新型コロナウイルス感染と後遺症

日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。接種開始前にPCR検査陽性者がかなり減少してしまっているので、日本ではワクチンの効果がどうかなんて全くわからない状態になってしまう可能性があります。

先日の江部先生の記事でも紹介されていましたが、新型コロナウイルス感染後の後遺症に悩まれている方が結構いて(実際の割合はわかりませんが)、その方たちに亜鉛不足の人が多いとされていました。(この記事参照)

この記事のクリニックのデータでは、倦怠感94%、頭痛78.3%、体の痛み74.2%、息苦しさ76.7%、動悸68.6%、嗅覚障害45.4%、味覚障害39.7%、食欲不振61.8%、不眠70.5%、気分の落ち込み86.0%、思考力の低下81.5%、脱毛49.0%です。

 

さて、亜鉛不足で味覚障害は有名ですが、その他にも様々な症状が現れる可能性があります。持続性下痢、重度の皮膚炎、慢性炎症、脱毛症、嗅覚障害、免疫不全、貧血、脳機能障害、創傷治癒障害、食欲不振、倦怠感、成長遅延、肝疾患、および情緒不安定、過敏症、うつ病などの神経心理学的変化などがあります。ほとんど上の症状を網羅してしまっています。

記事の中では、「血液検査をすると、ほとんどの後遺症患者で亜鉛が不足しています」と書かれています。しかし、たとえ亜鉛不足であっても、新型コロナウイルス感染の前には症状を呈していない人が感染後に症状を呈するようになったのですから、このウイルスは亜鉛を消費してしまうのか、排泄を増やしてしまうのか、吸収を悪くしていしまうのか、などを起こしている可能性があります。

さらに、軽症者のホテル療養に際の食事なんてひどいものですので、何日もその食事を摂っていたら、より亜鉛不足を招くかもしれません。また、もしかしたら何らかの薬剤が亜鉛を減少させるのかもしれません。

亜鉛欠乏症の様々な症状は、細胞外の ATP の分解の異常によって引き起こされているのではないかと考えられています。 (ここ参照)

では、新型コロナウイルス感染には亜鉛のサプリが有効では?と考えられますが、それほど単純ではないのかもしれません。

今回の研究では、新型コロナウイルスの感染した人に高容量の亜鉛、アスコルビン酸(ビタミンC)サプリメントを摂取してもらい、症状の重症度や期間を軽減できるかどうかを調べています。

新型コロナウイルス感染の214人を対象にしています。主要なエンドポイントは、発熱、咳、息切れ、倦怠感などの症状が50%減少するまでに必要な日数(症状ごとに4段階で評価)で、二次エンドポイントには、総症状重症度スコア0に達するのに必要な日数、5日目の累積重症度スコア、入院、死亡、補助処方薬などを調べています。(図は原文より)

患者をランダムに10日間、1日に亜鉛(50mg)を摂取するグループ、アスコルビン酸(8000mg)を摂取するグループ、亜鉛とアスコルビン酸の両方を摂取するグループ、通常の治療のみのグループに分けます。

上の図は主要なエンドポイント、つまり発熱、咳、息切れ、倦怠感などの症状が50%減少するまでに必要な日数を示しています。グループ間に差はありませんでした。

上の図はそれぞれのグループの主要なエンドポイントと二次エンドポイントについてです。いずれもグループ間に差はありませんでした。

これをもって、後遺症にも亜鉛が効果が無いとは言い切れませんが、症状が出てからの亜鉛摂取は大きな効果が期待できないのかもしれません。

マスコミは意図的なのかどうかわかりませんが、後遺症をかなり強調して伝えているように見えます。しかし、これは別にこのウイルスが特別なことなのかどうかはわかりません。これまでの風邪の後遺症なんて調べたことがほとんどないでしょうから。

普段の食事から糖質制限をして、しっかりと亜鉛を摂るべきでしょう。

 

「Effect of High-Dose Zinc and Ascorbic Acid Supplementation vs Usual Care on Symptom Length and Reduction Among Ambulatory Patients With SARS-CoV-2 Infection: The COVID A to Z Randomized Clinical Trial」

「SARS-CoV-2感染の患者の症状の長さと症状の減少に対する高用量の亜鉛とアスコルビン酸のサプリメントと通常のケアの効果:COVIDAtoZランダム化臨床試験」(原文はここ

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