いまだに糖質制限を批判する人は後を絶ちませんが、ほとんどが根拠がありません。いまだに低脂肪食、野菜中心の食事を勧めている人もいるでしょう。
今回の研究では、糖質制限(ケトン食)、と欧米ではなぜかよく出てくる地中海食、そして超低脂肪植物性食品中心食を食べて比較しました。代謝的に不健康な肥満の参加者55人が対象で、3つの食事のいずれかにランダムに割り振られました。42人が完了し、参加者の平均年齢は43.2歳、最初のBMIは38.9です。
参加者一人一人のカロリー摂取量を調整し、全員が体重の約10%を減量できるようにしました。減量には約4~5か月かかりました。(図は原文より、表は原文より改変)
| 栄養素 | 超低炭水化物ケトン食 | 地中海食 | 超低脂肪植物性食品中心 |
|---|---|---|---|
| 炭水化物、g | 20 | 254 | 352 |
| 炭水化物由来のエネルギー(%) | 4 | 50 | 70 |
| タンパク質、g | 112 | 83 | 90 |
| タンパク質由来のエネルギー(%) | 23 | 15 | 15 |
| 脂肪、g | 164 | 80 | 35 |
| 脂肪由来エネルギー(%) | 73 | 35 | 15 |
| 飽和脂肪酸、g | 52 | 19 | 7 |
| 飽和脂肪酸由来のエネルギー(%) | 23 | 8 | 3 |
| コレステロール(mg) | 749 | 160 | 16 |
上の表は、それぞれの食事の2,000kcalあたりの主要栄養素組成です。ケトン食は炭水化物が20gです。エネルギーの4%です。かなり厳しめの糖質制限です。そして死亡は164g、73%も摂取しています。
上の図は、骨格筋と肝臓の代謝機能を示しています。赤がケトン食、青が地中海食、黄色が低脂肪植物食です。Aの図は左が骨格筋、右が肝臓のインスリン感受性の変化を示しています。
どの食事でも骨格筋のインスリン感受性は50%程度増加しています。まあ、これは体重、体脂肪率の減少で起きたのでしょう。肝臓のインスリン感受性はケトン食が圧倒的に増加しています。低脂肪食は50%程度ですが、ケトン食では200%近い改善です。地中海食と比較してもケトン食は圧勝です。
図のBは肝臓の代謝機能を示し、左は肝臓内の中性脂肪含有率、真ん中が基礎内因性グルコース産生速度、右が肝臓の新規脂肪生成です。
肝臓内中性脂肪含有率はどれも低下していますが、ケトン食が最も低下しています。67%の低下です。他の食事では45%の低下でした。基礎内因性グルコース産生速度と肝臓の新規脂肪生成はケトン食と地中海食で低下しましたが、低脂肪食では変化なしです。低脂肪食なのに(?)肝臓の新規脂肪生成は変化なしです。肝臓の新規脂肪生成は脂肪を摂取するから起きるのではないのは当たり前ですね。
減量後の肝臓における新規脂肪生成の変化は、24時間血漿インスリン曲線下面積の変化と相関していました。つまり、インスリン分泌が減れば、脂肪生成も減るのです。
地中海食で低下したと書きましたが、ケトン食と比較すると、ケトン食の圧勝です。
| – | 超低炭水化物ケトン食 | 地中海食 | 超低脂肪植物性食品中心 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| – | 前 | 後 | 前 | 後 | 前 | 後 |
| 血糖値、mg/dL | 97(8) | 85(7) | 102 (11) | 97(10) | 96(9) | 90(6) |
| 2時間経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)後の血糖値(mg/dL) | 166 (25) | 136 (37) | 177(35) | 141 (24) | 175 (30) | 153 (17) |
| HbA1c、% | 5.6 (0.4) | 5.0 (0.3) | 5.4 (0.5) | 5.3 (0.3) | 5.7 (0.7) | 5.3 (0.3) |
| インスリン、μU/mL | 27.7 (9.5) | 13.1 (4.5) | 27.1 (10.4) | 17.0 (8.1) | 28.2 (12.8) | 17.9 (7.9) |
| HOMA-IR | 6.7 (2.5) | 2.8 (1.0) | 6.8 (2.6) | 4.1 (2.3) | 6.8 (3.4) | 4.0 (1.7) |
上の表は、糖代謝の変化です。どの食事も改善はしていますが、ケトン食が最も改善幅が大きいですね。
前糖尿病(糖尿病予備軍)の寛解率を見ると、ケトン食群の参加者では50%です。地中海食の29%、低脂肪食の7%と比較して、段違いですね。
HDLコレステロールに関しては、ケトン食では増加傾向でしたが、低脂肪食では36mg/dLから32に減少してしまいました。ダメダメですね。
上の図は24時間の様々なパラメータの変動です。上から血糖値、中性脂肪、非エステル化脂肪酸、β-ヒドロキシ酪酸(ケトン体)です。当然ですが血糖値の変動はケトン食ではほとんどありませんが、他の食事では血糖値スパイクが食事のたびに現れています。中性脂肪はケトン食で大量に脂質を摂取するので、TGスパイクが少し他の食事よりも高いですね。ただ、空腹時の中性脂肪はケトン食が最も低くなっています。ただ有意な差は食事間でありません。
非エステル化脂肪酸濃度はケトン食で63%増加し、地中海食では変化がなく、超低脂肪植物性食では29%減少しました。
β-ヒドロキシ酪酸は、ケトン食で20倍以上に増加し、地中海食群では変化がなく、低脂肪食では35%減少しました。低脂肪食は大事なケトン体が減ってしまうのです。
上の図は、上からインスリン、インスリン分泌速度、インスリンクリアランス速度、グルカゴン、血漿グルカゴン:インスリン比です。
血中のインスリンは全食事群で減少しましたが、ケトン食では74%の減少で、地中海食の44%減、および低脂肪食の27よりもかなり大きく減少しました。
インスリン分泌速度も全てで減少し、インスリンクリアランス速度は増加しましたが、ケトン食のの変化は他の2群よりも大きくなりました。
血中のグルカゴンは、ケトン食では52%増加しましたが、地中海食では32%減少、低脂肪食では41%減少しました。
血漿グルカゴン:インスリン比は、ケトン食では3倍以上に増加しましたが、地中海食と低脂肪食では変化しませんでした。
上の図は結果のまとめです。完全にケトン食、糖質制限の圧勝です。肝臓のインスリン感受性と前糖尿病寛解率の増加、および糖化ヘモグロビン、24時間血糖値およびインスリン濃度、肝内中性脂肪含有量、空腹時中性脂肪および大型VLDL粒子濃度、平均VLDL粒子サイズ、PAI-1濃度の減少は、どれもケトン食で圧勝なのです。
糖尿病、肥満は糖質過剰症候群です。副作用リスクのあるGLP-1受容体作動薬に頼る必要はありません。
これでもまだ糖質制限を批判する人は、これ以上の根拠を示す必要があります。まあ、出てこないですけどね。
糖質制限をやりたくない人は無理にやらなくても良いです。しかし、医療システムに乗っかってしまうと、その後は抜け出せなくなる可能性が高くなります。
「Effect of diet macronutrient content on the cardiometabolic response to weight loss: A randomized clinical trial」
「食事中の主要栄養素含有量が減量に対する心血管代謝反応に及ぼす影響:無作為化臨床試験」(原文はここ)



