人類はウイルスや細菌と共生してきました。もちろん、悪いことをするウイルスも細菌もいますが、無害なもの、有益なものもいます。
人類が食事を自分たちに都合よく変化させたために、バランスを崩したり、暴れ出したウイルスや細菌もいるでしょう。
さて、一部のがんはウイルスや細菌が原因だと考えられています。でも、もしかしたらこれも平穏に共生していたものが、糖質過剰摂取で暴れ出したのかもしれません。
医療の世界は、大腸がんも細菌のせいにしようとしています。以前の記事「若年性のがんの発生率は世界的に増加している その2 コリバクチン産生大腸菌犯人説」で書いたように、腸内細菌のある大腸菌が大腸がんの原因であるかのように持っていこうとしています。もちろん関連はあると思いますが、この大腸菌を狂暴な菌に変えたものが真犯人だと思います。
がんを起こすと考えられている代表的な細菌は、ヘリコバクター・ピロリです。これは多くの胃がんの原因だと考えられています。
大腸がんも二匹目のどじょうを狙っているのかもしれません。医療の世界は、ウイルスや細菌のせいにすることにより、除菌治療やワクチン、新たな薬、そして現在治療法がなければ早期発見という名の下で過剰な健診を提供します。
まずは、本当にウイルスや細菌が悪いのかどうかを疑ってみましょう。
もし、ウイルスや細菌が犯人であれば、その存在の有無だけががん発症率を上げるはずです。がんを起こすと考えられている代表的な細菌のヘリコバクター・ピロリを見てみましょう。
以前の記事「白血球や血小板の増加はインスリン抵抗性と関連している その1」で書いたように、白血球数は代謝異常を表しています。白血球数と胃がん発症リスクとの関連を見てみましょう。有名な久山町研究です。(図は原文より)
上の図は白血球数別の胃がんの発症率を示しています。最も少ない群は白血球数が4400/μL以下で、最も多い群は6400以上です。最も多い群でも6400以上というのは非常に注目に値します。なぜなら、白血球数が6400で何か指摘する医師はほとんどいないからです。6400という数値を見ても、医師はスルーでしょう。
最も少ない群と比較して、最も白血球が多い群では、胃がんの発症率は3倍以上です。いろいろな因子を調整した後でも、白血球数が最も高い群では、最も低い群に比べて胃がんのリスクが2.22倍でした。白血球数が1000増加すると、胃がんリスクは1.13倍になります。
じゃあ、ヘリコバクター・ピロリ菌との関連はどうでしょう。、ピロリ菌感染のある人は、ピロリ菌感染のない人と⽐較して、 胃がん発症リスクが2.33倍でした。今回の研究ではピロリ陰性の胃がんの発症者のサンプルが少ないので、ちょっとその点は引っ掛かります。
上の図はピロリの有無と白血球数が6300以下と6400以上の場合での胃がん発症リスクを示しています。ピロリが陰性の場合は白血球の数値とは関連がありません。しかし、ピロリ感染者で見ると、白血球数が6400以上の人はそれよりも少ない人と比較して、胃がんリスクが1.80倍になりました。また、境界線を6400だけにしているのもちょっと疑問です。4つのグループに分けたときのデータも見たいものです。ただ、これもサンプルが少なくて統計処理ができなかったためでしょう。
この研究では、ピロリ感染がやっぱり関係しているものの、白血球数が多いと胃がんリスクはすごく高くなるという結果になりました。糖質過剰摂取で白血球が増加するのは胃がんリスク増加になると考えられます。
では、血糖値とヘリコバクター・ピロリの関係を見てみましょう。下の2つの研究は拙著「「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因」でも取り上げたものです。
40歳以上の日本人2603人をベースラインのHbA1c値に基づいて4つのグループ(≦4.9%、5.0%~5.9%、6.0%~6.9%、≧7.0%)に分けて、14年間追跡調査しました。追跡調査期間中に、97人が胃がんを発症しました。(図は原文より)
上の図のように、胃がんの発生率は、5.0%~5.9%群(1000人年あたり2.5件)と比較して、6.0%~6.9%群(1000人年あたり5.1件)、7.0%以上群(1000人年あたり5.5件)で有意に増加しましたが、4.9%以下群(1000人年あたり3.6件)ではわずかに高いものの有意差は認められませんでした。この関連性は、ヘリコバクター・ピロリ陽性などの交絡因子を調整した後でも、実質的に変化せず、胃がんのリスクは6.0%~6.9%群で2.13倍、7.0%以上群で2.69倍でした。
上の図は、ヘリコバクター・ピロリ陽性(+)、陰性(-)とHbA1cが6.0異常かどうか、で分けたときの胃がん発症リスクです。ピロリ陰性かつHbA1c6.0未満と比較して、ピロリ陰性かつHbA1c6.0以上では有意な増加はありません。さらにピロリ陽性かつHbA1c6.0未満でも有意な増加はありません。しかし、ピロリ陽性かつHbA1c6.0以上だと4.03倍も胃がんリスクが高くなりました。
つまり、この研究では、ピロリ感染とは関係なく、HbA1cが高いことが胃がんリスクとなっています。
もう一つです。これも久山町の研究です。空腹時血糖値と胃がんの発症リスクを分析しています。
上の図の白いバーと黒いバーの違いは無視してください。横軸は空腹時血糖値です。空腹時血糖値が低い、中程度、高いに分かれていますが、低いは血糖値95mg/dL未満、中程度は95~104、高いが105以上と考えてください。そうすると空腹時血糖が高いほど胃がん発症リスクは高くなり、中程度の群では低い群よりも2.3倍、高い群では3.0倍になりました。
ではピロリとの関連はどうでしょう?
上の図は白がピロリ陰性、黒がピロリ陽性です。ピロリ陽性者においては、空腹時血糖値が低い群と比較して、中程度群で3.倍、高い群で4.2倍、胃がんリスクが有意に高くなりました。しかし、ピロリ陰性者ではそのような差は認められませんでした。
確かにピロリ菌感染は胃がんリスク増加に関連があるかもしれない。でも、ピロリ菌感染者の大多数は胃がんを発症しません。ということはヘリコバクター・ピロリは絶対的な発がん因子ではないはずです。発がんに必要な共因子が必要です。
さらに、たとえヘリコバクター・ピロリを除菌したとしても、健康なピロリ菌陽性者の胃がん発症リスクは36%しか減少しません。健康なピロリ菌陽性者の胃がん死亡リスクを22%しか減少させません。(ここ参照)ちなみに、除菌で健康な成人が胃がん発生を減らすことができるのは476人に1人です。(NNT=476)(ここ参照)
除菌後でも、糖尿病があると、胃がんリスクは1.73倍で、中でも胃の胃噴門のがんは3.40倍でした。糖尿病コントロールが平均HbA1c ≥6.0 %だと1.68倍のリスク増加でした。(ここ参照)ピロリよりも糖質過剰摂取の方が胃がんに関連しているようにしか見えません。
インスリン抵抗性を低下させる作用のあるメトホルミンは、胃がんのリスクを大幅に下げるという研究もあります。(ここ参照、表もここより改変)2型糖尿病でメトホルミン使用者は非使用者と比較して、胃がんリスクが0.448倍に減少し、累積使用期間のが21.47-45.97か月では0.422倍、>45.97か月ではなんと0.120倍まで減少しました。さらにヘリコバクター・ピロリ感染との関係を見ると、下の表のようです。
| メトホルミンとピロリ感染 | |
| メトホルミン(−)/ピロリ感染(−) | 1.000 |
| メトホルミン(−)/ピロリ感染(+) | 4.402 |
| メトホルミン(+)/ピロリ感染(−) | 0.708 |
| メトホルミン(+)/ピロリ感染(+) | 2.465 |
メトホルミン非使用者でピロリ陰性と比較すると、メトホルミン非使用者でピロリ感染者は4.402倍胃がんリスクが高くなりましたが、ピロリ感染者でもメトホルミンを使用している人では2.465倍になりました。
恐らく、糖質過剰摂取による高血糖、高インスリン血症がピロリ菌の発がん作用を刺激するのでしょう。
まあ、最初の3つのどの研究も、やはりピロリ陰性の胃がんのケースが少ないので、完全に証明できるとまでは行きませんが、ヘリコバクター・ピロリ感染よりも糖質過剰摂取の方が胃がんの発症に関係している証拠にはなるでしょう。
さらに除菌後の胃がんリスクを増加させるもう一つの因子はPPI(プロトンポンプ阻害薬)です。以前の記事「PPI(プロトンポンプ阻害薬)はピロリ菌根絶後の胃がんのリスクを高める」で書いたように、PPIの使用頻度、期間とともにリスクが増加しました。毎日使用している人では非使用者と比較すると4.5倍以上リスクが高くなっています。毎日使用者で1年以上使用していると5倍、2年以上で6.65倍、3年以上になるとなんと8.34倍にもリスクが増加していしまいます。
さすがマッチポンプ薬。恐ろしい薬を多くの人が飲まされています。
アメリカの食事アンケートでの質の低いデータの研究(ここ参照)によれば、1日に少なくとも1杯の砂糖入り飲料を摂取した人は、1か月に1杯未満しか摂取しなかった人と比較して、胃がんのリスクが2.45倍高く、この関連性は女性と男性の両方で観察されました。さらに、総果糖摂取量が多いほど、胃がんの発生率が高くなることもわかりました。女性では、1日に1杯以上の砂糖入り飲料を摂取した人は、砂糖入り飲料をほとんど摂取しなかった人と比較して、胃がんのリスクが3.04倍高くなりました。
糖質、果糖はやばいですね。
ピロリ感染があろうがなかろうが、胃がん予防には糖質制限ですね。
「White blood cell count and risk of gastric cancer incidence in a general Japanese population: the Hisayama study」
「日本人一般集団における白血球数と胃がん発症リスク:久山研究」(原文はここ)
「Hyperglycemia increases risk of gastric cancer posed by Helicobacter pylori infection: a population-based cohort study」
「高血糖はヘリコバクター・ピロリ感染による胃がんのリスクを高める:集団ベースのコホート研究」(原文はここ)
「Impact of fasting plasma glucose levels on gastric cancer incidence in a general Japanese population: the Hisayama study」
「日本人一般集団における空腹時血糖値が胃がん発生率に及ぼす影響:久山町研究」(原文はここ)





