最近はテレビのCMでも尿漏れのパッドなどのCMがよく流れています。以前の記事「頻尿、過活動膀胱は糖質過剰症候群である」で書いたように、過活動性膀胱の原因の一つは糖質過剰摂取だと考えています。
糖質過剰摂取、特に果糖の過剰摂取では内臓脂肪が増加します。その内臓脂肪と過活動性膀胱の関係性はどうなのでしょうか?
今回の研究では、下部尿路症状があるかどうかにかかわらず、研究の3か月前に腹部CT検査を受けたすべての女性182人を対象にしています。日本の研究です。その中で、過活動性膀胱の女性は39%、そうでない人が61%でした。下部尿路症状と、内臓脂肪面積、内臓脂肪量、総腹部脂肪量などのさまざまな体脂肪蓄積パラメーターとの関係を分析しました。
過活動性膀胱グループの平均年齢は65.5歳で、非過活動性膀胱グループの平均年齢52.7歳よりも有意に高く、全体では平均年齢57.7歳でした。(表は原文より改変)
全体 | 非過活動性膀胱 | 過活動性膀胱 | |
---|---|---|---|
腹囲(cm) | 81.6±9.7 | 80.8±7.6 | 82.9±12.2 |
皮下脂肪面積(cm 2) | 150.0±74.8 | 151.6±67.7 | 147.4±85.2 |
皮下脂肪量(cm 3) | 3701.9±1927.2 | 3718.9±1650.4 | 3675.3±2307.0 |
内臓脂肪面積(cm 2) | 79.2±49.9 | 69.4±39.3 | 94.7±60.2 |
内臓脂肪量(cm 3) | 2022.6±1371.1 | 1705.6±1009.8 | 2518.2±1688.1 |
腹部総脂肪量(cm 3) | 5724.5±3051.8 | 5424.5±2440.3 | 6193.5±3789.3 |
内臓脂肪面積/皮下脂肪面積 | 0.68±1.39 | 0.48±0.22 | 1.00±2.17 |
内臓脂肪量/皮下脂肪量 | 0.61±0.59 | 0.47±0.21 | 0.84±0.87 |
皮下脂肪量/腹部総脂肪量 | 0.65±0.12 | 0.69±0.09 | 0.59±0.13 |
内臓脂肪量/腹部総脂肪量 | 0.35±0.12 | 0.31±0.09 | 0.41±0.13 |
非過活動性膀胱 | 軽度過活動性膀胱 | 中程度/重度過活動性膀胱 | |
---|---|---|---|
患者数 | 111 | 35 | 36 |
腹囲(cm) | 80.8±7.6 | 83.8±8.0 | 82.1±15.3 |
皮下脂肪面積(cm 2) | 151.6±67.7 | 154.5±59.1 | 140.5±105.0 |
皮下脂肪量(cm 3) | 3718.9±1650.4 | 3868.4±1917.4 | 3487.6±2645.7 |
内臓脂肪面積(cm 2) | 69.4±39.3 | 104.1±49.1 | 85.5±68.8 |
内臓脂肪量(cm 3) | 1705.6±1009.8 | 2635.2±1311.5 | 2404.5±2000.4 |
腹部総脂肪量(cm 3) | 5424.5±2440.3 | 6503.6±3003.0 | 5892.0±4446.0 |
内臓脂肪面積/皮下脂肪面積 | 0.48±0.22 | 0.70±0.27 | 1.30±3.04 |
内臓脂肪量/皮下脂肪量 | 0.47±0.21 | 0.71±0.27 | 0.96±1.19 |
皮下脂肪量/腹部総脂肪量 | 0.69±0.09 | 0.60±0.09 | 0.59±0.15 |
内臓脂肪量/腹部総脂肪量 | 0.31±0.09 | 0.40±0.09 | 0.41±0.16 |
上の表は過活動性膀胱の重症度と脂肪の関連を示してます。症状の程度によって差はほとんど無いようですが、皮下脂肪に対する内臓脂肪の面積の割合では有意に、重症度が高いほど内臓脂肪の割合が高くなっています。
単変量分析 | 多変量解析 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
オッズ比 | 95%CI | P値 | オッズ比 | 95%CI | P値 | |
年齢 | 1.07 | 1.09–1.10 | <0.001 | 1.02 | 1.01〜1.03 | 0.044 |
BMI | 1.07 | 0.87〜1.01 | 0.072 | – | – | – |
腹囲 | 1.10 | 0.95〜1.01 | 0.144 | – | – | – |
内臓脂肪量/腹部総脂肪量 | 7.04 | 3.34〜12.5 | <0.001 | 3.79 | 1.87〜7.80 | <0.001 |
メタボ関連疾患 | 4.25 | 2.26〜8.02 | <0.001 | 2.91 | 1.47〜5.78 | 0.002 |
上の表は過活動性膀胱の危険因子です。年齢はわずかに関連しているようですが、最もリスク因子となるのは腹部総脂肪量に対する内臓脂肪量の割合です。およそ3.8倍も過活動性膀胱となる可能性が高くなります。また、メタボ関連疾患(高血圧、糖尿病、高脂血症、腎機能障害など)でも約2.9倍可能性が高くなります。
年齢を重ねると、お腹の脂肪が落ちにくいと考えている人もいるでしょう。それはお腹の皮下脂肪が落ちにくいのではなく、内臓脂肪が付いてしまっているからでしょう。他の手足はそれほど太っていなくても、お腹だけポコッと出ている人は多いと思います。それは非常に危険な脂肪、内臓脂肪が多いことを意味しています。
以前の記事「尿漏れする前に糖質制限」にも書いたように、尿漏れし始めてから慌てて対応するのではなく、尿漏れする前から糖質制限をして、予防すると良いでしょう。
「Excessive accumulation of visceral fat is associated with lower urinary symptoms including overactive bladder in female patients」
「内臓脂肪の過剰な蓄積は、女性患者の過活動膀胱を含む下部尿路症状と関連している」(原文はここ)
中高年、男女問わずメタボ体形になりがちですが、60歳以上の女性ランナーで世界初のサブスリー 達成された弓削田真理子さん(埼玉・当時61歳)はスリムで勿論内臓脂肪とも無縁でしょう。 糖質制限はされていないようですが、弓削田さんの健康状態にはとても興味があります。きっと身体不調とも無縁だとは思いますが。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
ランナー=健康、スリム=健康というわけではありませんが、
60歳以上の女性でサブ3というのはどのような食生活、練習をしているのか気になりますね。