医師の一部は製薬業界から金銭的な報酬を受け取っており、2022年には総額24億6000万ドル(日本円でおよそ3860億円)に達したそうです。これらの報酬は科学的な協力関係を示す場合もありますが、科学的利益を伴わないマーケティング活動が含まれる場合もあり、臨床上の意思決定への影響について懸念が生じてしまいます。
製薬マーケティングでは、講演会などを通じてプロモーションが頻繁に行われます。学会はその格好の場でしょう。講演会では、関連知識と経験を持つ医師が、他の医療従事者に製薬会社の製品について教育する役割を担うべきですが、しかし、製薬会社の目的はマーケティングなので、真の専門家を選定しているかどうかは不明です。
さらに、近年ではSNSが大きな影響力を持っています。ソーシャルメディア上での推薦という、同業者間プロモーションの新たな形態が登場しています。そして、ほとんどの人はその全体像を決して見ることができません。
2023年10月1日より、景品表示法に基づくステルスマーケティング(いわゆるステマ)の規制が施行されましたが、医師のポストで「#PR」「#ad」などが付いているのは見たことがありません。
今回の研究では、X上で特定の薬や医療機器について投稿した医師たちを調査しました。特定された28人の医師全員が少なくとも1回の一般支払いを受け、総額は1,448,083ドル、平均51,717ドルでした。彼らのほぼ全員(93%)が、その製品を製造する企業から金銭を受け取っていました。その総額は713,976ドル、平均27,461ドルでした。
これらの薬および医療機器関連の支払いのうち、最も高額だったのは講演(376,935ドル、総額の77%)またはコンサルティング(76,906ドル、総額の16%)でした。 10人の医師(36%)が研究費を受け取っていましたが、推奨製品に関連する研究費を受け取ったのはわずか1人(合計224,577ドル)でした。
薬および医療機器などの製造元と推奨医師との間の利益相反は、これらの関係が投稿内で一貫して開示されていないため、SNSの一般ユーザーには明らかになっていません。
別の研究(ここ参照)でも、利益相反の発生率に関する5つの研究の結果、検証済みの利益相反の発生率(オープンペイメントデータベースを使用)は15%から80%の範囲であり、疑わしい利益相反の発生率(著者の判断に基づく)は0%から80%の範囲でした。
利益相反の報告頻度に関する8つの研究結果では、報告頻度は0%から60%の範囲でした。(いずれの研究においても、この割合が利益相反に関する記述(利益相反の有無を問わず)の数を指しているのか、利益相反を報告した記述の数を指しているのかは明確ではない)
開示されていない利益相反の割合を報告している3つの研究を特定しました。その割合は99%、100%、100%でした。まあ、SNSでは通常開示されていないと考えるのが普通でしょう。
アメリカを拠点とする156人の血液腫瘍医による腫瘍薬に関するツイートを分析し、その医師の金銭的利益相反も検証しました。金銭的利益相反のある企業の薬に関するツイートは、金銭的利益相反のない企業の薬に関するツイートと比較して、肯定的な内容である可能性が高いことを発見しました。当然ですね。
ある記事(こことここ参照)によると、イーライリリーとノボノルディスクは、減量薬(もちろん糖尿病薬ではあるけど、宣伝目的は減量薬でしょう)としてGLP-1受容体作動薬の宣伝のために、27万人以上の医師に報酬を支払っており、中には100万ドルを支払った医師もいると書かれています。
減量薬としてのGLP-1受容体作動薬使用者は、医師よりもSNSにアドバイスを求める傾向があることが研究でわかっています。(ここ参照)イギリスのこの研究では、684人が調査を完了し、そのうち 544人が体重管理のために現在 GLP-1薬を使用しているか、過去に使用していました。
マンジャロは最もよく使用されたGLP-1薬で、参加者のほとんどが3~6か月間(73%)使用し、ほぼ全員が開始後12か月以内に使用していました(91%)。
GLP-1薬に関する主な情報源としては、ソーシャルメディア(48%)、従来型メディア(31%)、友人・家族(46%)、オンラインフォーラム(31%)が挙げらていました。医療専門家への相談は少なかったのです。
参加者の62%は、身体活動や日常業務の遂行能力に影響を与えるほどの、少なくとも中程度のエネルギーの低下を自覚していると回答し、そのうち26%はより深刻な影響を報告しました。
企業は影響力のあるインフルエンサー(患者インフルエンサー)との提携を強化しています。(ここ参照)金銭的な関係を持っているにも関わらず、個人的な体験談や経験を投稿して、#PRのタグもないまま宣伝します。
インフルエンサーだけでなく、医師などの医療従事者で利益相反がある場合には、SNSでもそれを明示すべきです。
新型コロナワクチンでも、ものすごい数のワクチン推進ポストがあり、それを見てワクチンが安全だと思った人も多いでしょう。
ただ、Twitterはそのワクチンの危険性を広める面でも大きな影響力を持っていました。イーロンマスクがTwitter社を買っていなければ、今の世の中は暗澹たるものだったかもしれません。それほど大きなことだったと思います。
医師のポストを見ても、それを鵜呑みにすることは危険です。その背景がわからない限り、盲目的に信用することはできません。特に専門家を名乗る医師は、その専門の業界から金銭を受け取っている可能性が高いです。そして、彼らは専門家以外の意見は排除するような投稿を平気でします。
お弁当一つでも処方を変更することがあるのが医師です。
薬である限り、リスクを伴います。良い面ばかり強調して、リスクには触れないようなSNSには注意が必要でしょう。
「Industry Payments to Physicians Endorsing Drugs and Devices on a Social Media Platform」
「ソーシャルメディアプラットフォーム上で医薬品や医療機器を推奨する医師への業界からの支払い」(原文はここ)