専門家というのは、自分の知っている知識の中で物事を説明しようとします。自分の知識が間違っているとか、自分の知ってる知識では説明できないことがあるなどとはあまり考えないのかもしれません。医学部で習ったことが正しいとは限りません。教科書に書いてあることが正しいとは限りません。ましてや利益相反のある学会で得た知識が正しいとは限りません。我々はまだまだ無知で、知らないことばかりなんです。
私のある日の脂質のデータは次のようです。
総コレステロール 389mg/dL
LDLコレステロール 254mg/dL
HDLコレステロール 118mg/dL
さあ、これを見たときに専門家は何と思うでしょうか?
LDLコレステロールが高すぎる!家族性高コレステロール血症(FH)なんじゃないか?
HDLコレステロールが高すぎる!CETP欠損症なんじゃないか?
LDLコレステロールが高いのはもちろん、HDLコレステロールだって非常に高いのは危険だ!
このデータはある日、ある時のデータにすぎません。私が糖質制限をする前は、LDLコレステロールはもっと低く、正常範囲内に収まっていた頃もあります。FHであれば、若い時からずっとLDLコレステロールが高いはずでしょう。もちろん遺伝子検査まではしていませんが。
当然HDLコレステロールも糖質過剰摂取時代はかなり低くなっていました。CETP欠損症であれば、若い時からずっとHDLコレステロールが高いはずでしょう。
糖質制限をすると、少なくない割合でLDLコレステロールが高くなり、私のように、さらにはもっと爆発的に高くなる人もいます。同様にHDLコレステロールも私のように爆増する人もいます。
医師はデータを見ても、食事については何も聞かないでしょう。糖質制限前のデータなんて知る訳もありません。恐らくほとんどの医師は糖質制限でLDLコレステロールだけでなくHDLコレステロールも大きく増加することがあるなんて知らないでしょう。
さて、それでも私はCETP欠損症である可能性は否定できません。じゃあ、調べてみよう!と思い、検査してみました。最近、試薬の高騰や、ニーズの問題なのか、様々な検査が中止に追い込まれています。このCETPも今月から測定できなくなってしまいました。なんとか間に合いました。
ところで、CETPおよびCETP欠損症って何?という人もいるでしょう。
HDLはコレステロールを回収し、コレステロール逆輸送(reverse cholesterol transport, RCT)といって、末梢組織から肝臓へ過剰なコレステロールを戻すことで、動脈硬化の進行を抑制すると言われています。それがいわゆる「善玉コレステロール」たる所以です。
CETPはHDLが回収したコレステリルエステル(CE)をLDLやVLDLに転送する役割があります。CETPが大きく減少したり、その機能が失われるとHDLがすごく高くなります。飲酒でHDLコレステロールが高くなるのは、このCETPが減少するからだと考えられています。
CETP欠損症は、欧米では非常にまれで、日本において最も高頻度に見られ、日本固有のリポ蛋白代謝異常症とも考えられています。著しい高HDLコレステロール血症をとるにも関わらず動脈硬化症が進行するとも考えられています。
このホームページによると、「わが国の高HDLコレステロール血症では、CETP欠損症の頻度が高く(7割~7割5分)、CETP欠損症ホモ接合体ではHDLコレステロール値が150~250mg/dL、ヘテロ接合体では50~150mg/dLを呈する(基準値:男性40~85mg/dL、女性40~95mg/dL)。HDLコレステロールは抗動脈硬化作用を有するが、CETP欠損症の高HDLコレステロール血症では、逆に動脈硬化性疾患保有率が高いことが報告されている。」と書かれています。
実際に、秋田県はCETP欠損症が集積する地域があるようです。その地域を含む秋田県大仙市を対象とした調査では、CETP欠損に起因する高HDLコレステロール血症例において、CETP欠損に起因しない高HDLコレステロール血症例より、心疾患、脳卒中の有病率が高いと考えられました。(ここ参照)
この疫学研究で、協力の得られた住民 181人中(平均年齢:男性 71才、女性 61 才)、CETP欠損症は71人、非CETP 欠損症は、110人でした。参加住民全体の心疾患、脳卒中の有病率は、それぞれ 6.6%(12例)、5.5%(9例)でした。CETP欠損症、非CETP欠損症の2群に分けて検討すると、CETP欠損症では、心疾患、脳卒中の有病率は、それぞれ 11.3%、7.0%、非CETP欠損症では、それぞれ、3.6%、3.6%であり、心疾患、脳卒中のいずれもCETP欠損症で、非CETP欠損症より有病率が高くなっていました。LDLコレステロール値は、CETP欠損症群で低値の傾向を示しました。
私はひょっとしたらCETP欠損症のヘテロ接合体なのかもしれません。そうすると上の研究のように、もしかしたら心血管疾患リスクが高いのかもしれません。
でも変です。上の研究では、CETP欠損症ではLDLコレステロール値は低値の傾向を示しています。CETPが働かなければ、HDLからLDLにコレステロールが転送されませんから、LDLコレステロール値は低くなるはずです。でも私は非常に高いLDLコレステロールです。
他のホームページに書かれていることも見てみましょう。(ここ参照)
【CETP欠損症】
CETPはHDLからアポB含有リポ蛋白へのコレステロールエステル(cholesterol ester:CE)の転送および逆方向へのトリグリセライド(triglyceride:TG)の転送が阻害されるため,高HDL-C血症・低LDL-C血症を呈する。HDLにCEが蓄積して通常は認めない大型のHDL(HDL1)が出現し,TGに富んで粒子サイズが多様化する。CETP欠損症ホモ接合体のHDL-C濃度は,健常者の3~4倍と著明高値となる。HDLの構成アポ蛋白の中でApo A-Ⅰは約2倍に増加し,Apo A-Ⅱは軽度から中等度程度の増加にとどまる。LDL-Cは軽度から中等度低下し,Apo C-Ⅱ,Apo C-Ⅲ,Apo Eがいずれも2倍以上に増加する。
ここにもLDLコレステロール値は軽度から中等度低下すると書かれています。CETP欠損症は高HDLコレステロール・低LDLコレステロールのはずです。
今回の研究では、CETP欠損症について、いろいろ測定しています。(表は原文より改変)
| コントロール | ヘテロ接合体 | 複合 ヘテロ接合体 |
ホモ接合体 | |
|---|---|---|---|---|
| CETP(μg/ml) | 1.24 ± 0.4 | 0.87 ± 0.2 | 0.46 ± 0.2 | <0.1 |
| 総コレステロール | 195 ± 36 | 180 ± 22 | 261 ± 29 | 280 ± 35 |
| LDLコレステロール | 120 ± 31 | 77 ± 13 | 102 ± 29 | 102 ± 25 |
| HDLコレステロール | 52 ± 14 | 85 ± 26 | 139 ± 22 | 157 ± 29 |
| 中性脂肪 | 120 ± 70 | 88 ± 40 | 101 ± 52 | 104 ± 37 |
| apoA-I | 144 ± 29 | 154 ± 26 | 224 ± 41 | 252 ± 25 |
| apoA-II | 35 ± 5 | 35 ± 2 | 42 ± 10 | 40 ± 6 |
上の表に示すように、CETPはホモ接合体ではほぼゼロです。ヘテロ接合体でも0.87μg/mlと低値です。コントロールは1.24μg/mlなので、30%ほど少ない値を示しています。
検査機関によってCETPの基準値はある程度異なると思います。私の持っている検査機関の基準値は、参考値ですが、男性で0.8~3.0μg/ml、女性で1.5~3.4μg/mlです。
さらに他の論文も見てみましょう。(ここ参照、図もここより)
上の図はCETP値とCETPの活性です。CETP値が高いほど活性も高いことを示しています。
上の図は、左からCETP欠損症のホモ接合体、次の二つがヘテロ接合体、次が男性のコントロール、一番右が女性のコントロールのCETP値です。ホモ接合体はCETP値ゼロです。ヘテロは1μg/ml前後ですね。コントロールは男性41名で1.8±0.6 μg/ml、女性37名で2.0±0.5 μg/mlです。
それでは私の測定値を発表します。
私のCETPは「6.1μg/ml」でした!上の検査機関の基準値の上限のおよそ2倍です。つまり、私はCETP欠損症である訳がありません。
じゃあ、なんでCETPがこんなに高いのに、HDLコレステロールが高いのか?そしてLDLコレステロールまで非常に高いのか?その理由は、わかりません。教科書に書かれていません。誰も恐らく調べていません。CETP欠損だとHDLコレステロールは高く、LDLコレステロールは低くなります。しかし、私はCETPが非常に高く、恐らく活性も高い。でもHDLコレステロールもLDLコレステロールも高いのです。つまり、糖質過剰摂取の人と糖質制限の人では全く違う代謝状態なのではないかと思います。
糖代謝と脂質代謝およびインスリンとCETPは密接に関連していると考えられますが、まだすべてがわかっているわけではありません。
心血管疾患は糖質過剰症候群です。コレステロールは関係ありません。
専門家は必ずしも正しいことを言うわけではないことは、コロナのパンデミックのときによくわかったと思います。専門家の一部は平気で知ったかぶりをしますし、嘘をつくこともあります。私もその一人かもしれませんので、私の言うことは、ちゃんとご自身で精査、検討してください。今回のCETPの結果もn=1です。でもこのn=1が重要だと思います。医療および医療が使うエビデンスは企業に牛耳られていることをよく考えるべきです。
私のように、糖質制限でなぜCETPが増加し、HDLコレステロールが増加し、LDLコレステロールが増加するのか、専門家の皆さん、ぜひ説明してください。
「Apolipoprotein composition of HDL in cholesteryl ester transfer protein deficiency」
「コレステリルエステル転送タンパク質欠損症におけるHDLのアポリポタンパク質組成」(原文はここ)

