスクを増加させます。

 

また「尿酸値が高いことは悪いことなのか? その3 パーキンソン病」で書いたように、パーキンソン病では尿酸値が低くなります。尿酸値を下げる医療が本当に健康に良いのかどうか?

しかし、一番のパーキンソン病の原因は糖質過剰摂取でしょう。以前の記事「パーキンソン病と糖質制限」で書いたように、糖質過剰摂取により、αシヌクレインという物質が糖化して凝集体を生成し、細胞の酸化ストレスを引き起こし、高い細胞毒性をもたらします。さらに、糖質過剰摂取で糖質をエネルギー源にすると、非常に反応性の高い危険な「メチルグリオキサール」という代謝産物ができてしまいます。メチルグリオキサールはタンパク質だけでなく、神経伝達物質のドパミンさえも糖化してしまいます。ドパミンの糖化により、1-アセチル-6.7-ジヒドロキシ-1,2,3,4、-テトラヒドロイソキノリン(ADTIQ)などの毒性代謝物が生成されます。ADTIQは、黒質を含むヒトの脳組織に存在します。ADTIQはパーキンソン病の患者で大きく増加しています。

糖質過剰摂取と鉄サプリが相まって、パーキンソン病のリスクを上げるのだと考えます。

安易な鉄サプリは危険である可能性が高いでしょう。

「A Prospective Study on the Relationship between Iron Supplement Intake, Hemoglobin Concentration, and Risk of Parkinsonism」

「鉄サプリメント摂取、ヘモグロビン濃度、パーキンソン病リスクの関係に関する前向き研究」(原文はここ

2 thoughts on “鉄サプリメント摂取とパーキンソン病リスク

  1. モハメドアリやマイケルJフォックス、プロレスの初代タイガーマスク、柔術のヒクソングレイシー、
    現役時代は異次元の動きを見せていたアスリートですが、いずれもパーキンソン病です。

    たまたまなのか、何か共通の要因があるのでしょうか?

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      マイケルJフォックスさんについては何とも言えませんが、モハメッドアリさん、タイガーマスクさん、グレイシーさんは
      みんな脳にダメージを何度も負っているでしょう。
      ラグビーやアメフト選手のパーキンソン病リスクは3倍以上ですから、彼らも同様のリスクがあっても不思議ではありません。
      スポーツを始める前にもインフォームドコンセントが必要でしょうかね?

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