糖尿病と新型コロナウイルス感染の退院と死亡の予測因子

新型コロナウイルスの変異型がイギリスで見つかり、それを危険視して、騒いでいますが、イギリスはワクチン効果が表れる前から、PCR検査陽性者数も死亡も激減し、今では陽性者はピークの5分の1程度です。変異型に対して煽って、騒いだ割にはなぜかわからない減少を続けています。日本でも同様になぜかわからない減少が続いています。減少すれば外出自粛が功を奏したと言い、減少しなければ自粛が足りないと言い。

しかし夜間は多少少なくなっても、日中の外出は人が出ているのに、減少し続けているのです。実際には何が功を奏したかわからないのに、わかりやすそうな理由を見つけて、それを根拠としてしまう、非常に非科学的な分析のような気がします。

これまでもインフルエンザも知らないうちに増え続け、緊急事態宣言もないのに知らないうちに減少します。それと同じではないでしょうか？インフルエンザもワクチン接種は集団免疫ができるほどの接種率ではないし、感染が広まっての集団免疫も起きているとは思えません。ウイルスの何らかの特性が関係しているのでしょう。

さて、新型コロナウイルス感染では糖尿病が重症化リスクと考えられています。日本と欧米では死者数など非常に差がありますが、糖尿病が危険因子であることには変わりないでしょう。

フランス全土の糖尿病の新型コロナ感染の2,796人のデータの分析では、糖尿病であると28日以内に20.6％、つまり5人に1人の死亡が認められました。

この研究は昨年2020年の5月のデータによるものであり、この冬の状況とは違いがあるでしょう。PCR検査陽性者が昨年の5月よりも大幅に増加したにも関わらず、1日の死者数はこの冬の方が少ない（総数ではかなりの増加ですが）状況です。だから、糖尿病の患者の新型コロナの死亡率はもっと低下している可能性もあります。（図は原文より）

BMIの中央値は28でした。微小血管および大血管の糖尿病合併症は、それぞれ44％および39％で認められました。

28日以内に、患者の1404人（50.2％）が退院し、入院期間の中央値は9日でしたが、577人が死亡しました（20.6％）。残りの患者のうち、12％は28日目に入院したままであり、17％は最初の病院とは異なる施設に移送されていました。

上の図は28日以内の退院と死亡の多変量解析です。左が退院、右が死亡です。年齢が上がるにつれて退院の可能性は低くなり、死亡の可能性は高くなります。まあ当然でしょう。BMIと高血圧では差がありませんでした。

微小血管合併症は退院の可能性が30％低下し、死亡する可能性が2倍以上になっていました。

メトホルミンによる日常的な糖尿病治療では、退院の可能性が40％高く、死亡の可能性が35％低下しました。逆に、糖尿病をインスリンで治療されている患者は、インスリンで治療されていない患者と比較して、死亡の可能性が44％増加しました。インスリン治療はおそらく糖尿病のより進行した状態を示していると思われますが、もしかしたらインスリンそのものがリスクを高める可能性もあります。以前の記事「高血糖は凝固を促進し、高インスリン血症は線溶を阻害する」で書いたように、高インスリン血症は血糖値レベルに関係なく線溶を阻害します。つまりインスリンは血栓を溶かしにくくするのです。

さらにスタチン使用は死亡の可能性を42％高めました。これはスタチンが悪いのか、スタチンを使用する状態が問題なのかはわかりません。

その他ルーチンの抗凝固療法、入院時の息切れ、肝酵素の異常なレベル、白血球数の増加、および炎症を表すCRPの上昇は、退院の可能性が低下し死亡の可能性が高くなりました。

入院前または入院時のHbA1cは影響せず、入院時の血糖値の上昇は死亡の可能性を21％高めました。

いずれにしても、糖質制限をして血糖値を安定させ、インスリン分泌を少なくして、炎症を起こさないようにすることが重要でしょう。恐らくこのことは新型コロナウイルス感染だけでなく、ほとんどすべての感染症、病気に当てはまると考えています。

糖質過剰症候群

「Predictors of hospital discharge and mortality in patients with diabetes and COVID-19: updated results from the nationwide CORONADO study」

「糖尿病とCOVID-19患者の退院と死亡率の予測因子：全国的なCORONADO研究からの最新の結果」（原文はここ）