若い世代のがんが増えています。(「その1」「その2」参照)しかし、どうやら実際に、若い世代は「老化」をしていてがんが増えているようです。若い世代では細胞の損傷がより速く蓄積し、生物学的な老化が加速しているのではないかと、いうことなんです。
オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカでは、1990年代生まれの人は、1960年代生まれの人に比べて、早期発症の大腸がんのリスクが少なくとも4倍高いことがわかっています。アメリカでは、1950年以前に生まれた人に比べて、1985年頃に生まれた人は子宮がんのリスクが約2倍高いことがわかっています。
今回の研究では、イギリスの大規模コホート(UKバイオバンク)の154,169人とアメリカの電子健康記録(EHR)リンクバイオバンク(All of Us Research Program)の10,262 人で利用可能なデータを活用し、生物学的老化の程度は、生物学的年齢と実年齢の差から推定し、全身老化の統合的測定、臓器特異的老化を評価しました。(図は原文より)
上の図は、PhenoAgeというもので定義される年齢ギャップです。横軸が生まれた年代です。年齢ギャップのレベルが、最近になるほど徐々に高くなっています。つまり、より若い世代の方が生物学的に老化していると考えられます。特に女性の老化の仕方が激しくなっています。
1950~1954年に生まれた人と比較して、1965~1974年に生まれた人は、年齢ギャップが23%高くなりました。
一方、アメリカのデータでは、男性では一貫して女性よりも年齢ギャップが高く、1965 ~ 1969 年生まれの人と比較すると、1990 ~ 1999 年生まれの人は年齢ギャップが 92% 高くなっています。
上の図に示すように、PhenoAgeで定義された年齢ギャップは、早期発症固形がんのリスク増加と関連していました。年齢ギャップで3つのグループに分けたとき、最も低い群と比較して、最も高い群の人は、早期発症固形がんのリスクが1.15倍高くなりました。
また、PhenoAgeで定義された年齢差の標準偏差(sd)が1増加するごとに、早期発症固形がんのリスクが8%増加することが示されました。これは主に肺がんが標準偏差あたりの1.57倍、消化器がんが1.17倍、結腸直腸がんで1.14倍、その他の消化器がんで1.25倍、子宮がんで1.31倍によるものでした。
上の図に示すように、早期発症固形がんリスクに寄与する主要な臓器部位を特定すると、免疫組織の老化は早期発症肺がんと関連しており、そのリスクは1.89倍でした。脂肪組織の老化は早期発症大腸がんリスクの増加と関連していまし、リスクは1.60倍でした。
さて、どうして免疫の老化、脂肪組織の老化が起きているのでしょうか?以前の記事「若年発症のがんが増加しているが原因は?」で書いたように、2ヒット説というのもあります。がんの発症には2ヒット説という仮説があります。がんを発症するには、遺伝性のある患者では生殖細胞において既に1回目のヒットすなわち変異を有しており、その後何らかの2回目のヒットが加わることでがんが発症し、一方、非遺伝性の患者では何らかの2回ヒットを受けることでがんが発症する、つまり遺伝性のがんも非遺伝性がんも2回の変異を受けた結果、発がんするという仮説です。
遺伝性のがんは別として、若年発症の非遺伝性のがんでは、どこでヒットを受けているのでしょう。私は1回目はお腹の中、つまり胎児の頃、そしてその後の幼少期ではないかと思っています。「妊娠後最初の1000日間の糖分制限は成人後の様々な疾患のリスクを下げる その3 がん」につながってきますね。
糖質過剰摂取による高血糖は免疫機能に重大な影響を示します。糖尿病の人が感染しやすいことでもわかります。高血糖は全身性炎症およびT細胞の老化と関連していて、2型糖尿病患者では、老化CD28-T細胞集団が蓄積しているようです。(ここ参照)
加齢だけでなく、糖質過剰摂取による慢性の炎症が炎症性老化を引き起こし、免疫の老化も促進されるのでしょう。(ここ参照)
脂肪組織の老化も同様です。肥満および高インスリン血症は脂肪細胞を老化させます。(ここ参照)
インスリンは老化促進ホルモンなのです。(ここ参照)糖質過剰摂取による高血糖、高インスリン血症、インスリン抵抗性は様々な組織、細胞を老化します。(ここ参照)
虚血性脳卒中(脳梗塞)が若い世代で増加しているのも、糖質過剰摂取によって血管が傷つけられて、増加していると考えられます。(ここ参照)35~39歳の患者における脳卒中の発生率は、1995~1999年から2010~2014年にかけて2.47倍になっているのです。
犯人は曖昧な表現の「西洋型の食事」ではありません。糖質の摂りすぎです。もちろん超加工食品も大きな影響を与えているでしょう。
まずは糖質制限、その次にも糖質制限。がんは糖質過剰症候群の代表です。
「Biological aging and generational shifts in early-onset cancer risk」
「生物学的加齢と若年性がんリスクの世代間変化」(原文はここ)


